鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

十勝川下流・河跡湖の鳥たち-②アカエリカイツブリ

2005-06-21 10:45:07 | 水鳥(カモ・海鳥以外)
魚を捕らえて浮上したアカエリカイツブリ
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Photo by Chishima,J.

アカエリカイツブリは、本州以南の川や沼に多く見られるカイツブリよりもずっと大きく、カモ類より更に大きい。非繁殖期は海上で生活し、繁殖の時期だけ湖沼にやってきて、水面に水草で浮き巣を作って繁殖する。日本では北海道だけで繁殖し、かつては道央の胆振などでも繁殖していたが最近では繁殖しなくなったようなので、分布は道東・道北にほぼ限定される。渡来から暫くの間、アカエリカイツブリが繁殖する沼は俄然賑やかになる。「アアアア…」との大きな声をともなう雌雄間のディスプレイやつがい間の闘争が活発なためだ。


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ユニークな求愛ディスプレイ
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Photo by Chishima,J.

6月下旬から7月になると雛が誕生し、親鳥の背中に乗って移動するその姿はまことに可愛らしい。

つがいで造巣中
1羽は座り心地を確かめ、もう1羽はひたすら水草を積み上げる
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Photo by Chishima,J.

十勝では海跡湖も含め15ヶ所前後で繁殖を確認しているが、雛が無事巣立つのは3分の1にも満たない。繁殖失敗の原因の多くは牧草の刈り入れや道路工事など人為的なもので、殊に農耕地や道路と隣接する河跡湖ではこのような撹乱が少なくない。

農耕地に隣接した繁殖地の沼(○内が巣)
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Photo by Natsuko

特別天然記念物、種の保存法など厳重な保護の網がかけられているタンチョウに対して、本種はどの特定種にも指定されておらず、それゆえ調査や保全策はほとんど行なわれてこなかった。以前と比べてつがい数が減少した地点や消失した地点もあり、積極的な保護対策が講じられなければ、知らない内に姿を消す可能性がある。

繁殖に失敗して残された巣
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Photo by Natsuko

 河跡湖の湖岸はたいてい、ヨシ、フトイなどの抽水植物群落やヤナギ類やエゾニワトコなどの潅木で覆われており、コヨシキリやオオヨシキリ、オオジュリン、ベニマシコ、ノゴマなどの小鳥にとっても良好な生息場所となっている。6月頃の早朝には、水辺は彼らのコーラスであふれかえっているが、カやヌカカといった人間にとってはあまりありがたくない虫たちが多いのもその時期・時間帯だ。

ノゴマ
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Photo by Chishima,J.

コヨシキリ
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Photo by Chishima,J.

オオジュリン
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Photo by Chishima,J.

ベニマシコ
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Photo by Chishima,J.

(2005年6月18日 千嶋 淳)