goo

日本は文化的か

捕鯨は日本の文化だという意見を聞く、本当だろうか。捕鯨を続けるために反捕鯨国の(生物の)種を差別的に扱うのを論理的に否定していくことに反対はしないが本質的な部分として「捕鯨は文化か」という疑問、もっと上位概念として「日本は文化国家か」というのに疑問がある。私の食生活で鯨は無くても困らない、たまに食べたいとは思うが「文化」ではなく、単なる経験だからだ。文化論をぶつのであれば近海捕鯨で十分だし、他国もそういうスタンスだ。米国も近海捕鯨だ。当時到達できなかった南極までとりに行く必要は全く無い、取れる種も異なるはずだ、近海捕鯨で絶滅危惧種も堂々と捕ればいい。

捕鯨問題では(1)公海の資源を好き勝手してはいけない、(2)鯨は希少資源で食ってる場合ではない、(3)鯨という高等動物を食うな、という問題に大別されると理解している。このうち(3)は差別主義者という論理で否定できる、犬を食う朝鮮族や漢族を否定されているのと同じだ、では何故牛を食っていいのか、野菜も生物だ(栗等植物は実・身を食われないためのな防衛努力をしている)、ヒンズー教徒が牛食を否定すればそれを受け入れるのか、全てNoであろう、生物への順位付けを神が許したのなら少し理解できるが(共感は全く出来ない低能神だと思うが)。次に(2)であるが、科学的に判断すればよいのであり感情的になる必要は全く無い。最後に(1)だが鮪や鮭鱒、鱈も同様に扱えばよろしい。(2)について疑問があるならとことん科学論争を行えばいい。至極簡単な話だ。

ところが日本人は「鯨食は文化」だと言う。そうかと思うのだ。まぁ文化で無いならば食習慣、伝統等違う表現もあるかもしれない。だがちょっと待て、縄文時代に鯨食の証拠があるとしても江戸時代には獣食の習慣は無く、しかも捕鯨能力はあまり高いとは言えなかった。それを「文化」というのであれば文化とはかなり安い代物だ。

本エントリーは捕鯨を非難しているのではない。文化とはなにかということを議論したい。

伝統芸能はかなり衰退した、歌舞伎や大相撲はまだ興行的に生きているが、文楽や能・狂言は衰退の一途だ。金を払って見に行くという文化的浸透が見られない。文化に低・中流階級が金を払うという概念は映画や音楽等一部に留まる。企業や資産家も絵画・彫刻なども名声のある程度確立した物には金を払うが、新進の芸術家を支援するのは国家プロジェクトであり、文化芸能を育てるという概念は明治期以降存在しない。大指揮者・大監督監修のオケやオペラにはある程度金は払うが無名のセミプロのリサイタルには金を払えないのだ。

桃山・江戸前期~明治前期まではパトロンが居た。現在のパトロンは自治体・企業である。欧州・米国はどうか、観劇や演奏会が盛んに行われている。料金も決して安くない。当たり前だがオーケストラを養うためにはその程度の費用は必要であり、オペラやミュージカルに至ってはいわんやおやだ。そして一流は叩き上げての一流であり、ポンと一流になるわけないので二流をも養わなければならない。そういった費用を日本人は上・中流が払っているのであろうか。

否だ。そんな国家がよくも恥ずかしげも無く「文化」を口にすると思う。*

*でも食い物への意地汚さだけは文化的だとは思う。そういう意味では「鯨」は文化かもしれない。そうであったとしてらなおさらだが「文化」という単語はあまり似つかわしくない。せいぜい「食文化」程度がお似合いのような。その上で「鯨食」にこだわるのはあまり否定しないけど、というか鯨好きだし。(←食べる方ね)

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
« 官僚は日本企... 役人に過度の... »
 
コメント
 
 
 
低俗を非難するのは文化的ではないですよ (shinpei02)
2008-01-07 18:37:38
 文化論はいつか詳細に論じたいとは思っているのですが、とりあえずさわりだけ。

>ポンと一流になるわけないので二流をも養わなければならない。
 漫画に関しては多くの人が玉石混淆の文化を多くの人が養っているおかげで一流の作品が育ってます。「着物」という文化もけっこう裾野が広いです。
 「これが文化です」というお墨付きがあるものにこだわらずに、それぞれがそれぞれの嗜好に合った文化を応援することが一般的になっている日本社会は、ヨーロッパのように権威付けされた文化に投資が集中する社会よりも「文化的」だと僕は思っています。
 現代に生きている人々の嗜好に合わない文化は所詮は骨董品であり、それが自然消滅することは仕方のないことだと思います。「ちょんまげ」とか。

>そういった費用を日本人は上・中流が払っているのであろうか。
 例えば「日本庭園」の造成技術は彼らの負担で維持されています。
 しかしこの費用をより多く捻出するためにはもっと格差が広がらないといけないですね。僕は、格差が広がってより多様な文化を育てる余裕が日本に出来上がってほしいと願っている格差賛成論者です。
 
 
 
お恥ずかしい (wood)
2008-01-07 21:31:38
コメントありがとうございます。
僕も自分の書いた文を誤読していました。shinpei02さんの指摘はご尤もです。

アニメや漫画が文化であることは否定しないし、立派なものだと思っています。
逆にオペラや、ミュージカル、クラシック音楽などをありがたがるのは欧米至上主義なのでしょう、浅はかでした。

>しかしこの費用をより多く捻出するためにはもっと格差が広がらないといけないですね
激しく同意します。自治体にもがんばって欲しいと思います。
 
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。