わまのミュージカルな毎日

主にミュージカルの観劇記を綴っています。リスクマネージャーとしての提言も少しずつ書いています。

ミュージカル「タイタニック」その3

2018年10月11日 | 観劇記
ミュージカル「タイタニック」
日本青年館 2018年10月1日から10月13日
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ 2018年10月17日から10月22日

百名ヒロキさん
ベルボーイ、機関士
最後の船長からの言葉通り、本当に生き生きと舞台の上を、劇場中を飛び歩いている百名ベルボーイ。全体が大人っぽい雰囲気の中、このベルボーイの存在で、この舞台がすごく現実を感じることができているのだと思います。


吉田広大さん
最初に検察官としてイスメイと登場。フレデリック・フリート、カメラマン?乗り遅れた客フランク・カールソン。機関士。その後ジョン・ワイドナーとフリートと半々ぐらいで登場しています。
初演でこの役を演じたのは入野自由さん。結構気に入っている俳優さんだったので、変更にがっかりでした。
吉田さんは初ミュージカルだそうです。う~~~ん、という気持ちは正直あります。ただ、回数を重ねるごとに、ちょっとした台詞にきちんと気持ちが載ってきているなぁと感じています。
「寝巻の姿でグランドサロン」の場面で、エッチスから「一日遅れそうです」と聞くと「一日?」というセリフがあるのです。でも、この「いちにち」という四文字にいろいろな思いが込められているのです。この台詞が日に日に深みがまして聞こえます。
最後の救命ボートが離れて行き、残った男性陣が話しているときのこと。相葉チャールズと藤岡バレットは相手を未亡人にしなくてよかったと話すのです。その時、赤ん坊と妻のいる吉田ジョンは、今まで解いていた救命胴衣の紐をギュっと絞め直すのです。ああ、どうか助かって、と願わずにいられないシーンです。
この作品がミュージカルとの出会いでよかったですよね。今後活躍を期待しています。

栗原英雄さん
三等客の姿で最初に登場、船員のジョセフ・ボックスホールで乗船準備に携わり、エドガー・ビーン二等客として乗船。ほぼ、エドガー・ビーンとして登場。三等客は「メイドになりたい」で演じています。
この三等客では酔いどれおじさん。「金持ちになりたい」そんなこと皆が思っていますよ。ちゃんとした夢はないの?と突っ込みたくなります。考えてみれば、「タイタニック」初演も同じ役だから、この場面を見ていて、トムさんは「パジャマゲーム」のあの役を栗原さんに当てたんですね、笑。
ここもカップルなので、ビーン夫妻の話に広げます。
初演でアリスを演じたシルビア・グラブさん。彼女も個性派なので、この厚かましい、上昇気質の役はシルビアさんが演じると信じていました。ところが、変更。どうなるのかと思っていましたら、今回の霧矢大夢さん、シルビアさんを凌ぐほどの個性的なアリスを演じていらっしゃいます。
一等客の乗船を見ている場面も演出が大きく変わったところです。新聞片手に、夫婦で見つめているのはすごくいいですね。なんとなく、エドガーも興味がないわけではない、みたいな感じがします。
夫婦のありようみたいなものもあって、複雑な思いを重ねて二人を見つめています。でも、最後はエドガーの男らしさにほっとしたりしています。
「秋」をバックに踊り、ハートリーにチップを渡すところ、栗原エドガーかっこいい!
その後も、台詞とかもないけれど、アリスが一人で物思いにふけったり、二人で踊ったりと夫婦の姿には注目して下さい。
栗原さんの演じる船員ジョセフ・ボックスホールは、佐山さん演じるロバート・ヒッチングとともに、初演では最初の場面しか登場しなかったのですが、今回は、もう一場面登場します。「不思議なブリッジ」でイスメイがやってくる方です。イスメイのいろいろな注文を船員一同、「迷惑だ」と言わんばかりに見つめる場面です。イスメイが船員の仕事ぶりをみて、自重する場面ですから、船員は多い方がいいわけです。が、あっここでも登場なんだとなったときに、ファンとしてはただただ嬉しかったのです、笑。
栗原エドガーが最後の方の「征け、タイタニック」で登場した時の笑顔、泣き叫ぶ感じでその姿に手を伸ばす霧矢アリス。そして、アリスがいるかのように振る舞うエドガーを目にして、涙を流すなという方が無理です。あの、栗原エドガーの笑顔・・・忘れられません。

霧矢大夢さん
アリス・ビーン、三等客
三等客は「メイドになりたい」で登場なのですが、目立たないように奥の方に座っています。
アリスに関しては、栗原さんのところで語りました。

菊地美香さん
キャロライン・ネビル、グッゲンハイム夫人、給仕係
キャロラインについては相葉チャールズのところで語りました。

小南満佑子さん
ケイト・マクゴーワン、シャーロッテ・ドレイク・カルドーザ、給仕係
小南さんも3等客のケイトで登場していると思ったら、謎の一等客シャーロッテとして登場したりしています。
ケイトのような女性になかなか共感できない私がいます。こういう女性が、本当の自由の国アメリカを作っていったんだろうなあと思いながらも・・・
小南ケイトは初日硬かったんだなぁと、その後何度か観て感じています。だんだん、押すところと引くところができていて、ケイトがんばれ、という気持ちになってきています。

屋比久知奈さん
ケイト・マーフィー、エレノア・ワイドナー、給仕係

豊原江理佳さん
ケイト・ムリンズ、マデリーン・アスター、給仕係

お二人も、ケイトになったり、一等客になったり大忙し。
冒頭と、最後で、イスメイを見つめるその姿を見るだけで涙が溢れてきます。
どうか、力強く生き抜いてほしいと願わずにいられません。


