蜂に刺されぬよう
軟膏ぬって
やれやれや
草にかぶれぬよう
軟膏ぬって
しゅくしゅくや
女子抱かんと
軟膏ぬって
ていていや
爺婆しずめんと
軟膏ぬって
どんどんや
蜂に刺されぬよう
軟膏ぬって
やれやれや
草にかぶれぬよう
軟膏ぬって
しゅくしゅくや
女子抱かんと
軟膏ぬって
ていていや
爺婆しずめんと
軟膏ぬって
どんどんや
わたしは今朝とても絶望していたの
そうですか
仕事が早く終わって、わたしのほうが早く終わって
ええ
すっかり絶望していたから助かったの
なるほどそうでしたか
彼女の仕事が後に終わって食事に誘ってくれたんです
ほう それはそれは
彼女のおかげで元気になれたんです
良い友情ですね
はい、彼女がいてほんとうに助かりました
よかったですね
とてもよかったです、彼女はわたしの同期で仲良くしてくれて
同期なんですね
わたしは京都から出てきて、いろんな店とか知らなくて
京都にお住まいだったんですね
いろんなところに彼女は連れて行ってくれるんです
彼女は地元の方なんですね
そう、だからわたしは助かったの、感謝してるの
彼女がいてくれてよかったですね
今朝わたしはもうだめだと絶望していたの
ええ
だけど彼女と話してこんなに元気になれた
百合薫る
湿気のせい
分子とか気圧のせい
受容体のせい
認知領域のせい
百合薫る
きのうもらった
デカく開き切る
私は百合になりたい
なんつって
百合薫る
おしべとったった
葯(やく)というらしい
覚えておきたい
辞書に載ってた
百合薫る
ハイボールと混ざる
百合飲めるのか
毒あるらしい
きついもんな
蛇口から
まっすぐに冷たい水の出るようになり
私の根はこれから半年間
守らねばならぬ
魂が子に戻ったように
扱わねばならぬ
私のかわりに流れる命よ
果物の皮 雨水の虫 手折る草
激しく憎んでいるか
手は
水の温度を利き血の留まったようになる
何も彼もが零度の部屋
小さな鶴を
下駄箱に忍ばせて去った影
石のごつごつした
ばかみたいに海藻が浮いている浅瀬で
太陽を腹に抱き
きみはいつまでも背泳ぎをしていたっけ
ぼくはアイスキャンデーを食べながら
カップラーメンの白い容器が
少しずつ沖へ流されるのを見ていた
きみのアイスも食べてしまっていいかと聞くと
いいよと返事してきみも沖へ行った
それからぼくは一群の魚を見つけた
潮のあたたかい部分を探して
そいつらは永遠に遊んでいるようだった
きみが立ち上がって何か言ったけれど
波と国道の音に遮られて届かなかった
去年は恥ずかしがっていた小さ目の水着が
いまはこんなにまぶしい光の中で踊っている
ぼくは缶ビールのぬるい泡を飲みながら
どこで小便をしようか考えていた
黙っててくれるか
今日も酔っぱらって床にのびてたこと
胃にあれこれ詰めすぎて何が原因かわからないこと
部屋の小蜘蛛はさぞ
ひどいにおいだと呆れているだろう
目が覚めて水をコップに三杯も飲んだ
それでも火照りがとれないから棒アイスを一本食べた
黙っててくれるか
ぜんぶ久しぶりの風呂のあとのていたらく
首すじが特にじっとりとしている
落ちついたらなぜか今朝見た夢を思い出した
自分自身にとことん欠けているスマートな出来事
嫉妬も忘れる完璧な人間性
こんな夢は見たことがない
黙っててくれるか
焼肉屋の荷物入れに
われわれは多少の夢を閉じ込めてきた
猥雑に豊穣に
・・・・・・はて?
さてまた逆であったか
焼肉屋の七輪の上に
われわれはしょうもない日常をこねくり回す
雄弁に尊大に
いずれにしろ
薄くなったアタマから
ひん曲がった足の小指まで
同じ匂いを充填させて
もう一杯やりに出たんだっけ・・・・・・
あたりまえに女の顔をしている女はこわい
幼稚園のときからずっと女の遊びをして
仕事も女のことばかりしている女はこわい
何より結婚したがるからこわい
ブーケをかかえたり洋菓子を食べたりする
枕の下に願いごとを敷いたりする
こわい
女が二人いたらもっとこわい
女どうしでしゃべり出すもんで止まらなくてこわい
弱った方をとっちめるみたいな話し方をする
男にはわからないからこわい
黙っていると負けるからしゃべらないといけない
おそろしい
女が三人いたらわかるだろうけど世にもおそろしい
ぜったい対等にならない
いばる女が出てくる
ところがそいつが陥れられることがままある
四人、五人、六人・・・・・・
ひどい
女は近くで見ると汚い
色がきれいでもざらざらしていたり
笑っていても似合わない服を着ていたり
重そうな飾りをつけて得意顔でいる
匂いもヘンなときがある
きびしい
でも写真の女はむかつくほどきれい
地下街の途切れる場所で
手相見に
私は捕まりたかった
しかし
私としては
目下の約束事に追われていた
うつむいた老女
手の隆起や筋ばかりを
何十年とそこで見続けている
自分のほうが助けを乞うように
そこに留まっているではないか
私は手相見に捕まりたかった
心に明るい部分がなけりゃ
土台明るいものなんて書けはしない
そりゃ そりゃ
一、二、三周ぐるりと回ってめまいして
やけくそを放つことはできる
しかしそれは根っからの明るさではない
自分で光っていない
どうにか斜目で見て陰影がついただけだ
だから明るくしろと言われても困る
二重、三重、四重の知恵が要る
ろうそく消したる
電器割ったる
太陽沈めたる
その方がどれだけ明るくなれるか