飽食山河

詩を書いています。感想、コメント歓迎です。

ビニル傘

2016-09-27 16:13:38 | 2016.05

ビニル傘を持つ人の

髪の先が赤く染めてあった

ビニル傘を持つ人の

ネックストラップがひどく汚れていた

ビニル傘を持つ人の

Yシャツの下はグレーのシャツだった

ビニル傘を持つ人の

視線は何かを探していた

ビニル傘を持つ人の

上着にポケットがたくさん付いていた

ビニル傘を持つ人の

横には黒尽くめの人が居た

ビニル傘を売る店の

匂いは埃臭かった

私はビニル傘をサボテンにさしかけ

深く考え込んでしまった

コメント

2016-08-31 10:04:48 | 2016.05

あの人の描く

純粋に工学的に精密な

丸が

ある時

僅かに

楕円になったのを

私は見た

 

丸の

描き始めの点を

収束させようとして

あの人の肩に力が入るのを

私は見た

 

それまでは

世界のあらゆる色や

質感や

それらを駆動させる

指を持っていた

あの人

 

丸を描き損じたために

あの人は

ろうそくを

皆に持たされた

 

炎は蝋を殺しながら生きる

 

雨や風に

脅かされる

あの人の魂を

私は

悲しむ

コメント

手を握られたら

2016-08-23 16:49:10 | 2016.05

手を握られたら

うわあってビックリする

手を放り出して

一目散に逃げたくなる

レントゲンの拘束からもダッシュ

ドアノブを回す手がないから

口や肘でどうにかする

信号も無視して走る

とにかく何かを目印にして

街じゅうの騒音を踏んづけながら

跳び出す

そのうち

身体のアチコチ

落としたり削れたりする

心臓だけになるまで

ビックリし続ける

手を握られたら

コメント

引力

2016-07-26 17:02:07 | 2016.05

地球がひっくり返りそうになったとき

きみは何をしてる

きみのコップや薬や座布団もひっくり返って

そんな中きみはきみ自身もひっくり返ると悟る

いっときの間、散らかるだけさ

ってきみは思うかな

 

夜が来てきみは眠る

やがてきみは赤ん坊みたいにふわふわと

現実の裏側に泳ぎ出す

 

きみを輪投げの的にして

縛りたいけどたぶん無理だ

私こそきみの仕掛けた罠に捕らわれているのだから

 

いろんなたとえ話を思いついても

きみは全て説明をつけてしまうし

一緒にお茶を飲むことぐらいしか

ふたりに共同責任はないと私は考えてるけど

きみはどう思う

コメント

ふつうの犬

2016-07-24 18:17:26 | 2016.05

ふつうの犬が

町から町を旅する

高架下をくぐったり

空き缶をにおったり

どしゃ降りの日は

もちろん傘もささず

次の町を目指して歩く

落ちてるパンを食べる

草も食べる

残り物も全部注意して探す

だってそれが旅だから

夜は物陰で休む

暑い日は土にお腹をつける

信号は

なんとなく渡る

階段は

走ってのぼる

ふつうの犬は

乗り物には乗らない

(犬に乗る虫はいるけど)

だから旅をしても

犬はあまり不安にはならない

朝が来て

その次に夜が来れば

ふつうの犬ならなんとかなる

コメント

ただいま

2016-07-22 17:06:55 | 2016.05

手を延ばすけど

いつも斜めで

知らなくて

届かないから

身体を引き裂いて

でも知らないから

同じ方向に爪をかけるの

 

ガラスの箱に

あなたは居る

どこかに穴が

空いているらしい

何もすることがないから

遠くを見て

手を延ばして

そこに誰も居なくて

泣くの

 

手を引いてくれるかな

もしかしたらあの人が

髪を結ってくれるかな

あの人が

泉の淵に住む鳥の声で

歌を歌ってくれるかな

 

コンクリートの

湿った場所を求めて

いくつもの手を延ばす

聞いて欲しい

うなずいて欲しい

抱いて欲しい

触れる場所がある

それだけで充ち足りていたけれど

 

光が降ってきたから

人間はもっと きっと

愛されたいんだ

私もそうだと

身体を切り裂いて

届くようにと

やってみたのだが

 

夜が来て

色んな数字が

世界を支えてると気付いた

温度

湿度

風速

経済のいろんなこと

人口の移動とか

私は三丁目に帰る

生まれた所とは別の部屋だ

 

悲しくて

だけど誰にも言えず

自転車をこいで

落葉を踏んで

やるせなく

いつもの通り

鍵を刺し

むかつく玄関に

ただいまと言う

コメント

抱く

2016-07-20 18:16:11 | 2016.05

君に抱かれた時の居心地の悪さを

つい昨日のことのように思い出す

愛しているとあんなに信じていたのに

君が私を見ることはほとんどなかったのだ

儀礼的なキス

指の絡め合い

息を感じる距離

又はセックスという

秘められているのか開けっぴろげなのかよくわからない行為

それらをやり過ごしても

もしふいに肩を抱かれ

互いの感触を確かめ合うだけに引き寄せられたら

私はただの石になってしまう

冷たいような熱いような

せめて野菜ぐらいの懐こさでいられたら

君にもう一度抱かれてみたい

コメント

百年前の街角

2016-07-19 17:03:16 | 2016.05

あなた風景を愛していたんでしょう

誰にも打ち明けられないくらい

身を焦がすほど純粋に

窓の四角

かざした手の向こう

酔いが醒めたときの

妙に聖らかに映し出される

風景を愛していたんでしょう

そんな時

泣き崩れる自分がとてもみじめで

だから孤独を選んだのでしょう

 

大丈夫だよ

あなたは引き裂かれた心ゆえ

パンとワインみたく

愛されるひとつの存在になっている

百年たった今でも

あなたを信じているよ

コメント

道中の話

2016-07-17 17:09:22 | 2016.05

水色の染みの話でもするか

おそらく綿100パーセントの布地に

豆粒大の染みが二つあるんだよ

気付いたのは昨日

一昨日は知らなかったその前も

その前もたぶん一週間前も

とても鮮やかな水色なんだ

常夏の島のサンゴ礁みたいに

きみも私も

行ったことないよねそんな場所

 

そこで話を終えようとする

きみは100パーセント尋ねるだろう

いったい何の染みなのよ?

そしてどこに点けてしまったの?

疑問をすっかり聞き出して満足したきみは

帰り際にそそくさと

流行のシミ抜き洗剤を持たせるだろう

いくつかの食べ物と一緒に

 

私はそれらのうち

二つぐらいはきっと

持って帰るはめになるだろうね

コメント