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借金コロガシ <借金を踏み越える実務を知る為に> 第 1 章 悲劇なのか、喜劇なのか

2016年10月11日 | 著書
第 1 章
悲劇なのか、喜劇なのか
デフレがまだ続いているのです。もう20 年になります。07 年(平成19 年)
のサブプライムローン問題、次ぐ08 年(平成20 年)のリーマンショックに端
を発した、100 年に一度と言われる大不況の直撃を受けて、ドル、ユーロの暴
落で失業者急増、派遣切り、就職氷河期(子供達の社会人先送りで給料が取れ
ず、親不孝は続きます)、売上激減、生活保護家庭と自殺者の激増、という形
で日本経済は陥没的に低迷しています。円高株安が招いた就職難で大卒の4 割
は就職できず―半数は大学院留年という形での失業者が大量に発生していま
す。
政府・日銀はデフレ不況の阻止を目的として、政策金利を0.2%から0.1%に
引き下げ、金融市場に10 兆円の資金を供給すると声明を出したのは、09 年(平
成21 年)の暮れも押し迫った12 月のことでした。新聞各紙は一面トップで大々
的に報じたのです。そして又10 年(平成22 年)夏の政権党(民主党)の敗北
を受けた大不況の克服策として金融大緩和を唱えても、無能な政府には打つ手
がありません。
やっとでた知恵はエコポイント制の再度の半年延長、0金利政策の枠内でし
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か思いつかない独創性の無い無能な政官に対し金融緩和政策の追加しか叫ば
れていません。
しかし、冷静になって考えて欲しいのです。政策金利を0.1%に引き下げたと
しても、暦年の赤字経営が原因で融資を受けられない零細中小企業や、収入激
減でローン返済に行き詰まった庶民にとっては変動金利を下げても全く恩恵
がありません。
それは、税金も払えない貧しい生活者(彼らは所得税を払った事がないので
す)に減税政策は全く効果がないのと同様に、まったく無意味な経済政策なの
です。特に貸し渋りや、貸し剥がしを受けている企業には全く恩恵がありませ
ん。
根本的な誤りは、「デフレが又やって来た」との発想です。又やって来たの
ではありません。1990 年(平成2 年)4 月の日本バブル崩壊以来、日本経済は
長々とデフレ経済下にあったのです。ずっとデフレだったのです。その証拠に
は、長期間、超低金利政策でした。もう約20 年間になります。
2007 年(平成19 年)7 月、BNP パリバショックが起き、サブプライムローン
問題が露見するまで、学者、評論家、マスコミの3 バカトリオが、「いざなぎ
景気」が再来したと喧伝したものですから、国民は、デフレ不況はもう終わっ
たものかと錯覚していただけだったのです。
この3 バカトリオの罪は、デフレを「資産デフレ」と「消費デフレ」を区別
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して分析してこなかったことにもあります。消費財の持続的な下落のみをクロ
ーズアップし、資産デフレの危機的下落を看過してきたことによります。意図
的に見過ごしてきたのではなく、資産価格の下落のメカニズムが理解できなか
ったからです。単なる罪ではなく「大罪」と言うべきでしょう。
<用語解説:BNP パリバショック>
2007 年8 月フランスの最大の銀行BNP パリバは傘下の3つのファンドを凍結
したとのニュースが世界の金融を混乱させました。ファンドは暴落したアメリ
カのサブプライムローンに膨大な投資をしていたためです。
資産デフレのメカニズムは、大学でも教えてくれませんし、教授も実体験が
無いから、知りません。教科書・参考書に依拠したペーパー野郎達の限界です。
戦後の右肩上がりの時代(インフレ時代)しか知らないからです。本や書類で
は、現実を実体験することができません。本や書類を作っている人自身が、経
済の現場すなわち経営に携わった経験がないからです。
「経営」の実務経験があってこそ、「経済」を語る資格が身につきます。農