安寿ミラさん
アイダ・ストラウス、三等客
最初に三等客の姿で登場。その後、「メイドになりたい」でもう一度三等客の姿で登場しますが、それ以外はアイダです。詳細は佐山さんのところで。

鈴木壮麻さん
エドワード・スミス
初演から役変わりとなった鈴木さん。
鈴木さんの舞台はたくさん拝見しています。初日に拝見したことも何度もありますが、いつも初日から完璧。他の役者さんが手探りの時でも、鈴木さんはしっかりしていて、鈴木さんが軸となって舞台が成熟していく感じでした。
ところが、初日、あれ?鈴木さん迷っている?
と感じたものの、スミス船長自身、本当に、どんな命令を出すときも迷っていたのではないかとも思えたので、初日の感じもすごく新鮮で、よかったと思っています。
その後は、さすが船長です。迷っていることは出しつつも、不安を表に出してはいけない、ということが観客には伝わる、迷っている船長を演じていらっしゃいます。文字にすると難しいですけど、こういう感じです。
鈴木船長のすてきなところを上げたらもう切りがありません。で、どうしてもというなら、最初の方なんですけど、イスメイの意見に押されて、速度を上げたすぐ後に、小野田ライトーラーに航路が外れていると言って怒鳴りつけるところです。封建社会の名残が・・・そして、制度は民主的でも、実際はこのころと変わっていないと感じ、それではいけないのではないかと考えさせられる場面です。そして、次の「バレットの歌」にも繋がっていくのですよね。
こう書いていて思い出しました。
ベル役をやっている木内さんが、航海士からボイラー室への命令を伝えられるときに「承知しました」と言うのですが、全部で5回言っていると思うのです。同じ「承知しました」が微妙に違うのです。本当はどう考えているのかなぁと思いながら、聞いています。

佐山陽規さん
イシドール・ストラウス、ロバート・ヒッチング、三等客
最初、三等客の姿で登場。次に船員のロバート・ヒッチング。そして、一等客イシドール・ストラウスで乗船します。三等客の姿は「メイドになりたい」で再登場。一番奥でカードをやっています。そして、栗原さんと同じく「不思議なブリッジ」でイスメイがやってくる方の場面でロバート・ヒッチングとして登場。このヒッチングさんは名前だけ、一等ダイニングサロンに船長を訪ねてくるマードックによって登場します。
さて、安寿アイダと佐山イシドールのストラウス夫妻。結構演出が変わったと思うのです。私の印象ですけれど、初演では「今でも」で観客はあんなに泣いていなかったですよね。それが、今回は、私も含め、ほぼ泣かないでここを通り過ぎるとこがないですね。客席に座っていて、明らかに観客の皆さんが涙しているってわかるってなかなかないですからね。
なぜ、そんなに印象が違うのか考えてみたのですが、やはり演出でしょうね。初演の時、全体を通してあんなにセンターでお芝居していたかなぁと。佐山さんに注目して観ている私は、かなりひいき目ですから、サブセンターでもセンターぐらいの印象があってもいいはずなんでけれど、そういう印象はないのです。
今回、もうぐっときて、涙腺崩壊する、安寿アイダが「あなたがいらっしゃるところに行きます」のセリフが、舞台のセンターになったのは大きかったと思います。初演は、下手の甲板だったためか、観客がややもすると聞き逃す感じだったのです。
あと、安寿アイダは前回はただただ控えめな奥様だった印象でしたが、今回はもう少し強い女性として演じていらっしゃる感じがします。佇まい、物腰は柔らかく、本当に優雅で、大金持ちのなかの大金持ちなんだろうなぁと思えます。威圧感は全くないのに、周りの人が思わず頭を下げてしまう感じです。もちろん、同じことが佐山イシドールにも言えます。
短いソロが一幕にもありますが、なんと言っても「今でも」。佐山さんのファンなのでたくさん歌を聞いてきました。大好きな歌はたくさんありますが、こんなに心に深く入り込んでくる歌声はなかなか出会えないと感じています。お二人で歌われるので、そのハーモニーもすてきなのです。
私の語彙がないのかもしれませんが、文字で伝えることなんてできませんよね。
思い出すだけで、心が震え、涙が止まりなくなります。ということで、どうでしょうか?

あまりに、重い話で終わるのはちょっとなので。
トムさんの演出と言えば、キャストの道具運びですよ。
ほぼ給仕係で登場する須藤香菜さんも女性なのに、タラップを何度も動かしています。
まあ、多くは、若手男性陣が担当しているわけです。で、佐山さんは何か運んでいるのかなあと観察(うん、ここまでくると観劇とは言えないかも)していると、「メイドになりたい」の場面が終わったとき、座っていた椅子を持って捌けていきました。

ファンの皆様、ご自分のご贔屓が何を運んでいるか探すのも楽しいですよ。


出航日の一日おきに乗船してきた私も、あと一回の乗船で最後となります。
何とか、無事生還を果たしてきました。そのおかげで、いろいろ語ることができました。

この舞台は群像劇です。そして、重なり合う声の美しさ、力強さを楽しむことができます。それを楽しむことができるのも、キャストお一人お一人の歌の技術の高さだと思っています。あんなに大勢で動きながら歌っているのに、歌詞がはっきり聞き取れるなんて、なかなかないことです。
本当にすばらしい舞台に出会えて、私はとても幸せです。
少なくなりましたが東京公演もまだあります。続いて大阪公演があります。歴史の目撃者になるもよし、耳福な時間を過ごすもよし、是非是非、劇場へお運びください。
ああ、あの場面のこと、もっと話したいなぁと思うのですが、そろそろ筆をおくことにします。

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