東京多摩借地借家人組合

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軽量鉄骨プレハブでアパートに建替えると借地の期間はどうなるのか

2006年06月05日 | 借地借家の法律知識
(Q)以前は木造であった建物を取壊して軽量鉄骨プレハブ造のアパートに建替えました。この場合の借地期間はどのようになるでしょうか。

(A)旧借地法は、借地権の存続期間を次のように定めています。
まず、当初の借地契約をしたときに、期間について取決めをしなかった場合には、旧借地法2条1項によって自動的に次のように定まります。すなわち、石造、煉瓦造り、土造あるいは鉄筋コンクリート造の建物のような堅固な建物の所有を目的とする借地権の場合には、期間は60年とされます。その他の建物、つまり堅固でない建物(非堅固建物)の期間は、30年とされます。ただし、堅固建物・非堅固建物のいずれも存続期間の満了前に朽廃(建物がいつ崩壊するかわからないような状態)に至った場合には、その時点で借地権は消滅すると規定されています。
 
 次に、借地権の存続期間の取決めを契約締結に際して行う場合には、旧借地法2条2項は、契約当事者の自由な取決めに委ねず、合意で定めることができる最短期間について制限を設けています。すなわち、堅固建物については30年以上の期間で契約しなければならず、また非堅固建物については20年以上の期間で契約しなければなりません。
 それでは、契約当事者がこれらの規定を無視して短い期間の合意をした場合、たとえば非堅固建物の所有を目的とする場合でありながら、期間を3年と取り決めた場合、どうなるのでしょうか。最高裁の判例は、このような合意は旧借地法2条に違反するもので借地人に不利なものに該当するから、旧借地法11条により無効なものとしています。したがって、結局、期間30年ということになります(最高裁大法廷昭和44年11月26日判決)。

 旧借地法では、堅固建物を「石造、土造、煉瓦造叉は之に類する」ものとしていますが(同2条1項)、建築工法の発達により様々な素材による建物が出現してきており、堅固・非堅固の区別がきわめて難しいものとなっています。
 判例は、一般的な基準として、建物の耐久性・堅牢性及び建物の収去解体の難易性をあげております。すなわち、堅牢で耐久性があり、収去解体の困難な建物は堅固建物とされます(たとえば、鉄筋コンクリート造やブロック造の建物、東京地裁昭和38年11月27日判決、東京地裁昭和40年1月28日判決、東京高裁昭和51年3月30日判決)。
 これに対して、重量鉄骨造の建物は、その耐久性・堅牢性ゆえに堅固建物とされる場合もありますが、建物の主要部分がボルト締めの組立式であり、解体が容易である場合には、非堅固建物であるとする判決もあります(最高裁昭和48年10月5日判決)。
 本問のような軽量鉄骨造の建物は、耐久性・堅牢性に欠けることを理由として(宇都宮地裁昭和37年11月7日判決)、または解体が容易であることを理由として(東京高裁昭和59年12月27日)、さらに、建物全体に対する鋼材の使用割合及び今日の一般住宅建築材料の多様化を考慮して(横浜地裁昭和63年4月27日判決)、非堅固建物と判断されています。

 ところで、本問のように従前の建物を取り壊して建替えた場合に、地主が異議を述べないと、従前の建物取壊しの時から法定更新されたことになり(旧借地法7条)、借地の期間は20年間延長されます。

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