筆者は教育学博士ですが、アメリカで学習塾の出先機関として日本人子女の学習を見てきています。これだけ英語の重要性、有用性が語られる中で、自分が海外赴任ともなれば、自分の子どもをバイリンガルに育てたいというのは親の情です。子どもは子どもで、宇多田ヒカルのようになりたがります。
当然、早ければ早いほど良いだろうと考えるのが今や常識みたいになってしまい、英語早期教育論が活発になり、小学校での英語必修化も進みそうです。また、早期教育を売り物にしている教育機関は、その有効性を、大抵脳の仕組みに関連付けてもっともらしい理論を振りかざします。
ところが、筆者は実際にバイリンガルになろうとしても、それが失敗してしまう例をイヤというほど見せ付けられます。バイリンガルと呼べるまでになるには、本人や家族の不断の努力、さらにそれに適した環境がすべてそろわなければならないと主張し、それは極めてまれであると述べています。
成功例、失敗例を数多くあげています。本書は、一塾講師の単なる印象論ではなく、本来の国際教育、国際人とはどういうものかまでを考察し、多くの専門書などを引用し、説得力を持たせています。また、脳の仕組みについても解説し、早期教育の重要性をうたう宣伝のいかがわしさも指摘します。
最近、やっと『何よりもまず国語だ』『小学校の英語必修は国を滅ぼす』と主張されている、藤原正彦氏にも注目が集めはじめました。しかし、昨日の報道によれば、中教審が、全国一律小学校5年生から週一回程度の授業をする方向で答申をまとめました。
週一回ではおそらく何も効果はないでしょうし、教える側の問題も解決されていません。私は必ずしも小学校の英語導入に反対ではありませんが、英語習得の困難さをきちんと認識して欲しいと思っております。ですから現在のあまりにも安易に、世論に迎合した形での制度化は望ましくないと考えております。
http://tokkun.net/jump.htm
英語を子どもに教えるな中央公論新社詳 細 |
『英語を子どもに教えるな』市川力
中央公論新書(中公新書ラクレ):280p:798円
藤原正彦氏の本にもだいぶ影響受けましたから。
最近友達と、そのことについて討論になりました。
小学校からの英語教育はよくない、国語をしっかり身に付けるべきだという俺の答えに、友達はカナダなど、エマージョン教育だったと思うのですが、フランス語と英語を同時に勉強して、結果を出しているといいます。
それでも、やはり、日本語と英語というのは180度違う言語ですから、小学校教育からの同時進行というのは少し危険な気がしてなりません。
いくつかをTB,しておきます。
塾講師をしていらっしゃるのですね。
何のための「英語教育」なのか・・・一人ひとりが社会人になっての長い人生を見つめることが大事です。
英語を必要とする職業は限られています。
どんな職業でも、社会が必要としている立派な職業です。
英語よりも、日本語をきちんと教えて、社会人としての生活を送るのに困らない人間に育てていくのが基本だと思います。
頑張ってください!
私のところへTBありがとうございます。
しかし、何かの障害が発生したらしく、文字化けしています。
お手数でも再度、送信してみてくれませんか。
文字化けしたものは、そのままにしておきます。
コメントありがとうございます。私も早く始めるのに必ずしも反対ではありませんが、今の状態で導入には大反対です。誰が教えるのでしょうか?何をめざすのでしょうか?どう評価をするのでしょうか?今以上に基礎学力を付ける時間を減らせるでしょうか?
バイリンガル云々に関しては、確かにバイリンガル化は困難ですが、それを求めるのではなく、単に道具として使うと考えれば、そんなに眼鯨を立てるほどの問題ではないでしょう。
ゆとり教育は確かに問題がありますが、だからといって元の詰め込みに戻ってもまた進歩がないでしょう。要は多様な選択肢を家庭に選ばせる、ということで、勉強したい子供には詰め込みをすればよい。実践訓練したい子供には、問題解決能力をつけさせればよい。
国が何もかも決めて画一的な人間を製造することは、結局国力の衰退に繋がる、ということがこの10年で明らかになったはずで、それを繰り返す愚はしない方が賢明と思うのですが。
藤原正彦氏の言う、国語の強化ももちろん、「英語の問題だけじゃない。テーマがあるかどうかだ。」という、インド人の友人ののシンプルな意見、耳が痛かったのを覚えています。
ごめんなさい、つい長くなりました。
賛否両論ですね。
この本を読んでみたくなりました。
元!4級審さん:正直、ゆとり教育もそうですが、文部科学省の政策決定は、単に世論に迎合しているだけのような気がします。もっと学校現場をちゃんと見て欲しいし、学力をはじめとしたデータをしっかり分析してもらいたいです。中教審の議事録を見ていると、いろいろなところでイライラしてきます。
お国も短絡的な施策はやめてほしいですね。
考えているお役人はお受験組だろうにね
実は私もアメリカで子供2人を育てました。上の子供はかなりバイリンガルに近く、下の子供はセミリンガルに近くなってしまいました。二人が求めるものが異なっていたことも原因と考えられます。
日本はどうしてもメディアの力に流される傾向が大きく、「名前」「ブランド」を身体にまとっていることで安心感を持つ人が多いように思います。英語の勉強もまるで簡単かのように思わせる誇大広告が所狭しと並んでいます。消費者が賢くならないといけないのに… ごめんなさい。長くなってしまいました。
コメントありがとうございました。
そんなことより、「自分で考える力」「問題解決能力」「不思議を感じる力」「他人の気持ちを推し量る力」をつけるほうが大事だと感じます。個人的には「読書力」が一番だと思うのですが。長文失礼しました。
こちらからもTBさせていただきます。
この問題、本当に心配しています。