飽食山河

詩を書いています。感想、コメント歓迎です。

軟膏

2016-10-29 17:31:35 | 2016.09

蜂に刺されぬよう

軟膏ぬって

やれやれや

 

草にかぶれぬよう

軟膏ぬって

しゅくしゅくや

 

女子抱かんと

軟膏ぬって

ていていや

 

爺婆しずめんと

軟膏ぬって

どんどんや


女友達

2016-10-26 17:14:38 | 2016.09

わたしは今朝とても絶望していたの

そうですか

仕事が早く終わって、わたしのほうが早く終わって

ええ

すっかり絶望していたから助かったの

なるほどそうでしたか

彼女の仕事が後に終わって食事に誘ってくれたんです

ほう それはそれは

彼女のおかげで元気になれたんです

良い友情ですね

はい、彼女がいてほんとうに助かりました

よかったですね

とてもよかったです、彼女はわたしの同期で仲良くしてくれて

同期なんですね

わたしは京都から出てきて、いろんな店とか知らなくて

京都にお住まいだったんですね

いろんなところに彼女は連れて行ってくれるんです

彼女は地元の方なんですね

そう、だからわたしは助かったの、感謝してるの

彼女がいてくれてよかったですね

今朝わたしはもうだめだと絶望していたの

ええ

だけど彼女と話してこんなに元気になれた


百合薫る

2016-10-25 17:10:20 | 2016.09

百合薫る

湿気のせい

分子とか気圧のせい

受容体のせい

認知領域のせい

 

百合薫る

きのうもらった

デカく開き切る

私は百合になりたい

なんつって

 

百合薫る

おしべとったった

葯(やく)というらしい

覚えておきたい

辞書に載ってた

 

百合薫る

ハイボールと混ざる

百合飲めるのか

毒あるらしい

きついもんな


流水

2016-10-24 16:36:42 | 2016.09

蛇口から

まっすぐに冷たい水の出るようになり

私の根はこれから半年間

守らねばならぬ

 

魂が子に戻ったように

扱わねばならぬ

 

私のかわりに流れる命よ

果物の皮 雨水の虫 手折る草

激しく憎んでいるか

 

手は

水の温度を利き血の留まったようになる

何も彼もが零度の部屋

 

小さな鶴を

下駄箱に忍ばせて去った影


二人で海へ

2016-10-22 17:22:15 | 2016.09

石のごつごつした

ばかみたいに海藻が浮いている浅瀬で

太陽を腹に抱き

きみはいつまでも背泳ぎをしていたっけ

ぼくはアイスキャンデーを食べながら

カップラーメンの白い容器が

少しずつ沖へ流されるのを見ていた

きみのアイスも食べてしまっていいかと聞くと

いいよと返事してきみも沖へ行った

それからぼくは一群の魚を見つけた

潮のあたたかい部分を探して

そいつらは永遠に遊んでいるようだった

きみが立ち上がって何か言ったけれど

波と国道の音に遮られて届かなかった

去年は恥ずかしがっていた小さ目の水着が

いまはこんなにまぶしい光の中で踊っている

ぼくは缶ビールのぬるい泡を飲みながら

どこで小便をしようか考えていた


黙っててくれるか

2016-10-20 18:09:36 | 2016.09

黙っててくれるか

今日も酔っぱらって床にのびてたこと

胃にあれこれ詰めすぎて何が原因かわからないこと

部屋の小蜘蛛はさぞ

ひどいにおいだと呆れているだろう

 

目が覚めて水をコップに三杯も飲んだ

それでも火照りがとれないから棒アイスを一本食べた

黙っててくれるか

ぜんぶ久しぶりの風呂のあとのていたらく

首すじが特にじっとりとしている

 

落ちついたらなぜか今朝見た夢を思い出した

自分自身にとことん欠けているスマートな出来事

嫉妬も忘れる完璧な人間性

こんな夢は見たことがない

黙っててくれるか


焼肉

2016-10-18 17:19:08 | 2016.09

焼肉屋の荷物入れに

われわれは多少の夢を閉じ込めてきた

猥雑に豊穣に

・・・・・・はて?

 

さてまた逆であったか

焼肉屋の七輪の上に

われわれはしょうもない日常をこねくり回す

雄弁に尊大に

 

いずれにしろ

薄くなったアタマから

ひん曲がった足の小指まで

同じ匂いを充填させて

もう一杯やりに出たんだっけ・・・・・・


女はこわい

2016-10-15 20:48:35 | 2016.09

あたりまえに女の顔をしている女はこわい

幼稚園のときからずっと女の遊びをして

仕事も女のことばかりしている女はこわい

何より結婚したがるからこわい

ブーケをかかえたり洋菓子を食べたりする

枕の下に願いごとを敷いたりする

こわい

 

女が二人いたらもっとこわい

女どうしでしゃべり出すもんで止まらなくてこわい

弱った方をとっちめるみたいな話し方をする

男にはわからないからこわい

黙っていると負けるからしゃべらないといけない

おそろしい

 

女が三人いたらわかるだろうけど世にもおそろしい

ぜったい対等にならない

いばる女が出てくる

ところがそいつが陥れられることがままある

四人、五人、六人・・・・・・

ひどい

 

女は近くで見ると汚い

色がきれいでもざらざらしていたり

笑っていても似合わない服を着ていたり

重そうな飾りをつけて得意顔でいる

匂いもヘンなときがある

きびしい

 

でも写真の女はむかつくほどきれい


手相見

2016-10-14 09:13:29 | 2016.09

地下街の途切れる場所で

手相見に

私は捕まりたかった

しかし

私としては

目下の約束事に追われていた

 

うつむいた老女

手の隆起や筋ばかりを

何十年とそこで見続けている

自分のほうが助けを乞うように

そこに留まっているではないか

 

私は手相見に捕まりたかった


明るく

2016-10-10 17:47:14 | 2016.09

心に明るい部分がなけりゃ

土台明るいものなんて書けはしない

そりゃ そりゃ

一、二、三周ぐるりと回ってめまいして

やけくそを放つことはできる

しかしそれは根っからの明るさではない

自分で光っていない

どうにか斜目で見て陰影がついただけだ

だから明るくしろと言われても困る

二重、三重、四重の知恵が要る

ろうそく消したる

電器割ったる

太陽沈めたる

その方がどれだけ明るくなれるか