自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

地方をどう創生するか~アベノミクスと日本経済の未来③

2014-10-18 21:29:58 | NHK

地域経済の活性化を考える

      『日本経済“未来型モデル”を求めて』 第2部(動画)

司会「本日、ご出演のシューマンさんは、今VTRでご紹介したアメリカでの地域経済活性化の試み、「スモールマート革命」を提唱していらっしゃいますが、シューマンさんは「スモールマート革命」は高齢化社会でも適したシステムだとお考えでしょうか。」

以下は意見の概要を示します。ことにシューマン氏の[冒頭部分]は私の理解で解説的に意訳しました。

シューマン「その通りです。スモールマート革命とは地域と結びついた中小企業が、地域資源を地域で循環的に活用することでお金も地域で循環し、地域経済の自立性と競争力を高め、新たな資産を生み出す効率の良い経済にできることです。アメリカでは「地域で地元の中小企業が多ければ多い程、雇用を生み出すことができる(小さな企業の大きな雇用創生力)」という研究(ハーバードビジネスレビュー)や、「地域企業が多い程、一人当たり所得の伸びも多い」という調査報告(FRB)があります。地元の企業は社会の分配の平等性のために重要です。」

「VTRで紹介されたベリングハム市では、地元の人が地元でお金を落とすと、そのお金の経済的価値が高くなることが示されています。オーストリアのギュッシングにおいても自立の重要性が示されました。よく地域経済についてグローバル経済から離れていると勘違いしますが、そうではありません。ギュッシングはエネルギー自給によって経済力が高まり世界とつながる。皮肉かも知れませんが、地域経済を強化していく中で、グローバル貿易は実は拡大する可能性があるのです。何故かというとスモールマート革命は資産を生み出す戦略であるからです。」

司会「藻谷さんはオーストリアの試みを「里山資本主義」と呼ばれていますが、オーストリアの試みが高齢者が増加する日本の地方においてどのように生かされていくとお考えですか。」

藻谷「『里山資本主義』はNHK取材班と一緒に書かせていただいた本の題名なのですが、去年、私の予想と違い非常に評価していただき、よく売れました。これは今まで無価値の資産、山に生えた木だとか退職された方とか、そういう金銭的に価値がないと思われている資産を活用することによって、一つには思わぬ輸出産業を生みます。オーストリアの場合は木材ボイラーの競争力が高くなっている。他方で、競争力がないとしても水や食料や燃料とある程度自給できる人がいることで、GDPは増えなくても、実際には豊かな生活を営む人が増えると社会的安定性が増す。この2つを社会の保険のようなもの、サブシステムとして導入したらどうかということを言っています。
 ちなみに、スイスとかシンガポールといった国は、これらをうまく組み合わせていて、国際競争をしているようでいて実は非常に地元産のものを大事にしている。スイスフランは今、非常に高いですからドイツより物価が高くなります。はるかに高いのに、スイス人が市場競争の中でスイス製品を選んでいる。このことでスイス経済が強化されて、チーズとか時計のように非常に競争力のある製品が生まれいる。実はローカルな経済とグローバルな経済をうまく組み合わせる方が、グローバルだけよりは強いのではないかというのが、「里山資本主義」の発見です。」

ベネシュ 「二人のとっても良い発想、仰る通りだと思います。ただ、スイス、オーストリア、アメリカは連邦政府で、州の方に財源、権限がある。日本のように東京一極集中型、官僚主導型の経済圏では、そういう方法が成功しますか?」

藻谷「仰る通りです。ただ、経済規模的にはオーストリアは日本では東北地方とか中国5県と同じ規模、九州はもう少し大きい。東京とは違う地方独自でローカルマーケット相手にやって行くと、ヨーロッパの一国と同じようなパワーを持つ企業は生まれてくる。政治的には難しいが、地域を市場とする民間企業の活力には大いに期待しています。彼らが東京に出てこずに世界に直接売りに行くケースが少しづつ出てきている。まだ小さい動きですが、それが出来ていくと日本の政治が地方分権に向かう。よういう順番かなと思います。

シューマン「アメリカは政治的には地方分権しているかもしれない。しかし、経済は集中化しています。アメリカ経済の一つの問題は経済の半分以上が地元の中小企業に依存していますが、長期投資の大半、99%がフォーチューン500社の株に投資されています。これは効率が極めて悪い。長期投資のシステムを塗り替えなくてはなりません。これができれば地場産業はさらに成長します。」

大田「日本の中央集権は特に財政がそうですね。日本の地方で、地方税で賄う比率は平均して3割から4割で、地方交付税とか補助金でかなり中央から移転しています。どこかの誰かが払った税でザービスのかなりの部分を担われているとすると、本当に経済を立て直して行こうとする真剣さが失われていくと思う。ですから、財政の地方分権化を合わせてやっていかねばならない。これが一つの問題。
 それから、地域軸、環境軸が経済に出てきているのは確かで、このこと自体は素晴らしい。しかし、日本では小さいから弱者で保護しないといけないとか、地方は財政支援で守らねばいけないと、弱いところを弱いまま守る発想になりがちだった。
 先程来、シューマンさんも藻谷さんも言われているように、本当の強さを持つためには、消費者に受け入れられなくてはいけない。ニーズにしっかり答えていくダイナミズムを創意工夫が必要である。その点は十分に確認しておかねばならない。地方のものをそのまま活かせばうまくいくという程甘くはない。」

司会「財政面の自立というところまで持っていけるかがポイントかと思うのですが。」

藻谷「財政に関して言うと、東京も2020年までに70歳以上の高齢者が34%増える。その一方で納税する方は微減または横ばいです。ですからどこも財政はきつくなっていきます。そのためにはトータルで支出を減らさねばならず、そのためにも財政の分権が重要ですよね。この範囲内でやってくれ、細かい指示はしないから帳尻を合わせなさいということを地方、地方に考えさせる。太田先生の仰る通りだと思います。」

浜田「今、太田先生の仰った弱いから助けるのではなく、むしろそこに強みがあるというのは日本の農業について最も言える。日本の花は世界的に珍重されている。それから日本食は世界的で、良い食材は日本料理だけでなく中国料理、その他についても日本の野菜でなくてはいけない。TPPで日本の農業を守るのが勝ちだと言われているが、農業の日本の強いところを輸出産業として伸ばす環境を作ることが、コメに700%の関税を掛けて守ることより有効だと思う。」

続いて「和食」や「観光」の問題が日本を売り出す方法として取り上げられ、日本の未来の産業について語られるている。ただ、私には輸出だとか財政だとかを語るのは仮想現実の世界であり、ニッポンの里山で豊かに暮らす価値を見出して欲しいと思う。

初稿 2014.10.18 更新 2014.6.3

最新の画像もっと見る

コメントを投稿