マガジンひとり

オリンピック? 統一教会? ジャニーズ事務所?
巻き添え食ってたまるかよ

漫画家と家

2009-12-14 22:55:31 | マンガ
『やっちまったよ一戸建て!!(全2巻)』伊藤理佐(双葉社)
30歳になったばかり、(当時)バツイチで、住みかとする2LDKマンション(ローン支払中)も気に入っていた伊藤理佐なのに、突然、注文建築の一戸建てに住みたいという夢が膨れ上がる。予算の都合上、土地だけ先に入手して建物は後からゆっくり、と思っていたものの、総額の有利な「元金均等返済」の住宅ローンでは1年半以内に建物を建てなければならないことがわかり、銀行・不動産(購入と売却)・設計・新築という難題を一挙にこなすことに。まさに「やっちまった」のだ。独身女性が住むよう設計された不思議な一戸建てが建つまでをリアルに楽しく描いた、ためになる?エッセイ漫画。



憶えてます??

「赤!赤!黄色!」

とか、

「むらさき!むらさき!むらさき!」

とか。赤・赤・黄色ではトマト・トマト・レモンとかでいいけど、紫が3つ続くとかの場合は、3つとも違うものを言わなければならないゲーム。テレビの『笑う犬』シリーズでネプチューンや優香がやってた。「ハムえもん」などと称して、ハムスターのかぶりものをかぶって行う。
もちろんそれは、子どもに人気の『とっとこハム太郎』のパロディなわけですが、実のところかわいらしいハムスターが活躍する漫画はハム太郎よりも理佐ちぇんちぇーの『おるちゅばんエビちゅ』が早い。子どもに見せられるようなものじゃないが。
ハム太郎がパクリ!?かどうかはともかく、もし「ハムスターが言葉をしゃべって主役として活躍する」というアイデアに特許権や実用新案が認められるとしたら、伊藤理佐さんは5億とか10億とか、田園調布に家が建つ!!古いか…。いいですよねェ、施主として一戸建てを建てるくらいは。



漫画家さんは一発当てるとでっかいが、浮き沈みの激しい稼業。特に伊藤理佐さんみたく「お笑い」系統の人は、締め切り間際とかアイデアを生むのに苦悶してるのでわ。そうやって売れっ子になったとしても、将来の保証はない。年収が2千万円あったとしても、10年後にはその10分の1になってしまうかも。住宅ローンで大金を貸す銀行としても、審査に困る職業ではないだろうか。↑に引用したコマでは、実際に借りるとき銀行側が浴びせてくる質問内容を、口調のみアレンジして絵に。
それだけに切実ですね。彼らにとって「家」というのは。『闇金ウシジマくん』でも、フリーター編で宇津井一家が返済に窮する住宅ローンのことや、サラリーマン編で小堀がジョギング中に抱く感慨など、あるいはもっと困窮して住みかさえ失う人びとの描写も身につまされる。ほかにオラの見てきた、ほんの一部の漫画にさえ随所にそれにまつわる話題を見つけることができる。いちばん下のつげ義春さんの「事件」では、つげさん若くてアパート住まいのころ、ゴミ出しのことで文句を言ってくる持ち家のばばあが。↓の山岸凉子さんの「あやかしの館」では、自立した大人じゃないのに洋館を建てて欠陥住宅を押しつけられた叔母さん。建築の欠陥以上に「方位」に問題があって、霊やら怪奇現象を招き寄せるという。いつもと違ってコミカル。



実際上に引用した《理佐ちぇんちぇーvs.銀行》の1コマだけで、どれほどの労力を注ぎ、そして2度と同じことを繰り返すのが許されないか、たいへんなお仕事。音楽と漫画って、それぞれ「言葉と音楽」「言葉・ストーリーと絵」に分けられるのが共通してる気もするけど、1回性とか模倣性では漫画がより厳しい。
こないだ「悪貨」って記事書いてて気づいたんだけど、大滝詠一と村上春樹ってやり方が少しかぶる。海外の小説やら音楽から文体を、語り口をパクッて、おしゃれげに装って、それでもって思いっきし日本人らしい、演歌的に唯我独尊なことを語るんだべ。音楽のパクリは簡単に露見するが、村上なんかではあちこちからパクッたうえ翻訳というフィルターを通すことによって、海外の読者までころりとだまされちゃったりね。「言葉」ってのがいちばん信用できない。くだらない小説よりはくだらない音楽、くだらない音楽よりはくだらない漫画を尊重したい。
「柳沢きみおのくだらない漫画」でも「新田たつおのくだらない漫画」でも、あの絵柄であの作風ってのは一つの発明だべ。ほかの人が真似することは許されない。楳図かずおさんの発明した絵柄とか作風とかは、パロディというかオマージュというかあちこちで使われて、もはや公共財の域ですけどね…それだけ偉大だってことですよ。文化勲章はもらえないが、「楳図ハウス」を建てて自ら表彰。先日のドキュメンタリー映画『グワシ!楳図かずおです』の中では、伊藤理佐さんのこの漫画と同様に楳図さんを施主として地鎮祭が行われる様子も。楳図ハウスを建築したのは「住友林業」ってなってた。
メモメモ。いまの経済状況ではとうてい無理だが、ひょっとしてデフレがものすごく進むとかで♪もしも~わたしが~家を建てたなら~~漫画図書館みたく丸ごと漫画本で埋めつくされた一室を~設けるでしょう~~


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« いなか、の、じけん | トップ | 萩尾望都原画展 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

マンガ」カテゴリの最新記事