アルバニトハルネ紀年図書館

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『超人ロック ニルヴァーナ』第1巻/聖悠紀

2009-05-25 | 青年漫画
 


聖先生が40年間描き続けている壮大なスペースオペラ『超人ロック』の新作『ニルヴァーナ』!
むちゃくちゃ面白かった!! 続きが待ちきれません!
銀河帝国混乱期のミッシングリンクを描いた『エピタフ』の連載を抱えながらも昨年完結した『凍てついた星座』、欲張りな私達は更なる新作を待っていたのです!
そんなファンの声援に応えて下さる聖先生、最高です。

聖先生がロックミュージック、特にプログレッシヴ・ロックが好きというのは有名な話で、例えばロストコロニー「ラフノール」の光景はプログレバンド「イエス(yes)」のアルバムジャケットを多く手がけたロジャー・ディーンのアートワークが基になっています。他にハードロックの金字塔、ブラックモアズ・レインボーの同名の曲を彷彿とさせる『スターゲイザー』(宇宙歴0446年)というお話など、元の音楽を知っている人は思わずニンマリと共感できてしまう「隠し味」的なもので、本筋以外の処でもファンを楽しませて下さる素敵な作家さんです。

今回の新作『ニルヴァーナ』、同名のパンクロックバンドと関わりがあるのかどうかはまだ不明ですが(多分関係ない)、本来の意味は「涅槃(ねはん)」です。作中での綴りは一般的な"nirvana"ではなく"nirvaana"になっています。
今回の物語は銀河帝国の「時間庫」絡みという、ファンにとってはたまらない展開。時系列的にはハンザ博士の研究が元になった「ゲート」の実用化後で、ロックが最後の妻・ミラと死別して何年も経過した時。
銀河帝国の根幹がライガー教授が「ファーゴ」に残したコンピュータとオーリック家の星間帝国(共和国)というものである中、「時間庫」は数少ない帝国独自の遺産です。『オメガ』(宇宙歴1112年)の時点で確認されていた時間庫は8つ、うち動作可能なものが3ヶ所でした。折りたたまれた空間が「未来」に向かってワープを繰り返す、無限大の大きさを持つ時間庫。
また超人ロックにかけられる「賞金」に関しても、個人の支払う報酬と、権力が提示する賞金の二通りに分けて考える必要があると思います。
銀河帝国初代皇帝ナガトの崩御(暗殺)後、偶像と化した「超人ロック」にかけられていた賞金は銀河帝国による公の物で、ゲート実用化以前の新銀河連邦時代の『凍てついた星座』ではマエケナスという一個人による賞金でした。ロックという一人の不老不死のエスパーが時の権力と良好な関係にあるか対立する関係にあるか、全体を見渡すとかけられる賞金の性質に大きな違いがあります。

ロックが時間庫の反応を追ってある惑星のある島を訪れるとニセの情報、襲いかかる賞金稼ぎ。だが、その様子をカメラに収めていた誰かがいた。賞金稼ぎ達の雇い主はオニール、スポンサーはキューブ作家のグラフ・ラヴェンドラ。彼の相棒は行き詰まっている売れっ子ポルノ作家のニナ・カード。合い言葉は「カムジンと『ニルヴァーナ』のために」。

情報を辿ってロックがジャヌイア・オニールの会社に赴くと、同じくオニールの行方を追っている、元警官の少女と出会います。兄を捜しているというシルフ・バナールと行動を共にするロック。彼女の兄、マット・バナールは非合法の「V・キューブ」に「出演」ではなく「使用」されていたらしい…。兄が最後に仕事を受けた時のエージェントがジャヌイア・オニールだった。
グラフがマット・バナールの所在を確認すると虐待愛好家のベルジーナの下で「使用中」。彼もまた、「『ニルヴァーナ』のためなのだよ」と言う。

監視カメラの付いていない、海賊船の搭載艇で移動するロックとシルフ。千年以上の昔を知らないシルフにロックは説明する。帝国時代の時間庫には「情報」が入っていると。亜空間フィールド、ナノボットガード、ジオイド弾…それは失われた旧連邦の危険な遺産。ロックを伝説のエスパーだと知らず、強気な態度のシルフが可愛いっ!! 同じようにキューブの題材にされるロックに、シルフが兄を重ねて惹かれていく展開を期待しそうです。

そしてグラフの前にもう一人、今度は「超人」を題材にしたボードゲームを制作している中性のミカが現れる。ゲーム内の敵にプリンス・オブ・ファントム。もうこういう要素一つ一つがたまりません。そしてミカもまた、ゲームをクリアした者への賞品は「カムジンのニルヴァーナ」と言う。

罠と知っていてグラフ・ラヴェンドラのペーパーカンパニー、リバーキューブスへ向かうロックとシルフ。待ち受けていたのはクリエーターの狂気。
何百年も昔に死んだクーガーが自分に光の剣を投げつける、花嫁姿のミラ・ファニールが現れる。その様子を全て収めている、上空1万キロのカメラ。ロックは「番犬」に攻撃を当てさせながらそのプログラムを更新し、シルフの捉えられている場所にたどり着く。投影されるラヴェンドラの立体映像。「私はクリエイターで…作品を創っているんです 題材はもちろんあなた 超人ロック」。自分の手に入れた限りでは一番古い、1200年前の映像をロックに見せるラヴェンドラ。

自分は人よりちょっと変わった力を持っている、たまたま永く生きているだけの「人間」だと言うロック。そんな説明では誰も納得しないと詰め寄るラヴェンドラ。

そんな折り、コズロフ議員を訪れる金髪の女性、ラムセス。ニナ・カードの作品は全て持っていると言うその議員は、市場に出ていない新作を買う。セールスレディは「芸術家に納得のいく作品を創ってもらう」のがカムジンの目的だと説明する。
そしてベルジーナの新作はまだかと催促する将軍に、それに優るとも劣らないものが1本ございますと映話で答える。「ニルヴァーナ と申します」。


嗚呼、今後の展開、ニルヴァーナの正体、ロックとシルフの関わり合い、狂人達に暴かれるロックの知られざる伝説、何もかもが楽しみすぎる!!

お薦め度:★★★★☆
昔からのファンとしては5つ星付けたいくらいのワクワクさせられる第1巻。
『超人ロック』を全巻持っていなくても、本筋の謎解きにワクワク出来ます。20年くらい前から『超人ロック』を読んでいるファンにしか分からないネタもありますが、現在「完全版」の刊行が進められているので読んでみてほしいものです。
限りなく5つ星に近い4つ星です。聖先生のストーリーテラーとしての本領発揮。


『凍てついた星座』→全3巻

『エピタフ』→第2巻まで

徒然と→スペースオペラとミッシングリンク



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