死亡保険金の課税関係 裁決事例 所得税・相続税・贈与税

2019-06-18 16:52:44 | 相続・贈与(税)

 生命保険契約に係る保険料の負担者は被相続人であり、死亡保険金は相続税の課税対象とすべき旨の請求人の主張は認められず、請求人が保険料の負担者であるとして一時所得に該当するとした事例

 請求人は、本件保険契約に係る保険料の負担者は死亡した妻であり、また、保険契約者が請求人となっていたことは知らなかったので、本件死亡保険金は相続財産として相続税の課税対象とすべきである旨主張する。しかしながら、

 [1]死亡した妻は無収入であること、
 [2]請求人は妻に対する労務の対価を支払ったことの事実を証する帳簿書類を提出しないこと、
 [3]妻名義預金には、労務の対価としての定期・定額の入金はなく、請求人の営む事業に係る収入金が入金されており、かつ、当該預金からの出金には、本件保険料のほか、請求人に係る国民年金の掛金や家電製品の支払があること等を勘案すると、当該預金は請求人の家事費等の支払の一部に充てるために、請求人の営む事業に係る収入金の一部を入金していたものと推認され、妻に対する労務の対価を入金していたものとは認められないから、当該預金は、名義は妻であったとしても請求人に帰属する預金であると認められる。

 また、請求人は本件保険契約に係る保険会社から自ら保険契約者であることを証明の上、借入れを行っていることから本件保険契約の保険契約者が請求人であることを認識していたことが認められる。
 
 したがって、請求人の主張にはいずれも理由がなく、妻名義預金から支払われていた本件保険料の実質負担者は請求人と解するのが相当であり、原処分庁が本件保険金を請求人の一時所得として所得税の課税対象としたことは相当と認められる。

 平成10年9月2日裁決


 死亡保険金を受け取ったとき

 1 死亡保険金の課税

  交通事故や病気などで被保険者が死亡し、保険金受取人が死亡保険金を受け取った場合には、被保険者、保険料の負担者及び保険金受取人がだれであるかにより、所得税、相続税、贈与税のいずれかの課税の対象になります。

 死亡保険金の課税関係

 被保険者 保険料の負担者 保険金受取人 税金の種類

   A         B          B       所得税
   A         A          B       相続税
   A         B          C       贈与税

 2 所得税が課税される場合

 所得税が課税されるのは、上記1の表のように、保険料の負担者と保険金受取人とが同一人の場合です。この場合の死亡保険金は、受取の方法により、一時所得又は雑所得として課税されます。
 (1) 死亡保険金を一時金で受領した場合
 死亡保険金を一時金で受領した場合には、一時所得になります。一時所得の金額は、その死亡保険金以外に他の一時所得がないとすれば、受け取った保険金の総額から既に払い込んだ保険料又は掛金の額を差し引き、更に一時所得の特別控除額50万円を差し引いた金額です。課税の対象になるのは、この金額を更に1/2にした金額です。
 (2) 死亡保険金を年金で受領した場合
 死亡保険金を年金で受領した場合には、公的年金等以外の雑所得になります。 雑所得の金額は、その年中に受け取った年金の額から、その金額に対応する払込保険料又は掛金の額を差し引いた金額です。なお、年金を受け取る際には、原則として所得税が源泉徴収されます。

 3 相続税が課税される場合

 相続税が課税されるのは、上記1の表のように、被保険者と保険料の負担者が同一人の場合です。受取人が被保険者の相続人であるときは、相続により取得したものとみなされ、相続人以外の者が受取人であるときは遺贈により取得したものとみなされます。
 また、死亡保険金を年金で受領する場合には、毎年支払を受ける年金(公的年金等以外の年金)に係る所得税については、年金支給初年は全額非課税、2年目以降は課税部分が階段状に増加していく方法により計算します(注1)。なお、年金を受け取る際には、原則として所得税が源泉徴収されます(注2)
 (注1) 実際に相続税の納税額が生じなかった場合も、上記の方法で計算します。
 (注2) 平成25年1月1日以後に支払われる生命保険契約等に基づく年金のうち、その年金の支払を受ける人と保険契約者とが異なる契約等で一定のものに基づく年金については、源泉徴収されません。

 4 贈与税が課税される場合

 贈与税が課税されるのは、上記1の表のように、被保険者、保険料の負担者及び保険金の受取人が全て異なる場合です。また、死亡保険金を年金で受領する場合には、上記3と同様、毎年支払を受ける年金(公的年金等以外の年金)に係る所得税については、年金支給初年は全額非課税、2年目以降は課税部分が階段状に増加していく方法により計算します(注1)。なお、年金を受け取る際には、原則として所得税が源泉徴収されます(注2)
 (注1) 実際に贈与税の納税額が生じなかった場合も、上記の方法で計算します。
 (注2) 平成25年1月1日以後に支払われる生命保険契約等に基づく年金のうち、その年金の支払を受ける人と保険契約者とが異なる契約等で一定のものに基づく年金については、源泉徴収されません。

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