先日お送りした、山岸凉子さんの短編マンガ「キメィラ」が25年後に一部現実のものに…っていう件なんですが、彼女は別に未来を予測したとかじゃなく、ただ純粋におもしろいマンガを描きたい、なかんずく彼女の考えるおもしろさっていうのは「恐怖」が主で、それを追い求めるうち、実現しうるような人の世の理(ことわり)を描いてしまった、とでもいうか。
別段すべての作品がそうであるわけでもない。予定調和に堕しているものも少なくないし、そもそも山岸さんには長いキャリアのわりに長編の代表作といえるものが『アラベスク』『日出処(ひいずるところ)の天子』そして今やってる『舞姫テレプシコーラ』くらいしか見当たらない。
彼女の持ち味は、人間の心理にひそむもの、神話や伝説ともなってきたような古来からあるそれらを丹念に追っていくことでかもし出される怖さにあるのでわ。一人の人間の心理を描き出すのに長じているものの、複数の人間が織り成す複雑な群像劇には不向きなような。
ただ、一人の人間=主人公の立場で味わう密室的な恐怖からいったら、右に出る者はない。判型が小さいのが難だが、文春文庫の『わたしの人形は良い人形』には、彼女の作品の中でも、いやありとあらゆるホラー漫画の中でも特に怖いと定評ある「汐の声」と、それに次ぐといわれる表題作の2作が収められてお得。しかし昨日書いたみたいに、心霊体験をしてても、霊魂なんてものは存在しないと確信してるオラにとっては、表題作は霊現象に寄りかかり過ぎており、エンターテインメント的なホラーとしては一級品だが、ほんとうの怖さはそれほどでも。何度見ても怖いということはない。
初めての方は怖いと思います。思いますが、その点では「汐の声」なんかでは、初めて見たとき↓画像のページをめくると出てくる次のページを見て心臓が止まりそうになった。ほんとうに怖い。
サワという、「霊感少女」として母親から売り出されてる=本人はあまり気が進まない=少女が、テレビの企画でスタッフや先輩の霊能師などと幽霊屋敷に泊り込む。そこで彼女は、霊能師たちは何も見えないというにもかかわらず、いろいろ怖ろしいものが見え、聞こえ、霊と感応してしまう。そして…。
ううぅぅ怖いよぅぅ…どうして彼女には見えたのか、彼女だけには見えたのか、まだ未読の方にはぜひご覧いただきたいんですが、そこにほんとうの怖さがあります。
オラの心霊体験では、薬物やレム睡眠のせいかもわからないが、確かにオラはちんちんのあたりを狙ってくる何者かの気配を感じます。金縛りにもあいます。オラは感じている。
以前にも、父が自殺してから、葬儀が一段落して、母は気が触れてしまった。夫に自殺された妻は悲しい。悲しいし怖ろしい。気が触れた者には、気が触れた世界が見えているのだ。母はだいぶ回復したように見えたが10ヵ月ほどで父の後を追ってしまった。心の中に、魔物が住んでいる。自分で自分を殺させてしまうほどの。
霊魂とかいうものは、客観的には存在しないかもしれないが、心の中にはいるのではないか。人間の心理というものが、いちばん怖ろしいと思います。もし気が狂った人の心象風景をマンガ化できるとしたら、どんなに怖ろしいでしょう。「汐の声」の結末は、それをも感じさせます。
とわいうものの、その時期にすばらしい成果を挙げた少女マンガの大家の先生がたが、90年代あたりからは軒並み力量を衰えさせてしまって…。実はテレプシコーラも最初の2冊を買ったんだけど、ナニワ金融道~ウシジマくん系統のリアリズムを経てきた目には、どうにもぎこちなくて読み進められなくて、手放してしまっていた。このほど「キメィラ」のこともあってネットなど渉猟するとやはり評判いいし、スポーツジムにいるお人形のような主婦バレリーナさんのことも思いながら再度挑戦してみようかと。
別段すべての作品がそうであるわけでもない。予定調和に堕しているものも少なくないし、そもそも山岸さんには長いキャリアのわりに長編の代表作といえるものが『アラベスク』『日出処(ひいずるところ)の天子』そして今やってる『舞姫テレプシコーラ』くらいしか見当たらない。
彼女の持ち味は、人間の心理にひそむもの、神話や伝説ともなってきたような古来からあるそれらを丹念に追っていくことでかもし出される怖さにあるのでわ。一人の人間の心理を描き出すのに長じているものの、複数の人間が織り成す複雑な群像劇には不向きなような。
ただ、一人の人間=主人公の立場で味わう密室的な恐怖からいったら、右に出る者はない。判型が小さいのが難だが、文春文庫の『わたしの人形は良い人形』には、彼女の作品の中でも、いやありとあらゆるホラー漫画の中でも特に怖いと定評ある「汐の声」と、それに次ぐといわれる表題作の2作が収められてお得。しかし昨日書いたみたいに、心霊体験をしてても、霊魂なんてものは存在しないと確信してるオラにとっては、表題作は霊現象に寄りかかり過ぎており、エンターテインメント的なホラーとしては一級品だが、ほんとうの怖さはそれほどでも。何度見ても怖いということはない。
初めての方は怖いと思います。思いますが、その点では「汐の声」なんかでは、初めて見たとき↓画像のページをめくると出てくる次のページを見て心臓が止まりそうになった。ほんとうに怖い。
サワという、「霊感少女」として母親から売り出されてる=本人はあまり気が進まない=少女が、テレビの企画でスタッフや先輩の霊能師などと幽霊屋敷に泊り込む。そこで彼女は、霊能師たちは何も見えないというにもかかわらず、いろいろ怖ろしいものが見え、聞こえ、霊と感応してしまう。そして…。
ううぅぅ怖いよぅぅ…どうして彼女には見えたのか、彼女だけには見えたのか、まだ未読の方にはぜひご覧いただきたいんですが、そこにほんとうの怖さがあります。
オラの心霊体験では、薬物やレム睡眠のせいかもわからないが、確かにオラはちんちんのあたりを狙ってくる何者かの気配を感じます。金縛りにもあいます。オラは感じている。
以前にも、父が自殺してから、葬儀が一段落して、母は気が触れてしまった。夫に自殺された妻は悲しい。悲しいし怖ろしい。気が触れた者には、気が触れた世界が見えているのだ。母はだいぶ回復したように見えたが10ヵ月ほどで父の後を追ってしまった。心の中に、魔物が住んでいる。自分で自分を殺させてしまうほどの。
霊魂とかいうものは、客観的には存在しないかもしれないが、心の中にはいるのではないか。人間の心理というものが、いちばん怖ろしいと思います。もし気が狂った人の心象風景をマンガ化できるとしたら、どんなに怖ろしいでしょう。「汐の声」の結末は、それをも感じさせます。
とわいうものの、その時期にすばらしい成果を挙げた少女マンガの大家の先生がたが、90年代あたりからは軒並み力量を衰えさせてしまって…。実はテレプシコーラも最初の2冊を買ったんだけど、ナニワ金融道~ウシジマくん系統のリアリズムを経てきた目には、どうにもぎこちなくて読み進められなくて、手放してしまっていた。このほど「キメィラ」のこともあってネットなど渉猟するとやはり評判いいし、スポーツジムにいるお人形のような主婦バレリーナさんのことも思いながら再度挑戦してみようかと。