醤油庫日誌

やかんの映画ドラマ感想文。

ジャンヌ・ダルク

2017年03月27日 | 【さ行】タイトル
1999年 フランス
イライラ、ピリピリした聖処女ジャンヌ。
半狂乱の見開いた色素の薄い瞳とわななく口元。
彼女のヒステリックな叫び声が全編を支配する。
それが意外に納得のいくジャンヌ像なのです。
たしかに信心深い内気な田舎の乙女なら、狂乱の戦場のカリスマにはなれないだろうから。
兵士の先頭に立って、旗印を掲げるジャンヌの絶叫「フォローミィィィ!」には鳥肌がたちました。
ジャンヌのヒステリックな滅茶苦茶ぶりに、歴戦の勇士たちが度肝を抜かれてオロオロします。
小娘とバカにしていた戦士たちの信頼を、ジャンヌが狂信的な蛮勇によって曲がりなりにも勝ち得ていくのです。
血なまぐさい中世の攻城戦は、怖いもの見たさを満足させてくれます。
流血というよりミンチ。
斬る刺すより、叩き潰す。
残虐さといえば、冒頭のカトリーヌの死に様もですが、虜囚となったジャンヌが看守たちにぼこぼこに蹴られ、ビシャッと飯汁を投げつけられるのが余りにも暴力的でした。
ジャンヌの顔が青あざだらけになり、手指も真っ黒に腫れあがる無残さ。
寄ってたかってのしつこい尋問に精神的にも痛めつけられ、錯乱寸前のジャンヌの苦しみに観ているこちらも息苦しくなってくる。
牢獄の独房でジャンヌが苦しみながら自問する「あれはすべて私の幻想だったのか?」
たとえ、幻想や思い込みだったとしても、ジャンヌは人にはできないことをやり遂げました。
イギリス軍を押し戻してフランスの独立を守り、裁判でも碩学の司教神父たちに立ち向かい一歩も引かなかったどころか逆にやりこめた。
間違いなくジャンヌは神がかりの乙女だったと思います。
・ヨランド・タラゴンの剃り上げた前頭部が女王蜂のようで凄味があった。
・コーミー大司教の歪んだ顔が江守徹に似ていて妙に気になった。
・カート・コバーン似のイエス様、気味悪すぎ。
・ジャンヌを守る廷臣ジャンが善良誠実でいい男なんである。
パリ大学で学んだインテリでありながら弓の名手ってどんだけ文武両道なんだ!
控えめでありながら、いつも沈着冷静にフォローしてくれる、まさに理想のパートナー。
・ジルドレもかっこいいぞ!
落ち目になったジャンヌに村に帰れと諭すジルドレの、真情に溢れた態度が泣かせる。

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