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【映画】暗殺・リトビネンコ事件

画像はアンナ・ポリトコフスカヤ、彼の一月前に犠牲になった

2007 露 ドキュメンタリー 監督 アンドレイ・ネクラソフ 出演 アレクサンドル・リトビネンコ マリナ・リトビネンコ 原題 Rebellion:The Litvinenko Case 3月21日DVDにて鑑賞

あまりの凄まじさに圧倒され、感想を発表する気力が湧かなかったが、29日モスクワで地下鉄連続爆破事件がおき、きょう31日も南部で爆破事件勃発との記事を読み、にわかにその気になった。この作品は2007年にカンヌ映画祭で飛び入り上映、日本でも上映されたそうだが、ロシア国内では今も見ることができない。

ご存知の方も多いだろうが、FSB=ロシア連邦保安庁(旧KGB)の元中佐リトビネンコ44歳が亡命先のロンドンで死んだのは2006年11月。死因はポロニウムという放射性物質の被爆で、髪は抜け、皮膚はただれ、悲惨な苦痛の多い死に方だった。こういう物質を入手できる者は限られている。FSBが実行したのではないか。かれが組織を内部告発したためだ。原題の「Rebellion」は「叛乱」という意味で、彼は自分の行為をそう呼んだ。

その1月前には女性ジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤ48歳が自宅ビル内で射殺された。彼女は体制批判派で、モスクワ劇場占拠事件の犯人のひとりが、プーチン政権内部に働いていると新聞で暴露した。

当局に批判的なジャーナリストが次々に消されていく。記者会見するプーチンの平然とした表情は、誰が引き起こしたかを雄弁に物語っているように思える。彼は金銭面での悪名も高いそうだ。国民の半分が最低線上の貧困にあえいでおり、最悪の民主主義だと評する声もある。

フィルムの最初と最後に、食卓を整えるリトビネンコの姿と、家族で手をつないで歩く情景ー6歳の息子を真中にーを配しているのは心を打つ。仏独英露語を駆使しての長期・広範囲の取材により、帝政時代にまでさかのぼってロシアの民族性を考察したり、フランスとの歴史的な友好関係をたどったりと、内容のぎっしりつまった作品になっている。作者ネクラソフはタルコフスキーの「サクリファイス」の助手をした経歴もあり、「サーシャ」=アレキサンドル・リトビネンコの5年来の友人でもあった。製作中に住居と車を何者かにあらされるという脅しにあいながら、完成させている。その才能と勇気には感嘆するほかない。

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