アパッチ蹴球団-高校サッカー篇:project“N”- 

しばらく自分のサッカー観や指導を見つめなおしていきたいと思っています。

バイタルエリアの攻防

2007年05月18日 07時18分57秒 | 戦術の謎
5月13日は、都大会1回戦のスカウティングをした。
都立日野台高校と東京実業高校の試合は
結局、終了間際に東京実業高がFKから同点に追いつき、
延長で逆転に成功した。



特に、後半、同点に追いつく前の東京実業の攻撃は
外から見ていて、はっきりと狙いがわかるものだった。



DFから、ロングボールをターゲットであるFWに当てていく。
そのこぼれ球を2列目の選手が拾い、
シュートまでもっていく。



サッカーにおいては、
当たり前だと思ってつかっている言葉や概念も
実は人によって、ニュアンスに食い違いがあったり、
内容そのものが違っていることも少なくないが、
もしかしたら、『バイタルエリア』という言葉も
その中の1つかもしれない。



ここでは、便宜上、
『バイタルエリア』
 =CB(センターバック)とボランチの間のスペース、
と定義する。



『バイタルエリア』に入ることで、攻撃の幅が広がる。
『バイタルエリアに入る』ということは、
相手のCBの前で、前をを向いた状態で、
ボールを持てるということ。



CBの前で、前を向いてボールを持てれば、
理論上は、全ての攻撃の選択肢を有することができる。



シュートも打てるし、
裏へのスルーパスも出せるし、
壁パスで崩すこともできる。
もちろん、ドリブルで仕掛けることもできる。



『バイタルエリアに入る』ことで、
攻撃の幅が広がり、
さまざまな攻撃が可能になる。



守る側からすると、
『前を向いて、バイタルエリアでボールを持たれる』と
極めてやっかいな状態になる。



ショートパスでつないでくるチームが
シュートまでいこうとする時、
少なくとも一度はFWに当てないと、
なかなかシュートにいけない。



FWに当てることができれば、
そのFWが前を向けなくても、
落としてくれれば、
MFが
『前を向いてバイタルエリアでボールをもつことができる』。



ある程度の年代の試合になってくると、
「FWに当てろ!」とか
「もっとクサビを入れよう」という声が多く聞こえてくるのは
試合に戦術の要素が入ってくることの証である同時に、
中学や高校になってくると
戦術がないと、なかなか試合に勝てなくなってくる、
ということでもあると思う。



『バイタルエリア』を前述のように
「CBとボランチ(守備的MF)の間のスペース」と
定義したとすると
東京実業が後半に見せた攻撃は
時間をかけずに『バイタルエリア』に入るための
極めて効果的な戦術だといえる。



「ターゲットであるFWめがけて、ロングボールを入れる」

「そのまま、相手DFの裏を取れれば、それでシュートまでいける」

「相手にヘディングでクリアーされても、
 そのこぼれ球を相手よりも先に拾うことで、
 結果的に『バイタルエリア』にボールを持って入ったことになる」



ロングボールを蹴れる選手がいて、
速くて高いFWがいれば、
効果的に『バイタルエリア』を攻略できる戦術。



実は、このようなやり方は以前のチームにいたときに
よくやっていた。



ロングボールの精度を上げるために、
センターライン手前からキックしてクロスバーに当てる練習や
ヘディングの競り合い、
ヘディングのこぼれ球を拾う練習なんかもよくしていた。



今のチームはショートパスを軸にした攻撃を練習している。
そのために、
【奪ってからのスピードアップ】
【FWに当ててからの、追い越し】
【サイドを変えることも含めた変化をつけること】
という部分をチームの共通理解にしてきた。



