マガジンひとり

自分なりの記録

瞬間風速

2009-09-17 21:53:37 | マンガ
絵やマンガで勃起するのに、人間に似せて精巧に作られたフィギュアでは勃起しない不思議。
絵やマンガは2次元で、情報量が少ない。なんらかの形で単純化しなければならない。人物を記号化・キャラクター化。それ自体が意味性を内在しており、われわれの心に触れてくるかもしれない。その方向づけには、作者がどのように設定するかということもあるし、見る者がどのように受け取るかということもある。連載マンガともなれば、さまざまな要因でキャラクターが変わってゆくこともありうる。
いかがでしょう。みなさん子どもの頃マンガを見て、この人物かわいい!とかかっこいい!とか思うのみならず、ドキドキして一挙手一投足が気になってしまったこととかないですか。オラねえ、そういう意味では少女マンガのほうがエロいんじゃないかと思ってました。少年マンガに出てくる、男にとって都合のいい女なんてのは、風俗嬢・AV女優みたいなもんで、本当の意味ではそれほどエロくないんじゃないか。少女マンガでは、作者も登場人物も、女が自らの意思でエロい。
『うる星やつら』が人気を集めて、ラムちゃんほか登場人物が無限にエロパロされ続けるのも、作者が女性ってことが関係してたんじゃないか。少女マンガなら読者も女子になるので、ラムちゃんのようなわかりやすいお色気はないが、女子たちが感情移入できるよう設定された人物が恋したり悩んだりする姿はいいものです。中でも、見ていて本当に心のざわめく瞬間があった。↑画像の英玲(はなぶされい)─『エースをねらえ!』。
主人公の岡ひろみより1年後輩。テニス部に入部した当時から実力あり、色白で縦ロールの美貌から、「お蝶夫人2世」と称される。ところが、お蝶夫人こと竜崎麗香はひろみより1年先輩で、ひろみだけでなくすべての女子テニス部員の憧れを集める女王的存在だったが、逆に英玲はひろみに憧れて熱視線を浴びせて、体育祭の日に「あなたのなにもかもが好き」と告白するのだ。こ、こ、これはエロい…。
瞬間風速では、『エースをねらえ!』の全登場人物、いやそれ以外のすべての少女マンガ少年マンガ合わせても、もっとも心うずかせる存在かもわからない。英玲。
でもね、彼女はその後、見せ場はだんだん少なくなってゆき、物語の中に埋没して平凡な存在になってしまう。なるほどこうした同性愛に近いような設定では、物語を発展させられなかったというのもわかるが、このマンガでは宝力冴子とか緑川蘭子とか他の女性キャラたちも初登場がもっとも魅力的でだんだん色褪せてゆく傾向にある。だいたい肝心の岡ひろみにしてから、宗方コーチや藤堂といった男性キャラへの依存が強くて、宗方が死んで虚脱状態だったのを禅僧の桂コーチの下で再起するという物語の後半では魅力が半減し、抹香くさい。
抹香くさいといえば、紅天女のくだりに入ってから延々と終わらない『ガラスの仮面』もそうなんですけどさ。先日44巻が発売され、全盛期より衰えたとわいえ、肝心の劇中劇がつまらないわりには楽しませる。そこには、紅天女役を北島マヤと競う姫川亜弓の言葉に鍵も見つかる↓。「あの子はね、森の中の底しれない深い沼のようなところがあるの。なにがひそんでいるかわからない神秘的な沼…。ときたま沼の底からキラッと光がみえるときがあって驚くの。だからもっと沼を覗いてみたくなる…」。
いつもの台詞なんですけどね。「才能はあの子(マヤ)が上よ」。血筋も美貌も才能もあるのに、平凡そうだが舞台上では人が変わる北島マヤを前にしては、いつも葛藤を抱き、それでもフェアに振る舞って最善をつくす姫川亜弓。読者にとっても、北島マヤがそれだけ神秘的に輝いて見えるような描かれ方をされているのはもちろんのこと。すでに絵柄も文法も古くなっているし、英玲や岡ひろみのようなヴィヴィッドな色気には欠けるが、物語を長期にわたって展開してゆけるような、自由度の高い巧みなキャラクター設定だったといえるのではないだろうか。
どう設定し、どう動かすのか。まるで神さまのように支配し、読者の心をつかむ長編マンガの作者さん。それはやはり、しこしこマンガ描いてるより、現実の人間を操作したくなってしまうかも。『エースをねらえ!』の山本鈴美香さんは新興宗教の教祖となり、『ガラスの仮面』の美内すずえさんも精神世界の研究団体を立ち上げてるんだとか。しかしあれですよ。両作品ともアニメ化・ドラマ化されたりもしたし、男性読者も少なくない。にもかかわらず、『ガラスの仮面』のエロパロ同人誌(男性向けの)ってお目にかかったことないなあ。『エースをねらえ!』のはいくつも見たことある。でも、英玲を描いた人は誰もいないんじゃなかろうか。こんなにかわいいのに。エロ向きの設定なのに。誰か描いておくれよ。画力の高いお方でしたら大金を払う用意があるよん。


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4 コメント

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玲ちゃん (おがわ)
2011-07-20 21:22:48
この子いいですよね・・・何ていうか、昨今はやりの「百合」ではなくて、ガチレズの欲情に満ちたトロンとした目が、かつて少女マンガでここまで赤裸々に描かれたことがあったでしょうか。ひろみと麗華様との愛憎は、それこそ百合の範疇なのですが、玲ちゃんはちがいます。完全にひろみに欲情していますから。
しかも、同じたてロールの金髪少女でも、額をあらわにしてオバサン臭いオチョウ婦人と違い、ぱっつん前髪にくりくりした瞳、まさにお人形さんのよう。太めに描かれた眉、幼げな輪郭、そしてものすごくエッチ。緑川さんは「あなたの視線はあの子と同じよ」と言ってたが、ちがうと思うんだよなあ・・・と、若き頃読んでいて思いました。
以前から描きたいと思っていました。描いてみましょうか?
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はじめまして (マガジンひとり)
2011-07-21 01:22:26
同感いただけて、うれしく思います。ありがとうございます。
お言葉の中にある、「前髪ぱっつん」や「百合というよりガチレズ」といった、21世紀的な男子の欲求も先取りした、すごい漫画だったんだなァ~とあらためて感慨を抱いております。

そして、絵を描かれる方なのでしょうか。ひょっとして甘藍先生……!?
もしプロット等があれば、ラフ画をメルアドに送っていただければ、詳細打ち合わせのうえ、当方で出資して、同人誌化させていただければと願っております。
今後、何卒よろしくお願いいたします。
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Unknown (おがわ)
2011-07-21 16:29:43
マガジンひとり様
お蝶婦人二世と言われて、華麗な容姿の玲ちゃんですが、合宿ではしゃぎまくる様子からも、庶民性ばっちりで、これがまたかわいいんですよね。
また、ひろみのことを「あなた」と呼称して告るのは、愛とエロスに生きる女の証ですw
ひろみがお蝶婦人を「あなた」なんて絶対に言わないですもんね。

ところで同人誌等の案件については、メールを送りましたのでよろしくおねがいします。
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こんにちは! (マガジンひとり)
2011-07-21 18:08:14
メール遅れまして、たいへん失礼いたしました。『エースをねらえ!』を読みふけってしまって…

そういえば告白のときだけ「あなた」と呼びかけていますね…このあたりの山本鈴美香さんの作劇術は神がかってますねェ

詳細打ち合わせながら、いずれ具現化できますよう心より願っております。よろしくお願いいたします。
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