【マニュアル労働の問題点】
《マニュアル労働の問題点は、労働の単純さ及び労働者の創意工夫の否定にあるのではなく、複雑な労働の禁止と特定の創意工夫の強制にある。（業務日誌「2014-03-07 破壊パレート」「2014-01-03 システム反逆罪もしくは創意工夫罪あるいは自主研修罪」より。一部を加筆修正）〔2015-06-12追記〕表現の一部を補足・修正》
マニュアル労働の問題の核心は、働く者の創意工夫が軽視され、必要最低限の知識・技能しか求められず、ついでに低賃金であること……よりも、必要最低限以上の知識・技能を禁じられ、意に染まぬ「創意工夫」を強要されることにある。労働者の技能レベルが最低水準に達しないことより、彼／彼女らが最低水準以上の技能・技術を発揮してしまうことの方が重罪である。
例えば学習塾・予備校業界では、指導マニュアル及びシステムが精緻化・合理化され、「禁止」（するな）と「強要」（しろ）の言語体系が蔓延している。マニュアル化した講師職は、日々の業務の忙しなさと反比例して人件費（講師報酬）が生存ギリギリのラインまで切り下げられていく。
今日〔2014-01-03〕の朝日新聞朝刊に、コンビニ契約を解消した酒屋の主（あるじ）の記事が掲載されている〔注〕。他人事（ひとごと）とは思えない。
遠い昔、パチンコ屋でアルバイトしていたときに店長が「過剰サービスをするな」と訓示を垂れていた。店員個人の勝手なサービスが規則違反であるのはわかる。しかし上記の記事を読むと、奇妙な言い方になるが、スキルの蓄積や創意工夫それ自体が重大なシステム反逆罪になりそうである。教員にあてはめると、自己研修能力のある教員の存在そのものが国家への反逆であり、排撃・粛清の対象になる。クメール=ルージュか。そんなことを考えた。
最近、塾と学校の連携について「全国学習塾協会専務理事」という肩書きを持つ人物の言葉が印象的だった――「塾業界では給与のピークは40歳前後。学校が50代の元講師の活躍の場になれば、講師にも塾にも魅力的です」（「（学びを語る）塾と学校の連携 ともにメリットある仕組みを 稲葉秀雄さん」朝日新聞2014-02-19朝刊）。
「語るに落ちる」とはこのことだろう。塾業界の40前後の平均給与が他の業界と比べて高いという話は（絶対に）聞いたことがない。平均的であると言うことさえ（絶対に）聞いたことがない。さらに、50代の人間を「元講師」と臆面もなく言ってのける感性が、この業界の人事管理の実態を雄弁に物語っている。
一見すると「プロ」であること、「プロ」になることを称賛・称揚する業界のようでありながら、現実にはマニュアル労働が蔓延している。業界・企業（塾）には講師職に専念する「50代」を抱え込むほどの余裕がない。また、必要最低限以上の知識・技能を禁じられ、意に染まぬ「創意工夫」を強要された「50代の元講師」のスキルは、恐らくあきれるほど低位に留め置かれている。
自衛と自戒の意味を込めて、塾・予備校講師が思ったほど（あるいはまったく）「プロ」の名に値する職業ではないことを自覚する。今さらながらの「無知の知」である。
注
朝日新聞2014-01-03朝刊。
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「ゆらぐ正社員――目指すべきか、抜け出すべきか」2013-01-17 ＊学習塾講師が正社員化を求めて労組を結成したニュースについて。講師職を50歳で「雇い止め」にしよう（「雇い止め」にできる）と考えている点にこの業界・企業の人事管理の本質が表れている。50歳は単なる年齢ではなく、ライフサイクルの中でそれなりに意味のあるステージだと（一般的には）考えるものだが。
