「美しさ」という物をとことん楽しむ漫画だと私は思っています。
律とちろの中身が入れ替わるというドタバタよりも、互いが互いの「美しさ」を、入れ替わったことにより再確認する様にこそ、この漫画の価値はある。
共演者をつけるはずだったCM撮影で、女の子のような笑みを浮かべる律。いい表情(かお)をするとちろを褒める律は、彼女の豊かな表情を見習いたいと言う。表情を抑えられるのが「いい女」だと聞かされたちろは、身近にいる一番のいい女である男子高校生を手本にしだす。
二匹の狐は、「人でない我々から見ても 神々しい美しさがあるな」と律を絶賛する。
部屋に通され、膨大な量の写真やCDを見せられ、10年間ずっと観察してきたと律に言われるちろ。
「俺の娘役の芯は 全部ちろなんだよ」。
心臓が鳴りやまないちろに頭突きを喰らわされ、気を失いながら、いまの現象に関係してるのは「ちろの願い」だけじゃなく、自分の10年分のちろへの視線にも原因があるのではないかと思い始める律。
しかし、よかれと思って願いを叶えてやったのに面白くないと、右近は拗(す)ね始める。
願い事の事で揉めて苛ついたのか、願いが上手く叶えてやれない事が歯痒(はがゆ)いのかと尋ねる左近に、両方だと答える右近。
「御霊様のお力に頼る人間達が少しでも笑顔になれたらと そう思って千年もお仕えしているのに--」。
社長がちろに興味を抱き始め、食事に同席したプロデューサーの思惑も絡み、ちろは『不思議の国のアリス』の絵本で懐柔される。仕事の内容を聞いてやると言い出すちろ。お狐くんたちに報告に来たちろを見て、質問自体が答えになっている問いかけをする左近。
「同じお仕事を出来る喜びは 律殿のようになれるからでしょうか?」。
アリスとハッターのふたりの空気を壊したくない「彼」は、吹き抜けの上階から降りずに控えめに見守り、顔を合わせずに去っていく。
第16話見開きカラー(『別冊 花とゆめ』2010年5月号)
お薦め度:★★★★☆
ちろと律の絆がとてもいい。当然のように愛を要求するちろに、誠実に優しく応える律。
はた目には保護者と子供のような関係の二人だけど、実は律のほうがちろから多くの物を学んでいて、安心させられていたという優しい関係が好きです。
そして律の美しさが本物だけど「未完成」であるという処が、私にとっては一番の見所です。日舞をやっていて、滝川社長の言うように「手先まで神経の通った立ち姿」を身に付けている律が、10年間お手本にしてきたちろと精神が入れ替わることにより、仕草ではなく素顔で表情をつけられるようになり、その美しさが「完成」する処をぜひ見たい。
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