業・漁業・林業などの一次産業もその実務体験がなければ、真実を語ることは
できません。工場や会社経営の経験がなければ、経営実務を語ることはできま
せん。
しかし、指導者然としている人々は、ペーパーテストで高得点を取り続けた
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との理由で、リーダーの地位を得ていたのです。ペーパーテストに出てくる問
題はすべて、過去の経験・知識です。ですから、ペーパー人間は過去に強く、
抜群の記憶力でテストに勝ち残って来た人たちだったのです。ですから、ペー
パー人間とは、「過去の人々」なのです。過去の知識で現状を分析している人々
です。現状や将来や未来は、それぞれが勝手に予測しているだけで、彼らの責
任あるジャンルではありません。
「過去人間」である彼らの本質を最も明らかにしているものは、これまで何
度もやってきた好景気に対するネーミングです。「神武景気」から始まって、
サブプライムローンが問題化するまでの「いざなぎ景気」の名付けまで、常に
過去の神話が登場してきました。今度やってくるであろう好景気を、何と名付
けるのか、彼らに訊ねたいものです。もう、神話は全部使い果たしたはずです。
独創性の無い過去人間の彼らに神話に代わるネーミングを期待するのは無理
でしょうか。
ネーミングより大切なことは、彼らの言う「いざなぎ景気」の本質を知るこ
とです。「ミニバブルがやってきた」などと喧伝していましたが、都会の一部、
銀座・赤坂・青山などの繁華街の一部が、海外の有名ブランド店に買いあさら
れただけで、後で言及する「円キャリートレード」の一部が日本に舞い戻った
だけのことなのです。ミニバブルでも何でもなかったのです。
もっと大事なことは、このデフレ不況を突破し、新たなる好景気を招くため
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の具体的な手法です。円高不況がやってくる度に彼らは、思い切った「内需拡
大政策」を講ずるべきだと、何十年も前から主張してきました。
しかし、何をどうしたらよいのか、具体的な内需拡大政策には全く言及され
ていません。金融市場への莫大な資金供給政策も、日本バブル崩壊以降、何度
も実施されてきました。その総量は何百兆円になるのでしょうか。彼らの理論
では、もうデフレは克服されているハズでした。
何度も資金供給政策を実施してきたということは、この政策には有効性がな
く、失敗であったことの証左なのです。失敗策を何度も繰り返すしか能の無い
政治家、官僚および3 バカトリオには、クリエイティブな資質と才能が欠如し
ている証拠です。カンフル剤と思って打った注射は、覚せい剤になっていたこ
とに気が付いていない無能な彼らには、もはや何も期待できません。
もっと困った政策も打ち出されました。中小企業者等金融円滑化法(返済猶
予法)です。一般的には「モラトリアム法案」と呼ばれていますが、金融実務
を全く知らない人たちで成立させました。マスコミも理解できないものですか
ら半年もしない間に忘れられ、誰も話題にもしません。
金融は融資と回収で成り立っています。この法案では、どんどん融資しても
3 年間回収作業スルナと、金融機関に回収をしないよう政府が目標を定めたこ
とにあります。そして、個々の融資先にどうするか、その判断を金融機関にゆ
だねたのです。金融機関は当惑しました。こんな曖昧模糊な法案を押しつけら
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れても、対応に困るからです。民間企業に、売上げ代金は3 年間請求をしない
よう努力せよと言っているような法律が成立したのです。
どんどん田植えを奨励しても、3 年間は稲刈りをするな、と言っているよう
な法律です。その上この法は、融資先の会社が破産・倒産の危機に際して、回
収業務やその執行手続きについては、まったく言及がありません。
銀行からの内容証明郵便での「期限の利益の喪失」の通知や、執行裁判所の
競売申し立てや、債権者に対する配当が無剰余の場合の処理、その他の債権者