《マニュアル労働の問題点は、労働の単純さ及び労働者の創意工夫の否定にあるのではなく、複雑な労働の禁止と特定の創意工夫の強制にある。（業務日誌「2014-03-07 破壊パレート」「2014-01-03 システム反逆罪もしくは創意工夫罪あるいは自主研修罪」より。一部を加筆修正）〔2015-06-12追記〕表現の一部を補足・修正》
マニュアル労働の問題の核心は、働く者の創意工夫が軽視され、必要最低限の知識・技能しか求められず、ついでに低賃金であること……よりも、必要最低限以上の知識・技能を禁じられ、意に染まぬ「創意工夫」を強要されることにある。労働者の技能レベルが最低水準に達しないことより、彼／彼女らが最低水準以上の技能・技術を発揮してしまうことの方が重罪である。
例えば学習塾・予備校業界では、指導マニュアル及びシステムが精緻化・合理化され、「禁止」（するな）と「強要」（しろ）の言語体系が蔓延している。マニュアル化した講師職は、日々の業務の忙しなさと反比例して人件費（講師報酬）が生存ギリギリのラインまで切り下げられていく。
今日〔2014-01-03〕の朝日新聞朝刊に、コンビニ契約を解消した酒屋の主（あるじ）の記事が掲載されている〔注〕。他人事（ひとごと）とは思えない。
コンビニに並ぶ品数は２千～３千点。多品種を扱えるのは、店ごとの売り上げデータを本部で集計することで、売れる分だけ仕入れることができるからだ。賞味期限が近い商品を、棚の前に出すといった小技も指導してくれた。
半面、自分で知恵を絞る余地は少ない。似通った品ぞろえ、流れ作業の会計。年中無休で回すため、店に立つのはアルバイトが多くなる。丹羽さんがレジに入ると客と話し込んでしまい、かえって会計が滞る始末だった。
「マニュアル通りにやれば簡単。だけど……」
半面、自分で知恵を絞る余地は少ない。似通った品ぞろえ、流れ作業の会計。年中無休で回すため、店に立つのはアルバイトが多くなる。丹羽さんがレジに入ると客と話し込んでしまい、かえって会計が滞る始末だった。
「マニュアル通りにやれば簡単。だけど……」
遠い昔、パチンコ屋でアルバイトしていたときに店長が「過剰サービスをするな」と訓示を垂れていた。店員個人の勝手なサービスが規則違反であるのはわかる。しかし上記の記事を読むと、奇妙な言い方になるが、スキルの蓄積や創意工夫それ自体が重大なシステム反逆罪になりそうである。教員にあてはめると、自己研修能力のある教員の存在そのものが国家への反逆であり、排撃・粛清の対象になる。クメール=ルージュか。そんなことを考えた。
最近、塾と学校の連携について「全国学習塾協会専務理事」という肩書きを持つ人物の言葉が印象的だった――「塾業界では給与のピークは40歳前後。学校が50代の元講師の活躍の場になれば、講師にも塾にも魅力的です」（「（学びを語る）塾と学校の連携 ともにメリットある仕組みを 稲葉秀雄さん」朝日新聞2014-02-19朝刊）。
「語るに落ちる」とはこのことだろう。塾業界の40前後の平均給与が他の業界と比べて高いという話は（絶対に）聞いたことがない。平均的であると言うことさえ（絶対に）聞いたことがない。さらに、50代の人間を「元講師」と臆面もなく言ってのける感性が、この業界の人事管理の実態を雄弁に物語っている。
一見すると「プロ」であること、「プロ」になることを称賛・称揚する業界のようでありながら、現実にはマニュアル労働が蔓延している。業界・企業（塾）には講師職に専念する「50代」を抱え込むほどの余裕がない。また、必要最低限以上の知識・技能を禁じられ、意に染まぬ「創意工夫」を強要された「50代の元講師」のスキルは、恐らくあきれるほど低位に留め置かれている。
自衛と自戒の意味を込めて、塾・予備校講師が思ったほど（あるいはまったく）「プロ」の名に値する職業ではないことを自覚する。今さらながらの「無知の知」である。
注
朝日新聞2014-01-03朝刊。
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