Altered Notes

Something New.

「VTR」という奇妙な言葉

2010-01-30 09:29:43 | 放送
テレビ番組を視聴していると、しばしば「VTR」という言葉に遭遇する。

一般的にVTRと言えばビデオ・テープ・レコーダーの略である。しかしテレビ番組では、それはビデオに収録された映像を指す。これはいろいろな意味で明らかにおかしい。

番組においてよく使われる言い方は
「ではVTRをご覧下さい」
「今のVTRにありましたように」
「VTRをご用意いたしました」
・・・などといったものが多い。
いずれも「ビデオ映像」の事を「VTR」と呼んでいる。

前述のようにVTRとはビデオ・テープ・レコーダーを意味する。

従って
「VTRをご覧下さい」
とは
「ビデオ・テープ・レコーダー(という機械)を見てくれ」
と言っているのと同義である。

「VTRを用意した」
というのは「ビデオ・テープ・レコーダー(という機械)を用意した」
というのと同義である。
これが「変」でなくて何だというのか?

テレビ局が使用する「VTR」という言葉のおかしな点は以下の
通りである。

1.ビデオ映像のことをビデオ・テープ・レコーダーという機械の名称にすり替えていることが間違い。

2.最近はデジタル化が進み、そもそも記録メディアとしてビデオテープを使用することがほとんどない。ビデオ映像を記録するメディアはほとんどがHDDや固体メモリーに置き換えられてきており、ビデオテープを使うケースが少なくなってきている、という事実。(*1) この意味でも「VTR」は間違い。

そもそも言いやすさにおいても
「ぶいてぃーあーる」
と言うのと
「ビデオえいぞう」または「ビデオ」
と言うのと
どちらが言いやすいかは明らかで、テレビ局が「VTR」に徹底してこだわるのは不思議であり奇妙と言わざるを得ない。

この件についてNHKに質問したことがある。NHK広報は呆れた言い訳を返してきた。

「VTRとはビデオテープ・レコーディングの略ですから間違っていません」

笑止千万。これはまるで官僚答弁である。役人の屁理屈レベル。

VTR=ビデオテープ・レコーディング という認識が常識として一般にあるだろうか。一般人にVTRの意味を問えば、ビデオ・テープ・レコーダーと言うだろう。辞書で調べても「ビデオテープレコーダー」として説明されている。

もっとも昨今はテレビの影響で、一般人でもビデオ映像のことをVTRと称する人が出てきたが、これは言葉の意味を考えたことがなく、テレビ局と同じ言葉を使っている事に愉悦を感じるような愚かな人々でなのであり最初から論外である。

また、NHKの返答が間違っているのは、前述の通り、今では既にメディアとしてテープが使われなくなってきているという事実からも明らかである。

NHKには梅津アナをパーソナリティーに「ことばおじさん」という言葉の正しい意味について解説・啓蒙する番組や「みんなでニホンGO!」という日本語の言葉の意味やルーツなどを考える番組を持ちながら、一方でこのように間違った言葉を垂れ流している姿は醜く笑止千万である。厚顔無恥なテレビ局、それがNHKである。

NHKは番組制作における悪しき変質(企画・演出、全てが劣化している)も含めて本当におかしな組織になってしまった。この劣化した制作力と官僚的な体質は当分変わらないのだろう。

もちろんこの「VTR」という言葉に偏執しているのはNHK・民放問わず同じである。

それにしてもテレビ局の異常なまでの「VTR」へのこだわり。病的で意固地なまでに「VTR」にこだわるその異常性。その救いようのない愚かさに恐怖すら感じる。

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[備考]
元NTVで現在フリーアナウンサーの福澤朗氏は、以前に自身が司会の番組おいて、ビデオ映像のことをきちんと「ビデオ」と呼称していた。彼は「ちゃんと判っている」のだと嬉しく思った。

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(*1)
テープというシーケンシャルメディアは現在では主にアーカイブ目的で使用される場合がほとんどである。製作現場では作業の迅速性からもランダムアクセス可能なディスクメディアまたは固体メモリーの方が圧倒的に使い勝手が良い。





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