対戦相手である東京実業とは異なる方法で
『バイタルエリア』を攻略できれば、
と考えている。



攻撃の基本的なイメージは以下の通り。

相手からボール奪った後、
【スピードアップ】するために、
【FWに当てる】ために、
サイドで前を向くことも含めて
とにかくボールを持って早く前を向く。

一度『バイタルエリア』にいる【FWに当てて】、
相手CBを引っ張り出す。

そこから、時間をかけずに、
ミドルシュートも含めて、
どんどんシュートを狙っていく。

さらに、相手SBの裏も狙って、
外から崩すことも考える。

ただ、外からのクロスは
相手CBに高さがあるので、
えぐってプルバックか
ファーサイドに長いクロスを入れる。



前半はしっかり守って、
後半終了間際に1点取って勝つのが理想。



正直、高さや強さといったフィジカルでは
中学生と高校生くらいの差があるので
相手チームとは違った部分で勝負できれば、と思う。



ゲームプランは以下の通り。


とにかく、前半は無失点でいく。

そのために、リトリートしながら、
『バイタルエリア』をがっちり閉める。

同時に、『バイタルエリア』に入ったボールは
まず、ボランチからしっかりボールに寄せていく。

そして、奪ったらサイドに展開することも含めて
とにかく早くボールを持って前を向き、
【FWに当てる】前提を作る。

【FWに当てる】ことができたら、
ミドルシュートも含めて
どんどんシュートを打つ。



後半は、プレスをかけて
相手の攻撃の起点である
DFからの長いボールを消していく。

そこから、ボールを奪ったら、
時間をかけずにシュートまでいく。

ただ、プレスをかけるには
仕込みが必要になってくる。

具体的には
相手DFに前を向いてボールを奪われないようにする。

意図的に相手DF(特にサイドバック)の裏を狙っていく。

相手に前を向いてボールを奪われると
ドカン、と長いボールがくるので
プレスをかけるためにも
相手サイドバックに前をむいてボールを持たせない。

プレスをかけて、中盤でボールを奪った時は
早く【FWに当て】て、から
サイドでボールとFWを追い越していく。

サイドを崩せた場合も
クロスは単純に放り込まずに、
相手CBに高さがあるので、
基本的にはファーサイドを狙っていく。

高さを使わせないという点では
えぐってマイナスの折り返し、
いわゆるプルバックも、もちろん狙う。



最後は、
[チームとして、集中して声を出しながら戦えるか]
[セットプレーでの競り合いも含めて、球際で頑張れるか]
[今まで、練習してきたことがグランド上で表現できるか]
ということができるかどうかが
勝敗の分かれ目になってくると思う。



試合に出れない選手や応援してくれる人達のためにも
選手ともども勝つことにこだわって、
最後まで頑張りたい。

メンバー選出の理由

2007年05月16日 09時31分23秒 | 指導記録
2回戦で対戦する相手のスカウティングと
中学生の春季大会の都大会の応援に行ったので、
学校の運動会は見に行けなかったが、
運動会も無事に終わったとのこと。



ただ、何人かサッカー部の選手が怪我をしてしまったり、
先日、東大病院に搬送された選手が
運動会でまた同じような症状で具合が悪くなった、
ということを聞いていたので、
少し心配な気持ちはあるが
今はインターハイの都大会に向けて集中していきたい。



インターハイの都大会自体は5月13日から始まっている。
1回戦はたまたま、くじ運シードだったので
20日の2回戦がチームにとって初戦になる。



ただ、5月15日から、
中間試験の1週間前と重なってしまい、
試験準備の影響もあるので
顧問の先生からも
『メンバーを限定して、練習した方が・・・』
というアドバイスをいただいていた。



そのアドバイスに従い、
メンバーを限定する作業に取り掛かった。



2つの視点からメンバーを選出した。



1つめは、
対戦相手である東京実業との試合で出場する可能性があるか?
という視点。



東京実業との試合には
地区予選の決勝に出場したメンバーを中心に先発を考えているが
地区決勝とは対戦相手も異なるので、
都大会で対戦する東京実業とどのようなゲームプランで戦うのか?
そのためには、どのようなメンバーがいいのか?
出場する可能性が高い選手が怪我した場合、
代わりに、どの選手が出場すれば、
ゲームプランをそのまま実行できるか?
選手の組み合わせ、またその可能性、
さまざまな事態を想定しながら、
メンバーを選出した。



次に、
そのメンバーに加えて
「仮想東京実業となりうる」という視点から
メンバーを加えていった。



20日の試合まで、紅白戦を通じ、チーム全体として
ゲームプランを共通理解として深めていきたいと考えている。



その際、東京実業がしてくるであろうプレーを
行うことのできる選手をメンバーとして、
加えていった。



その結果、24人に絞ることになった。



今回の24人というのは、
あくまでも、対戦相手を考えて選出した、
というのが基本的な視点。



個人の能力を絶対的評価に換算し、
序列をつけて、上から24人を選出したわけではない。



どの選手にも、いい部分と課題は存在する。



目の前の対戦相手を考えた場合、
この選手のいい部分に着目し、
結果的に今回のメンバーになった。



選ばれなかった選手がダメな訳ではない。



ただ、今回の24人が今度の試合の準備として適している、
というだけであって、
今回選ばれなかった選手達の今までの頑張りを
否定するつもりは、全くない。



自主トレで他の選手の何倍もトレーニングしている選手もいるし、
自分なりに課題をもってしっかり練習している選手もいる。



今までの指導経験から、ある程度のことはわかるし、
選手の変化や頑張りについて、見る目を持ってはいる。



メンバーの選出は、
「この選手のいい部分をチームのために活かしたい」
という気持ちがベースになっている。



繰り返すが、ダメだから選出されなかったわけではない。



いい部分、悪い部分は選手によっても当然異なってくるし、
メンバーに選出しなかった選手を否定するつもりは全くない。



また、個人的に選手に対して好き嫌いという感情で、
メンバーを選んだことは一度もないし、
これからも感情で選ぶつもりもない。



チームを預かる指導者として、
目の前の試合に勝つことだけを考えて
勝つ可能性の高いメンバーを
これからも選出していくつもりでいる。



もちろん、試験前という時期の問題がなければ、
チーム全員で都大会に向けて気持ちを1つにして
練習していきたかったが、
試験も大切なので、
今回選出されなかった選手達には
試験勉強と同時に、自主トレも頑張って継続してほしい。



