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世界の覚書

道州制、易姓革命、外国人参政権には反対です。伝王仁墓に百済門を作るのは場違いであり、反対です。

アメリカの史観で見える日本

2007年07月08日 | 歴史・伝統
なぜか記事のリンクが出来ないが(出来るようになったので、リンクおよびTBしておきます)、苺畑より:久間防衛相辞任が国際社会に及ぼす波紋(July 07, 2007)を読んでがっくりきた。何やらだいぶ誤解があるようだ。アメリカから見るとそんなんだろうか。

RSSでしか読めないが、重大な誤認が多数含まれているので紹介する。()内の数字は、後のコメントに対応する。
(1)本土決戦などということになったら沖縄の何十倍、何百倍の犠牲者が双方で出ることは確実だった。しかもドサクサにまぎれてソ連が日本を侵略しようと企んでいる。このままではアメリカ軍は日本人との本土決戦に加えてソ連とまで戦争をしなければならなくなる。アメリカが戦争が長引くのを防ぐにはソ連を牽制しながら日本が無条件降伏を飲まざる終えないほどの圧倒的打撃を加えなければならないと判断したとしても戦略としても道徳的にも間違っていたと思えない。
(中略)
(2)現に原爆投下の数日前にポツダム宣言を日本は黙殺(拒絶)している。降伏の意志があったのならこの時に表明すべきだった。
(中略)
(3)しかし私はこのような議論はただのいいわけだと思う。なぜなら日本が本土決戦を決意していたことを示唆する出来事が起きているからだ。その最たるものが硫黄島の戦いである。もし日本が近日中に降伏するつもりだったのなら、硫黄島であれだけ激しく日本軍が抵抗する意味がない。硫黄島の戦いは本土決戦への時間稼ぎであったことは日米双方が認める事実である。
(中略)
(4)単に日本を降伏させることが目的であったのなら、広島は分かるとしても長崎にまで原爆を落とす必要はなかったのではないかという疑問は誰にでも生まれる。これは日本にとっては非常に不幸なことだが、二発目の原爆は日本へというよりソ連への牽制だったのである。
(中略)
(5)当時は日本も含め先進国はすべて原子力爆弾開発を行っていた。だがどの国がどこまで開発に成功していたのかは誰も知らなかった。アメリカが一発だけ投下させたら、持っていたただ一つの爆弾を使いきっただけかもしれない。だが二発投下したら、二発あるもの百発あるかもしれないということになり、ソ連としてはアメリカの軍事力を正確に把握できないことになる。それでソ連は日本への侵略を途中であきらめたのである。ソ連が日本を侵略していれば日本も久間さんのいうとおり朝鮮のように二つに分断されてしまっていただろう。
(中略)
(6)真珠湾攻撃にしろ、東南アジアへの侵略行為にしろ、日本人が過去の歴史を書き換えて旧日本軍の加害者としての責任を何一つ認めず、今回のように日本だけが特別に犠牲者だったのだという態度をとり続ければ、日本は諸外国からの信用を失う。それでなくても慰安婦問題ですでに日本が誤解されている時でもある。このような状況で今後日本が軍事力を強化し北朝鮮や中国の脅威から国を守ろうという姿勢をとれば、再び大日本帝国のように近隣諸国の平和を脅かすのではないかと諸外国から懸念されてしまう。
参った。これでは極左も同然であるが、アメリカン保守の真髄というところだろう。

とりあえず、「原爆投下は何を問いかける?」(PDF)を読むことをお薦めする。

以下、追記。
(1)
> このままではアメリカ軍は日本人との本土決戦に加えてソ連とまで戦争をしなければならなくなる。
> ソ連を牽制しながら日本が無条件降伏を飲まざる終えないほどの圧倒的打撃を加えなければならないと判断した

ソ連と戦争(冷戦)が始まるのは、後のこと。そもそもソ連の対日参戦は、首脳会談でずっと前から話しあっていた、というかアメリカの要請であった。ソ連は、律儀にドイツ降伏の3ヵ月後に対日参戦した。日本が降伏した直接の理由は、和平仲介を期待していたソ連が裏切ったからだ(これは日本が甘すぎただけだが)。