に対する「終期の公告」の手続きはどうなるのでしょう。しかも、この法律は
銀行の努力目標とされ、ペナルティー条項が全くないのです。全く法の体をな
していない法律が成立したのです。
これは悲劇なのでしょうか、喜劇なのでしょうか。それとも、その合体なの
でしょうか。不思議な世の中になりました。悲劇と喜劇は紙一重と申しますが、
政府の出す奇妙な政策には、国民は対策を立てて生存を図らなければなりませ
ん。しかも上限金利の引き下げの影響で破産倒産の危機に瀕した金貸し達はサ
ービスサーや保証会社の名を使って時効債権の取り立てを始めたのです。
法律を悪用しなければ金融機関はどんどん破綻、消滅してしまいます。そし
て信用を無くした金融危機と大不況はますます拡大していきます。ノンバンク
は無知な債務者を脅かし続けるでしょう。銀行は自行を潰さないために面従腹
背に徹することでしょう。それが自社の利益なのです。自行の利益を最大化す
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るのが自由主義市場経済の原理原則です。さもなければ、会社の意に反した背
任行為として雇用を解かれることでしょう。
新たな悲劇始まったのです。銀行もノンバンクもこの困った行政指導下で生
き残る策を模索しています。これまでも、不良債権を無くせとか、自己資本比
率を上げよとか、貸倒引当金を増額せよとか、中小企業に対して貸し渋りをす
るな、貸しはがしをするなとか、無理難題を押し付けられています。今やこの
訳の解らない行政指導をクリアする知恵を持つ金融機関しか生き残れないの
です。それには何も知らない大衆をカモにするしかありません。
これまで生き永らえている銀行は、なかなかシタタカです。この困った状況
下でも生存し続ける手法を思案、研究しています。これまで同様、困ったこと
は全てお客様と政府に押しつけ、わが身の安泰を図る悪知恵の名人達だからで
す。そして銀行の悪知恵を見抜いた債権者と経営者だけが生き残り、銀行の意
図が理解できなかった企業はこの世から消え去っていくことでしょう。
銀行がまず考えることは、保証協会を最大限活用しようとすることです。政
府が保証するというのですから、保証協会に保証をさせる事による代位弁済を
受け、自行の帳簿から債権を消すことです。これで銀行は取り立て業務から解
放されます。銀行から債権の肩代わりをした保証協会が、債務者である中小零
細企業が、返せ、返せと攻めたてようと、債権を譲り渡した銀行にとっては全
く与り知らぬことです。すでに債権を渡してしまった銀行には、かっての債務
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者である中小零細企業が破産、倒産、廃業、夜逃げしようと、銀行業務とは無
縁なことです。
次に考えられることは、モラトリアムを申し込んできた中小零細企業者を、
彼ら本人に判らないように潰すことです。銀行に泣き縋って来たということは、
自社の経営危機を告白したのも同然です。破産、倒産の可能性が大きい企業に
追加融資はしないのは当然として、小切手や手形帳も渡さないでしょう。銀行
は被害を受けたくないからです。モラトリアムを申し込んだ企業はますます事
業規模が縮小することになるでしょう。企業の死期が早まるだけです。
しかし、これまでピンチを何度もくぐり抜けてきた経営者は、この状況に疑
義を感じ、甘い幻想を抱くことはないでしょう。銀行がモラトリアムを申し込
んだ企業を即潰しにかかるか、3 年後にするかはその企業業績の内容によるで
しょう。業績の悪い企業は経営を継続するか否か、わかり易く言うなら閉店す
るか廃業するか、今、決断を迫られているのです。生き延びたいなら、いま何
をどうするか理解しておかなければ、カネに喰い殺されることになるでしょう。
<用語解説:モラトリアム>
英語のモラトリー(moratory)からきています。もともとは経済学用語で、「支
払い猶予期間」のことを指す。債務者からのモラトリアム宣言はデフォルト(債務
不履行)とみなされる。
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