アパッチ蹴球団-高校サッカー篇:project“N”- 

しばらく自分のサッカー観や指導を見つめなおしていきたいと思っています。

プランB

2016年07月30日 17時16分23秒 | サッカーの謎
サッカーにおいてプレーヤーの基本的な判断においてまず大切なのは「プランB」を考え続けること。プランBだけでなく「プランC」やそれ以上を用意しておくことができればもちろんそれにこしたことはない。ただ、簡単でないのは、その「プランB」の準備をボールが動く度に準備し直さなければならないということであり、しかもその内容を相手に感じ取られないようにしなければならないということ。

そのために大切なのは複数の視点をもっておくこと。自分達だけの視点だけでなく、相手は今の状況をどう見ているのか、といった相手側の視点を意識することも当然必要になる。相手の予測の範囲内にいることは「プランB」としてはまだまだ完全ではなく、選択肢として成り立っていない、ということを意味しているともいえる。もちろん何も選択肢を持たずにボールを受けたりポジショニングするのは何も考えずにプレーしていることに等しいが、客観的には単純な選択肢であったとしても、それらが相手の予測の外側にあれば、十分相手と駆け引きできる土俵には立っているといえる。

「プランB」という選択肢を持ち続けようとする習慣は判断のスピードは速めていくし、「プランB」を考え続ける習慣が「視点の移動」というサッカーにおいて極めて重要な要素をもつことを習慣化させていく。「視点を移動」させながら、複数の視点を持つことは、ある意味「分析の視点」をも複数持つということであり、これは判断の速さだけでなく、判断の適切さや判断の柔軟さをも生み出していく。

分析の視点を複数持つ習慣はさらには自分自身への分析にも当然のことながら繋がっていく。たとえば前半の自分自身のプレーを振り返り、その中で自分の課題や傾向を掴み出し、後半に向けてどう修正していくかを考えていく。さらには前半のプレーや判断の質が悪かったとしても、逆にそれを如何に利用して相手との駆け引きの材料に使うか、ということまで考えていく。過ぎてしまった時間は巻き戻せなくても、それを駆け引きの材料に使うことはできるし、それを前提にして更に効果的な「プランB」を準備しておくことは状況判断の優れたプレーヤーなら当然やってくる。こういった思考過程というか判断方法は、ある意味、複数の「砂時計」や「ストップウォッチ」を同時に動かし続けているのと似ているかもしれない。ボールが動く度にその砂時計をひっくり返し続け、同時にストップウォッチを止め、そして再び押し続けていく。そんなイメージに近いかもしれない。

もちろん、こういった判断方法は簡単ではないが、相手の時間軸でプレーさせずに、自分の時計を軸にプレーしていくことにつながる。駆け引きに長けた選手はこういう思考というか判断方法でプレーしている。仮に単純な選択肢であったとしても、それを早いタイミングでどんどん入れ替えられたら、相手もなかなか対応しきれない。もちろん、早いタイミングの中で突然、時間を止めるようなパフォーマンスも極めて効果的ではある。

走りながら考え続けるのはもちろん簡単ではないし、相手の方が技術的に高ければ、逆の相手の時計でどんどん試合を進められてしまうので、そんな状況では「プランB」を準備し続けるのは難しいのかもしれない。でも、考えることを止めてしまったら、相手との駆け引きというサッカーにおける本質的で重要な部分を放棄してしまうことになってしまう。自分の判断や駆け引きが相手に静かな楔を打ち込むことになり、いつかはその楔が相手の判断を決壊させることになる、そう信じて走り続け考え続けるしかない。

また考え続け、駆け引きを忘れない限りは、勝利の女神が見えなくなるということは絶対にない。できれば練習中からプランBを意識し、判断の速さと柔軟さを忘れないようにしていけば、仮に自分のもっている技術やフィジカル能力がまだまだ足りなかったとしても、苦しい試合で勝ちきれる日が必ずくる。むしろ練習中にどれだけ考え続けられるか。その方が本当は大切なのだと思う。育成年代の選手たちには夏の暑さに負けず、練習中から「プランB」を考え続け、「視点を移動」しながら相手との駆け引きというサッカーの本質を意識していってほしいと思う。