今度の試合は、チーム全員で戦うことは間違いないし、
ベンチの選手の力も合わせていかないと勝てない相手でもある。



はしかの流行や法事、
またそれ以外でも
不測の事態の発生も考えられるので、
練習に参加できない選手達も
大会に向けたテンションは維持してほしい。



チーム全員が納得できる結果になるように
なんとか頑張りたいと思う。

感謝と幸運

2007年05月11日 09時16分21秒 | 人として
5月7日に、九段下にある暁星高で
インターハイの都大会の抽選会があった。



自分は練習があったので、
抽選会には参加できなかったが、
顧問の先生が行くことになっていた。



暁星高での抽選会は
先に、中学の春季大会の都大会抽選が行われ、
その後に、インターハイの都大会抽選が行われる、
とのこと。



今回は、中学生の春季大会も
インターハイの都大会も両方出場できたので、
顧問の先生が中学の抽選会に引き続き、
そのまま、インターハイの抽選会に参加することになっていた。



ただ、顧問の先生から、
『都大会の初戦が5月13日にあった場合、
 学校側から許可が下りないことも考えられる』

『基本的には、最低限の人数で大会に参加するしかない』

『場合によっては、
 最終的に許可自体が下りないことも考えられる・・・』

という話を事前に聞いていた。



顧問の先生が抽選会の前に
インターハイの都大会を主催する
高体連サッカー専門部の役員の先生に聞いたところ、

『都大会に出れないなら、地区予選自体に出ない方がいいのでは?』

『夏の選手権予選でも、同じ様なことが起こりうるなら、
 予選自体に参加させないなど、何らかのペナルティーも
 十分考えられる・・・と思いますよ』

という率直な意見を言われたとのこと。



確かに、もっともな意見だと思う。



地区予選でうちのチームに負けたチームからすれば、
『勝ったチームが都大会に出ない・・・』
というのを聞いたら、
少なからず、ショックは感じるはず。



一方、学校側の考え方も
大きな視点で考えれば、理解できる。

『まず、とにかく学業を優先させる。』

『次に、学校行事を優先させる。』

『部活動はその後で、頑張る。』



サッカー部は高校だけでも、60人。
中高両方で、150人近い人数がいる。



この人数が運動会に参加できないとなると、
直接的に運動会に影響するし、
一部の競技に関しては、成立しないこともあるとしたら、
学校側の判断も至極真っ当な判断だとは思う。



学校側も、授業や学校行事を優先させることで
学校そのものを維持していく、というか
学校そのものを守ってく。



そのような判断というか気概があったのだと思う。



ただ、個人的には
「目の前の試合に勝つ」
ということを自分の信条にしている。



大会を辞退することや、
大会そのものに参加できないことが続くような場合、
このチームから去るつもりでいた。



抽選会が始まる頃、
練習中に具合の悪くなった選手を
救急車で東大病院に搬送して、
東大病院で診てもらう、
という状況だったので、
正直、抽選会どころではなかった。



選手の検査結果を待っている中、
顧問の先生から

『13日、試合がなくなった。』

『たまたま、1回戦のところはシードのくじを引いた。』

『初戦は20日になった。』

という連絡があった。



抽選会から、顧問の先生が
東大病院の方に直接、駆けつけてくれた。



幸い、選手も大事に至らなかった。



選手が大事に至らなかったこと、
都大会が運動会と重ならなかったこと。
普段、選手や顧問の先生方が頑張ってきたことに対して、
サッカーの神様がご褒美をくれたのだろうか。



選手達は、今、運動会の練習とサッカー部の練習を
頑張って両立してくれている。
顧問の先生も運動会と中高サッカー部の大会参加が
何とか両立するように、奔走してくれている。



学校側が学校行事や学校そのものを守ろうとしているのと同時に、
サッカー部の顧問の先生や選手達も
学校行事とサッカー部の活動をなんとか両立するように
頑張っている。



