うたのすけの日常

日々の単なる日記等

うたのすけの日常 山頭火の日記を読む その68

2008-08-29 06:05:47 | 日記

ここ数日の山頭火、俳友をしきりと訪ね御馳走に預かりながら、妙に苛立たしさが見られます。十二月十七日の日記冒頭に、行程六里、そのあと墜地獄、酔菩薩と書きなにやら不気味な気配です。「今日は一句も出来なかつた、かういふあはただしい日に一句でも生まれたら嘘だ、ちつとも早くおちつかなければならない。」どうやらしきりと俳友を訪問するのは草庵の場所の選定に血なまこになっているからです。「自分の部屋が欲しい、自分の寝床だけは持たずにはゐられない、これは私の本音だ。」流浪の旅に終止符が打ちたいのでしょうか。しかし懐中一文無しで草庵なるもの建つものなのでしょうか、素人には分かりませんがなんとなく山頭火の意中が匂ってまいります。そうです、よく昔話に無人の荒れ果てた草庵に、雲水が突然住み着くといったことを聞きます。山頭火はどうもその線を的にしているようですが、思うような物件に当らずいらいらが嵩じているようです。
 十八日、行程不明とあります。なんか捨て鉢です。「終日歩いた、ただ歩いた、雨の中を泥土の中を歩きつづけた、歩かずにはゐられないのだ、ぢつとしてゐては死ぬる外ないのだ。」そう言いつつ、夜に元寛さん宅を訪ね、煙草からお茶お酒、その上夕食まで頂くといった変わり身も自然です。その後がまた凄いことを口にするのです。それは自分もいよいよ乞食坊主になれきれるらしい、そのことを喜ぶべきか悲しむべきかとハムレット並に悩みますが、山頭火らしい落ちをつけます。「どうでもよろしい、なるやうになれ、なりきれ、なりきれ、なりきつてしまへ。」煩悶の末の結論でしょうか、自己嫌悪が胸中を掻き毟るのでしょうか、ただあたしには悲しさが募ってまいります。<o:p></o:p>

 今夜の寝床を求むべくぬかるみ
与へられた寝床の虱がうごめく
降つたり照つたり死場所をさがす   

「嫌な一夜、それは落ち着かない一日の正しい所産だ」至言であります。<o:p></o:p>


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (やまちゃん)
2008-08-29 10:44:51
こんにちは
心は錦 なんて言いますが 人様から食事いただくのは  なんとなく卑屈になってしまいますよね。自ら選んだ道とはいえ・・ 悲しいね。
Unknown (うたのすけ)
2008-08-29 12:23:03
やまちゃんへ。
今日は。
常人にはとても理解しかねますし、その胸中を押しはかれば悲しくもなります。

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