自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

競争から共創を常識とする世界に向けて~戦争と共存を孫子に読む

2015-10-14 20:38:57 | 自然と人為
 「孫子の兵法」は戦いに勝利する指南書として知られている。人生も戦いとして説明される。しかし、孫子は「百戦百勝は善の善なるものに非ず。戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり」(謀攻篇)のように非好戦的であり、「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」(謀攻篇)と相手と自分をよく知ることの重要性も指摘している。このことから老子に近い哲学書だという指摘もある。

 ここでは、NHK「100分de名著”孫文”」を紹介し、
 孫子(1)戦わずして勝つ
 孫子(2)心をつかむリーダーとは?
 孫子(3)勝つための知略
 孫子(4)勢いを作り出せ!
孫子と生物学に学ぶ「戦わずして勝つ」から、「彼を知り己を知り、共に生きる」道を考えたい。

 孫子は約2500年前の「周」の国が乱れた春秋戦国時代の書なのに、今も読み続けられているのは「戦い」が人間の本能だからという考え方もある。しかし、この本が書かれる前の「戦い」は小規模でルールがあって貴族の戦いに敗れれば撤退するという今のスポーツに近い美学があった。戦いがエスカレートして広域化し、兵に農民が加えられるようになると様々な考え方を統一し、国の存亡をかけた戦争となり、そのような状況下で孫子が生まれた。今日、ますますグローバル化した世界はその延長上にあると考えて孫子の考えが大切にされるのだろう。

 しかし、文明が人間に課す過酷な競争の世界を否定し、電線を自宅に引くことも車で遠くに行くことも共同体を破壊するとして、17世紀のアメリカ移民当時の生活を維持しているアーミッシュの人々もいる。自己のために他者に勝つのではなく、人類の平和な存続を求めて他者とともに自己を生きるという道が、グローバル化の先にあって欲しい。
 企業が他国や地方に進出するのは、進出することによってその国や地方から利益を持ち帰るのではなく、その国や地方の生活が良くなることを目的とすることが当然とされる時代が来て欲しい。自衛隊も武器を捨てて災害救助隊にすれば、世界から警戒されるのではなく期待される存在になるだろう。競争から共創への時代を夢ではなく、現実の人類の共通目標にしていくのは私たちだ。

初稿 2015.10.14

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