TAOコンサル『市民派アートコレクターズクラブ』

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猪瀬直哉作品「Wait for me」の哲学的世界

2016年01月27日 | モダンアート
「みんなのギャラリー」の敦賀信弥氏の企画展、緊張感のあるいい展覧会であった。この中に一点気になる作品があり、再度観に行った。二度も観に行くなど珍しいことだ。 作品は猪瀬直哉の「Wait for me」 である。作品タイトルもいい。この哲学的作品、書斎の壁に架けて、静かに鑑賞してみたいものだ。私を思索の世界に引きずり込むに違いない。
作家はロンドンで修行中、北方ロマン主義の影響を受けているとのこと。そうかも知れない。ネットで見た作家の作品は、ターナーの難破船や深く急峻な山岳風景、或いはフリードリヒの人を寄せ付けない山岳風景の如き荘厳な世界であった。才能があるのであろう、楽しみな作家である。

この作品の構図はいたってシンプル、手前にプールがあり、その先にはよく伐り込まれた生垣が、そしてはるか前方には山並みが描かれている。色彩的には、プールはエメラルド・ブルー、草原はグリーン、山並みと空はブルーホワイトと全体的に明るいイメージだが、どこか哲学的雰囲気が漂う。ただの写実の世界ではない。


この絵に何を見るか、どう見るか・・・。
私には、プールの脇に立ち、はるか彼方の嶮しそうな山を見上げる作家、いや私自身の姿が見える。プールは現代という時代を表現している。一見平穏かつ平和に見えるが、貧富の差や老後不安、周辺諸国との緊張など課題山積だ。しかも生垣を境界にしたその先の世界も未来も、未知のままだ。我々は如何に生きるべきか。不安ではあるが、ここに佇んでいる訳にはいかない。

❝私は今、まさに、平穏なプールサイドを離れて、旅立とうとしている。遙か彼方の青い空は明るい世界を思わせるが、急峻な山岳の向こうは混沌とした不安と闘いの世界かも知れない。全て未知だ。・・だが勇気と希望を持って出発しよう。そう、「Wait for me!俺も行くから待っててくれ!」❞。


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