短いお別れ

勝手に思う事を、徒然なるままに…

Blue Rose

2008年02月06日 14時29分02秒 | Weblog
ちょっと古いニュースだけれど、不可能と言われていた花、青いバラがサントリーフラワーズにより、2004に花開き、2009年から販売される。らしい…

また、バラの話…

ドラマ『薔薇のない花屋』を見て以来、どうも、バラが気になる。ひょっとしたら、ドラマ自体よりも…。以前の記事にも書いた通り、プリザーブドローズも衝動買いしたし…。なんて単純なのだろう…。

でも、その枯れない花は、思わぬところで、役立っている。

これもまた、以前の記事で書いたと思うけれど、僕には、香水の調合師を目指している仲の良い女の子がいる。彼女は自分の25歳を香りのために生きている。

ただ、最近、元気がない。色々とあったようだ。何があったかなんて聞かない。そこまで、野暮じゃない。

僕は彼女からのメールへの返信に、例のプリザーブドフラワーの写真を添付した。

"花で癒されて欲しい"という思いが半分。もう半分は"この花ちょっと良くない?"と自慢したい気分で…

ただ、僕の稚拙な考えが思わぬ効果を生んだ。

彼女は、調合の学校に通っているのだけれど、最近、先生にこう言われた。「あなたの作る香りは、暗い」

調合は、その時のメンタルな部分が、香りに感覚として出る。今の彼女は、ピンク色の花をイメージして、明るい香りを作っても、何処かに暗い影のある香りになってしまう。

分かっていても、彼女が抱えるものは、簡単に消す事はできない。彼女は今の心を受け入れようと考えた。暗い中に"何か"がある香りを作ろうと考えた。

そのようにしていくつかの香りを調合した。それは、今まで感じた事のない不思議な作業だった。

彼女は、いくつか作ったサンプルの中で、蓮の花をイメージした香りに惹かれた。

暗く深い森の中を歩いて行く。一人でどこまでも歩いて行く。辿り着いた場所には、光が射している。それは、木の葉の間から静かな池を照らした。そこに浮かぶピンク色に輝く大輪の蓮の花…。それが、彼女のイメージだ。その香りはそのものだった。

香りは、彼女が抱えるものにも光を射し、花を咲かせた。

そのイメージのソースは、僕が彼女の携帯電話に送ったプリザーブドフラワーの画像だったと、彼女は言った。

黒く無機質な携帯電話の中にひっそりと燃える赤い花。それが、彼女に新しい香りをもたらした。

まぁ、たまたまだけれど…

僕は思う。青いバラ、それはどんな香りがするのだろうと。

Blue Roseという英語は、不可能の代名詞と言われてきた。

でも、今、青いバラは、淡く儚い色で、確かに生きている。

25歳の女性にも不可能はないと、僕は考えている。彼女も確かに生きている。香りと共に。

去年の初夏、駒込の六義園(東京都文京区)に、香りの参考にと、彼女は紫陽花を見に行ったらしい。

今年は一緒に行こうと誘われている。紫陽花もまた、儚い色を見せる花だ。

一足先に、やはり駒込にある旧古河邸で、バラを見るのも良いだろう。暖かな春の日が良い。


東京は今日、雪が降っている。まだ、春の音は聞こえない。

ただ、巡らない季節はない。

色や香りはひどく曖昧なものだ。確かな青や確かな明るさは、なかなか存在しない。ただ、春は確かに訪れる。

その季節が足音を聞かせる頃、彼女が、僕等が抱える不可能は、また少し消えているかもしれない。