学校もサッカー部も、それ以外の人の集まりも
ただ、人がいれば、成立するのではない。
参加している人達の熱意や情熱が
組織を維持し、チームを動かしていく。



自分もサッカー部がサッカー部として成立し、
また、サッカー部がより良い活動ができるような
お手伝いができれば、と思う。



今回の大会参加に関して
選手達の頑張りと顧問の先生方の努力に感謝したい。
同時に、
これからも周囲の方々に対する感謝を忘れないでいたい。

サッカーの面白さと怖さ、挑戦者としてのインターハイ地区予選決勝

2007年05月05日 09時32分53秒 | サッカーの謎
5月3日、インターハイ東支部地区予選の2回戦があった。
対戦チームは都立篠崎高、幸先良く前半に点を取れたこともあり、
なんとか勝つことができた。



翌日の5月4日、インターハイ東支部の地区予選決勝があった。
相手は都立竹早高。



竹早高の先生は、前任の学校でも、現在の竹早高でも
何度も都大会に出ている経験豊富な先生。



経験豊富というよりも、百戦錬磨という表現の方が適切だろうか。
スカウティングをしっかりされて、
戦術的にしっかりと準備して、
大会に臨まれる。
選手の能力を上手く引き出し、
選手の能力とチーム戦術を上手く組み合わせることのできる、
指導者として、とても力のある先生だという印象を持っている。



春休みに練習試合をさせていただき、
その時は力負けしてしまったが、
今回はなんとかいい試合にしたいと思っていた。



ただ、練習試合は練習試合に過ぎない。
実際の公式戦とは、全く違う。



そのことは今までの経験で嫌というほど味わってきたので、
練習試合のイメージで考えていたら、
痛い目に合うのは間違いないので
全く違うチームと対戦する気持ちで
個人的には臨んでいた。



ただ、気になることが1つあった。
選手の中には、
「今回の大会、もしかしたら都大会に行けるのでは・・」
と、大会が始まる前から考えていた選手が少なからずいたこと。



聞いたところによると、
今のチームが都大会に行ったのは、
17年も前とのこと。



相手チームは何回も都大会に行っているし、
選手権でも都大会に出ている。



地区の先生方の印象でも
経験値があるので
なんだかんだいっても
竹早高が勝つのではないか、
そんな雰囲気だった。



確かに客観的に考えれば、
竹早高断然有利であるし、
実際、練習試合でも負けているので、
誰が考えても竹早高が勝つ、
と考えるのが自然だと思う。



試合前でも、竹早高のウォームアップは
規律が意識されていて、
チームとしてまとまっている印象。



どうしたら、チームの指導者として
目の前の試合に勝つことができるのか?



勝つためには、
どのような試合の入り方をしなければならないのか?
細い紐ではなく、太い紐で
チーム全体をどうまとめていくか。



やはり「挑戦者として戦う」という気持ちが一番大切、
という結論に至ったので
試合前に
「負けても失うものはないので、チャレンジャーとして戦おう」
ということを改めて強調した。



サッカーはミスの存在が前提になっているスポーツ。
仮に、実力差がかなりあったとしても
実力差が試合結果に比例しないのがサッカー。



だからこそ、サッカーは面白いし、
そして怖い。



ただ、今回は挑戦者として試合を面白くする立場。
結果を恐れずに戦うことこそが、
勝ちにつながる唯一の方法だと考えていた。



竹早高にしてみれば、
本当にやりにくい試合だったと思う。



都大会にほとんど出ていないチームには
絶対に負けるわけにはいかない、という意識があったはず。



サッカーにおいては、
勝てる試合にきっちり勝つ、ということこそ
一番難しい。



例えば、高校生が中学生と試合をしたり、
天皇杯でプロや社会人、大学チームが高校生と試合をする時は
本当にやりにくい試合だと思う。



負けたらいろいろ言われるし、
勝っても、ただ当たり前、と言われるだけ。



竹早高も、そんな気持ちが少なからずあったのではないのだろうか。



サッカーでは当たり前の試合なんかない。



どんな試合でも、番狂わせの要素が存在しているし、
何が起こるか、わからないのがサッカー。



この試合も結局、2対0で勝つことができた。



頑張ってきたことに対して
サッカーの神様がご褒美をくれた部分もあったのかもしれない。



でも、チームの目標である都大会出場を決めることができた。



都大会でも、その先にあるリーグ戦でも
目の前の試合に勝つことだけを考えて
毎回の練習を頑張りたいと思う。



チームとしての強化も、選手1人1人としての成長も
毎回の練習を頑張る先にあるはず。



最後にレフリーをしてくださった先生方、
大会責任者や会場責任者の先生方、
応援してくださった保護者やOBの方々、
ベンチから応援してくれた試合に出れなかった選手達、
全ての人たちに感謝したい。
ありがとうございました。