●五感俳句032・味覚03(鹹い)=しおからい・山口誓子
「冬の旅鹹(しおから)き海にて手を洗ふ」(→山口誓子06)
季語(冬の旅・冬)
2月末日。最後の冬の句です。海の水は味わうものではありませんが、塩辛い海水で手を洗いました。旅先の1シーンです。
●次元俳句032・端(空間)01・橋石(はしかんせき)
「縄とびの端もたさるる遅日かな」(→橋石04)
季語(遅日・春)
いつも縄の端をもって振る役の子供の様子でしょうか。それとも子供のために作者が縄を振っているのでしょうか。外で遊ぶ子等に、しだいに日が伸びてきました。
●三色絵031・頼朝の・透次
○「頼朝の鳥居をくぐる二月かな」(→透次032)
季語(二月・冬) →三色絵フォトチャンネルへ
「頼朝の鳥居」とは鎌倉鶴岡八幡宮の鳥居のことです。鳥居は3つありますが、若宮大路の二の鳥居から三の鳥居までの間は、道の中央が一段高く段葛といわれる桜並木となっています。桜の季節まではもう少し間がある鎌倉です。
○技法俳句031・擬人03・阿部青鞋
○「いくつ鳴るつもりの柱時計かな」(阿部青鞋01)
○季語(無季)
【鑑賞】:もはや「擬人」は俳句の技法としては、常套的すぎて目立ちません。ボーン、ボーンと柱時計が時刻を知らせています。そのうち止むだろうと1つ、2つと聴いているとなかなか鳴り止みません。最大の12個まで鳴るつもりでしょうか。
○阿部青鞋(あべせいあい)(1914~1989)
○好きな一句「砂ほれば肉の如くにぬれて居り」02
○季語(無季)
【Profile】:東京渋谷出身。新興俳句の流れを汲む。1936年「句帖」参加。1937年「風」参加。1940年→渡辺白泉、→三橋敏雄などと古俳諧の研究。1941年『現代名俳句集』刊、応召。1958年→高柳重信の「俳句評論」参加。1959年「瓶」創刊(後に「壜」)、「八幡船」参加。聖書に親しみ受洗、その後牧師。
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阿部青鞋掲載句
03すこしの血はたらきて飛ぶ寒雀(寒雀・晩冬)〈特集568・いろは俳句5-7「す」〉2022/2/2
04籐椅子の客をしばらくひとりにす(籐椅子・三夏)〈特集645・家具俳句2-10〉2024/5/3
○方法俳句031・交信01・川崎展宏
○『「大和」よりヨモツヒラサカスミレサク」』(→川崎展宏03)
○季語(蝶・春)
【鑑賞】:「交信」という俳句の方法です。本来は繋がることができないものと繋がることです。沈没した戦艦大和から「スミレサク」という打電を聴いた作者は、「繋がらなければならない」という歴史的宿命を自覚しているかのようです。