天使幼稚園では早くお弁当を食べ終わったお友だちは、絵本を読んだりお絵かきをしたりしながらごちそうさまのお祈りの時間を待っています。お絵かきをしているお友だちは、思いのままにクレヨンを走らせて抽象画を描いてみたり、クネクネと線を描き
「えんちょうせんせい、このめいろできる?」
と話しかけてきたり、かわいいお姫様の絵を描いて見せてくれたりと、一人ひとり、心のおもむくままにお絵かき帳に向き合っています。
中には真っ白なページを早く使ってしまおうと、線や丸をちょっと描いては別のページに移っている子も。
「えんちょうせんせい、もうかくところなくなったよ。」
「まだ、白いところがいっぱい残っているから、このページに描いてごらん。」
子どもの中には絵を描くことではなく、お絵かき帳を使いきることに重きを置いて遊んでいるケースもあるようです。「お絵かき帳は絵を描くもので、無駄遣いしないよう最初のページから順番に使いましょう。」というのが一般的なおとなの感覚です。でも子どもたちはその感覚とは異なり、独自の使い方や遊び方を見つけ出し楽しんでいるようです。
「えんちょうせんせい、ポケモンのなまえしってる?」
その後ろから担任の先生が
「園長先生には難しいんじゃないの?」
と声をかけてくれました。
「ピカチューだけは知っているけれど、その他はわからないなあ。」
「じゃあ、ピカチューのしんかけいの○○は?」
もう、全くついていくことができません……。子どもたちの周りにあふれている様々なキャラクターや遊び道具。プロの業者によって作り出されたこれらのものに、子どもたちが引きつけられていくのは必然的なことでしょう。
その一方、たとえそのようなおとなが準備したおもちゃ等がなくても、遊びを作り出すことが出来るのも子どもたちの特性です。
春の遠足で砧公園に行ったとき、広い芝生を駆け回ったり、低く伸びた木の枝に登ってみたり、地面から2mほどのところにある木の洞(うろ)に小枝を投げ込んでみたり……。そこにおもちゃなどはなくても、子どもたちは遊びを創り出し楽しんでいました。
先週あるクラスの担任の先生が
「園長先生、見てください。電車が好きな年長の男の子が、モンテッソーリのお話絵本作りの用紙を使って、電車の図鑑を作ったんですよ。」
と、電車の絵を描きそれぞれの電車の特徴をまとめた“電車絵本”を見せてくれました。その内容を読むと、電車好きならではの話題が満載!自分が興味を持っていることを活かし“電車絵本”を作ったその姿に感心したところでした。
未来を生きる子どもたちにとって大切な力のひとつ。それが「何もないところから何かを生み出すことができる力」です。今、子どもたちの周りには、テレビやキャラクター商品、スマホなどのゲームが満ち溢れ、子どもたちはそれらを使って楽しそうに遊んでいます。でも、それらがなくても遊びを創り出すことができる子どもたちに、多くの物を与えすぎ「何かを生み出すことができる力」を発揮させないことは、とてももったいないことだと常々感じています。
毎月皆様にお届けしている「園長だより」。これもまた、何も書いていない真っ白なワードの画面に向かい、キーボードを打つうちに、一つのメッセージが完成します。今月の園長だよりも、昨日の午後、書くことが決まらないまま、最近の子どもたちの様子やふれあいを思い出しつつ書き始め、今日の午前中に完成しました。何もないところに文章が連なり、メッセージが完成するのはなかなか楽しいものです。
子どももおとなも、「何もないところから何かを生み出す喜び」を味わうことができる日々を送ることができると素敵ですね。
(園長 鬼木 昌之)