(2)
> 原爆投下の数日前にポツダム宣言を日本は黙殺(拒絶)している。降伏の意志があったのならこの時に表明すべきだった。

日本が呑みにくいように、わざわざ文言を調整し、他にも策を弄していた。尋常に日本に納得させるつもりは、無かった。
#日本の真意は、「黙ったままで反応しない」という程度の意味だった。もっと文言を選べばよかったが、アメリカの発表の仕方も妙だったから、反応に窮したのだ。「拒絶」は誤訳と言ってよい(意訳であるw)。

(3)
> 日本が本土決戦を決意していたことを示唆する出来事が起きているからだ。その最たるものが硫黄島の戦いである。もし日本が近日中に降伏するつもりだったのなら、硫黄島であれだけ激しく日本軍が抵抗する意味がない。硫黄島の戦いは本土決戦への時間稼ぎであったことは日米双方が認める事実である。

硫黄島は本土爆撃の中継基地、バックアップとして必要不可欠な立地だった。サイパンやテニアンは、やはり結構遠かったので、いわばダイバート先が必要だった。硫黄島が日本側の足場になっているのは、アメリカ側としては非情に不利だった。本土爆撃を少しでも不利にすることは、どう考えても日本の国益に資する。近日中に降伏もへったくれもない。1945年2~3月の出来事だ。それに本土決戦は陸軍の強硬な主張であり、それと降伏を求める勢力とが、日本国内で蠢いていた。うかつに動けば、後者の動きがつぶされる危険があったから、機会をうかがっていた。

(4)
> 単に日本を降伏させることが目的であったのなら、

原爆使用は、マンハッタン計画を始めた必然であり、使用はずっと前から決まっていた。ドイツが降伏したから、(うまく間に合った)日本に落としただけである。

> 二発目の原爆は日本へというよりソ連への牽制だったのである。

一発目も同様だと思う。2発というのは、ウラン型とプルトニウム型の両方を作ったから、テストしておくことになっただけだ。

(5)
> 二発投下したら、二発あるもの百発あるかもしれないということになり、ソ連としてはアメリカの軍事力を正確に把握できないことになる。それでソ連は日本への侵略を途中であきらめたのである。

日本への侵略を途中であきらめたというが、米ソは、当時は一種の同盟関係だったのであり、アメリカの意向を慎重に見極めていた。アメリカの許容するぎりぎりの線まで進出しただけである。
#戦争の基本は、朝鮮戦争を見るまでもなく(既に核兵器は存在していたのに)、通常戦力による地上戦である。1945年当時、アメリカ相手にそこまでする意図は、当時のソ連にはさらさら無かったろう。アメリカが通常戦力を動かさない、安心のところまでしか、ソ連は動かなかったと考えるべきだ。

(6)
> 加害者としての責任を何一つ認めず、今回のように日本だけが特別に犠牲者だったのだという態度をとり続ければ、

日本だけが特別に犠牲者という話をしているのではなく、原爆投下がいくら何でも非人道的すぎるのではないか、という疑問だ。もちろん、市民の大量殺傷を目的としたB29による大空襲も、それに劣らず非人道行為の可能性がある。これでも、当時のアメリカでは、軍事目標をターゲットにしていたという言い訳をしていたのだ。東京の下町には、家内制手工業のような零細企業が軍需工場のネットワークを形成していたから、そこの住民は軍事目標であるという理論があったのだ。広島も軍都という説明ができた。結論から言えば、第二次大戦は人種差別の露わな、仁義無き戦いでもあったのだ。日本人は「サブヒューマン」だから、殺しても構わないという考え方が実在した。

#繰り返す必要もないだろうが、日本は歴史を荒立てる意思はない。ただ、もう止めようね、とは言う。「数百万人の日本人の命を救った」との言い訳に、日本人は人種差別と底抜けの傲慢を感じた。事実とプロパガンダは別物である。

原爆という兵器の意味を過小評価するのは、アメリカの伝統的な考え方である。放射能なにするものぞ、という事で、きのこ雲に向かって進軍する演習まで行われた。無知である。

