ハードバピッシュ&アレグロな日々

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チェット・ベイカー&クルー

2024-05-13 18:41:46 | ジャズ(ウェストコースト)

本日はチェット・ベイカーのパシフィック・ジャズ盤をご紹介します。チェットは以前に「チェット・ベイカー・シングス・アンド・プレイズ」を取り上げましたが、50年代半ばはその甘いマスクと中性的なヴォーカルでアイドル的人気を博していました。その人気ぶりゆえにハリウッドから映画俳優のオファーもあったりしたようですが、チェット自身はあくまで自分をトランペッターとして位置付けていたようで、1956年7月に吹き込まれた本作では得意のヴォーカルも封印し、純粋なインストゥルメンタル作品で勝負しています。当時のバンドのメンバーがジャケットに写っていますが、ヨットのマストに摑まってラッパを吹いているのはもちろんリーダーのチェット。下の4人はおそらく右からフィル・アーソ(テナー)、ボビー・ティモンズ(ピアノ)、ピーター・リットマン(ドラム)、ジミー・ボンド(ベース)の順でしょう。ジャズファン的にはソウルフルなピアニストの代表格であるティモンズの参加が意外ですよね。ソニー・クラークやケニー・ドリューが西海岸でプレイしていたことはそれなりに知られていますが、ティモンズも1956年から翌年にかけて西海岸に移住し、チェットのバンドに在籍していたようです。

全8曲。いわゆるスタンダード曲は1つもなく、全曲ジャズ・オリジナルですが、チェット自身ではなく全て他の作曲家が書いたものです。おススメはオープニングトラックの”To Mickey's Memory"。ハーヴィー・レナードというピアニストの曲らしいですが、いかにもウェストコーストらしい明るい曲調ながらハードバップ的な力強さも兼ね備えた名曲です。この曲だけビル・ラフボローという人のクロマティック・ティンパニという謎の打楽器も参加して曲を盛り上げています。後はフィル・アーソ作の優しいバラード”Halema"、アル・コーン作曲でコンテ・カンドリも演奏していた”Something For Liza"、ミフ・モールというトロンボーン奏者が書いたバラード”Worryin' The Life Out Of Me”も良いです。演奏面ではチェットの溌溂としたトランペットが最大の聴きどころなのは間違いないですが、フィル・アーソのコクのあるテナーも良いです。この人、なかなかの実力者だと思うのですが、チェット絡みでしか名前を聞きませんね。なぜでしょう?注目のボビー・ティモンズのピアノは後年のようなファンキーさはまだ前面に出ていませんが、アップテンポの曲では力強いブロックコード奏法を披露しており、やはりラス・フリーマンら他のチェット作品のピアニストにはない黒っぽさが感じられます。

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