映画の感想など・・・基本的にネタばれです。
しづのをだまき
幕末のオブローモフ
2017年02月27日 / 本
19世紀ロシアの作家イワン・ゴンチャロフが創造した「余計者」「無用者」の始祖ともいえる人間像が「オブローモフ」である。今で言うと「カウチポテト」(すでに死語か)、ニート・ひきこもり、うつ病だろうか、1日中寝床にいて起きるのも、仕事も、読書もいや、人にも会いたくない、召使に衣食住、生活のすべてを任せている。それができるのも地主の親が財産を残してくれたからだが。
「オブローモフの生涯より」というニキータ・ミハルコフの映画を見たのは30年ほど前だろうか、ロシアいやソ連映画祭の一環だったが、とびぬけて印象的だったのを思い出す。当時原作も読んだのかははっきりしない。
ゴンチャロフの「平凡物語」上・下巻と「断崖」1‐5巻の計7冊を、家では気が散るので数か所の図書館に通いながら2か月かけて今夕読み終わったところである。本当は「オブローモフ」が読みたかったのだが開架にないので。(なぜか?いまどきあまりに退廃的と見られてか)
ところでタイトルの「幕末のオブローモフ」とは?市立図書館では「ゴンチャロフ」の「日本渡航記」を見つけ、たぶん同名異人であろうが、この際だし読んでみるかと申し込んだ。すると、ものすごい厚さ重さで膝に載せるのもためらわれるほどである。中を見て更にびっくり、あの「オブローモフ」の作家と同一人ではないか。プチャーチン提督に従ってはるばる日本にやってきて、役人たちをおろおろさせたロシア官僚と、カウチポテトのあの主人公がどうにも結びつかない。
彼の小説はどれも対象への没入が深く、叙述が詳細で長く、時々やり切れなくなるけれど、この「日本渡航記」は旅行記なので舞台が移動し、一つ一つの挿話がじきに完結し、飽きるひまがない。特技が絵画だという作者らしい、鋭く細かい観察眼による的確な人物描写だ。
中でも吉兵衛というオランダ語通訳は傑作だ。
「拙者は何もせずに臥せっているのが好きでござる」が口癖。
(そんな怠け者がよく外国語を習得したものだと思うが)
「おやおや、ここにオブローモフがいるよ」(訳者の井上満風にいえば)
と、わが意を得たりの思いだった。
注では、西吉兵衛はオランダ通詞の家柄の11代目。同書には「でっぷり肥っていた」とあり、大儀そうな言動は数年後の死亡を予告しているかのようだ。
「歩行力測定会」8-12-12
「お辞儀」 18-2-9
「オブローモフの生涯より」というニキータ・ミハルコフの映画を見たのは30年ほど前だろうか、ロシアいやソ連映画祭の一環だったが、とびぬけて印象的だったのを思い出す。当時原作も読んだのかははっきりしない。
ゴンチャロフの「平凡物語」上・下巻と「断崖」1‐5巻の計7冊を、家では気が散るので数か所の図書館に通いながら2か月かけて今夕読み終わったところである。本当は「オブローモフ」が読みたかったのだが開架にないので。(なぜか?いまどきあまりに退廃的と見られてか)
ところでタイトルの「幕末のオブローモフ」とは?市立図書館では「ゴンチャロフ」の「日本渡航記」を見つけ、たぶん同名異人であろうが、この際だし読んでみるかと申し込んだ。すると、ものすごい厚さ重さで膝に載せるのもためらわれるほどである。中を見て更にびっくり、あの「オブローモフ」の作家と同一人ではないか。プチャーチン提督に従ってはるばる日本にやってきて、役人たちをおろおろさせたロシア官僚と、カウチポテトのあの主人公がどうにも結びつかない。
彼の小説はどれも対象への没入が深く、叙述が詳細で長く、時々やり切れなくなるけれど、この「日本渡航記」は旅行記なので舞台が移動し、一つ一つの挿話がじきに完結し、飽きるひまがない。特技が絵画だという作者らしい、鋭く細かい観察眼による的確な人物描写だ。
中でも吉兵衛というオランダ語通訳は傑作だ。
「拙者は何もせずに臥せっているのが好きでござる」が口癖。
(そんな怠け者がよく外国語を習得したものだと思うが)
「おやおや、ここにオブローモフがいるよ」(訳者の井上満風にいえば)
と、わが意を得たりの思いだった。
注では、西吉兵衛はオランダ通詞の家柄の11代目。同書には「でっぷり肥っていた」とあり、大儀そうな言動は数年後の死亡を予告しているかのようだ。
「歩行力測定会」8-12-12
「お辞儀」 18-2-9
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