醤油庫日誌

やかんの映画ドラマ感想文。

「下町」

2007年06月12日 | 【さ行】タイトル
1957年。
幼い子供をかかえ、辛い行商をしながら夫の復員を待つヒロイン(山田五十鈴)は、ある日親切にしてくれた気のいい男(三船敏郎)に心を惹かれます。
力仕事で激しく働き、作業小屋に寝泊りしているミフネの逞しい男臭い風貌が素敵。
……薄汚い素浪人になろうが汗臭い労務者に扮そうが、かっこいいのがミフネでござる。
「いい子だな、坊主!」
ヒロインの幼い息子の頭をクシャクシャと撫でるミフネの不器用なしぐさと笑顔がいい。
前歯にちょっと隙間のあるミフネの笑顔がなんとも人がよさそうで、ジーンときます。
侍のときのミフネは片頬でしか笑いませんが(もちろん、そのほうがカッコイイ)、この笑顔も実にいいんでござるよ。
さて、激しい雨に降られ、寝込んでしまった子供を背に飛び込んだ連れ込み宿で、ふたりは一夜の関係を持ちますが――
わびしい暮らしの中にわずかに差し込んだ希望が無残についえる様に、ただ涙。
60分の小品ながら、しみじみとした味わいの深い佳作です。


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