再追記:米軍は、その行為について謝罪しないのが基本方針だ。アメリカの軍事法規ないしアメリカの国内法に抵触しなければ、それ以上の追求はないし、されても拒絶する。

関連:きち@石根:核廃絶のための核という思考

#ガンバレルはドイツ型だったのか? 知らなんだ。何で2タイプ作ったのかと思ったよ。

追記:(7月9日21時)今でも記事に直接リンクできないが苺畑さんに反論が載った。有難い話である。「極左」はちょっと言い過ぎだったかと思うが、いわゆる反日・左翼の言い分の背景にあるアメリカ的な史観を痛烈に示されたと思う。ささやかながら、典型的な見解のやりとりになっていて、その意味でよかったと思う。再反論は後ほど。

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4 コメント

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Unknown (海驢)
2007-07-09 00:10:34
そのルーツはアメリカなので当然といえば当然ですが、
最後の段落はまさに日本の反日サヨクと同じですね。
実証的に歴史をみるのはそんなに難しいことなんでしょうか?

本土決戦における米兵の犠牲者の見積もり、ソ連の参戦は米英の招待であること、
ポツダム宣言どころかその1年も前から日本が和平打診をしていたこと、
硫黄島の戦いの意味、ソ連を諦めさせた日本の決死の防戦・・・等々。

どれも少し調べれば判ることばかりですが、
知っていると思いこむと調べる気にならないということですかね・・・
返信する
Unknown (武悪堂)
2007-07-09 13:18:33
ソ連侵略と原爆は関係なし
http://mougen.seesaa.net/article/46876428.html#more
返信する
ヤルタ密約の原文が判らなかったのですが (海驢)
2007-07-11 01:15:38
いずれブログ主さんの反論があるとは思いますが、気になりました。

>この時西側とソ連はソ連がドイツ降伏の90日後に参戦することを取り決めた。
「二月又ハ三月ヲ経テ」参戦するとは言っていますが、90日後とは判らなかったのでは?
>ヤルタ会談での取り決めではアメリカ軍が日本を占領する前にソ連は北海道の侵略まで許可されており
「北海道の侵略まで許可」とは根拠不明。

※出典:東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室「ヤルタ協定」
http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/docs/19450211.T1J.html


>アメリカの思惑に乗せられたとしたらそれこそ日本に責任がある。
アメリカは沖縄を含めてすべての軍事基地から撤退し、ハワイの独立を回復し、アラスカはロシアにカリフォルニア・テキサスはメキシコに返還せよ、それを拒否して軍事行動に訴えたらアメリカに責任がある、ということで了承いただけるなら一理ありますが。

日本からの移民拒否、対日禁輸措置、支那国民党軍への物資・資金支援と軍事顧問派遣、フライングタイガースの参戦、日米交渉を不誠実に長引かせて時間稼ぎしたあげくにハル・ノート、これらをご存知の上でのコメントなのでしょうかね。
もともと、真珠湾前にアメリカが対日敵対行動をとっていたことは明白で、アメリカと戦争をしたくない日本がそれを敢えて無視していただけでしょう。


>戦争は60年以上も前に終わったのである。たった数年間の戦争の傷で60年以上もの友好関係に亀裂を入れるのはお互いに止めようではないか。
「友好関係」なら大賛成ですね。
ただし、「世界一貧乏な借金国家が、保護国を暴力で恫喝したり体制をいじくったりしてお金を巻き上げる関係」を止めないと、友好関係は成立しないですね。
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同意 (worldnote)
2007-07-11 18:35:25
細かい点を、かかしさん(苺畑さん)はあまり気にされてないようなので、直接反論するよりも(あまり効果がない)、もう少しマクロに行こうかと思いました。

海驢さんのコメントの内容には、100%同意です。

#時期ですが、2ないし3ヶ月ということで、ぎりぎりの3ヶ月になったのでしょう。とかく遅れがちな仕事上の約束でも、そこまで間に合えば、立派なものです(笑

>〉亀裂を入れるのはお互いに止めようではないか。

私は全然、亀裂を入れようとか、アメリカは謝罪すべきだとか、言ってないはずですし、思ってないです。かかしさんの記事がそう締めくくられると、ちょっと困っちゃいます。まあ、心理的な確証バイアスの一種でしょう。

苺畑さんについては、アメリカン保守の考え方の真髄、あるいはパターンを、日本語で読めるという意味で、凄く参考になるブログだと思っています。
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