●技法俳句011・配合01・田中裕明
○「悉く全集にあり衣被」(田中裕明01)
○季語(衣被・秋)
【鑑賞】:「配合」は俳句の形式の代表的なものですが、その効果の面では技法や方法の一つでもあります。ここでは「技法」の範疇に括ってみます。いわゆる「つかず離れず」、「二物衝撃」というものです。この技法を使ったもので有名な句は→中村草田男の「降る雪や明治は遠くなりにけり」03があります。「降る雪」と「明治は遠くなった」こととは直接的にはつながりはないのですが、その微妙な距離が俳句に無限の広がりを与えています。あたかも地球を逆方向に一廻りしてから、つながるように。
【鑑賞】:掲句の「衣被(きぬかつぎ)」は里芋を皮のまま蒸して、その皮を剥いて食べる料理ですが、「悉く全集にある」こととは、つかず離れずの関係にあります。また、誰の全集であるかも示されておらず、「不明」の味を醸しています。
○田中裕明(たなかひろあき)(1959~2004)
○好きな一句「牡丹は最もおそく揺るるもの」02
○季語(牡丹・春)
【Profile】:大阪出身。1975年、大阪府立北野高校入学。在学中に「青」入会、主宰の→波多野爽波に師事。1978年、京大工学部入学。翌年「青」新人賞。1981年には青賞。同人となり編集実務。1982年大学卒業後、村田製作所入社。同年『童子の夢』50句で第28回角川俳句賞受賞。1984年、同人誌「晨」創刊に参加。1986年、→森賀まりと結婚。1991年、波多野爽波死去により「青」終刊。2000年「ゆう」創刊主宰。2004年8月から慢性骨髄性白血病のため入院。2004年12月30日、45歳で肺炎にて死去。
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田中裕明掲載句
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04繭づくる晩秋蚕のごとく病む(晩秋・晩秋)〈次元552・晩秋(時間)1〉2021/10/10