ハードバピッシュ&アレグロな日々

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クリフォード・ブラウン/メモリアル・アルバム

2024-05-14 18:31:38 | ジャズ(ビバップ)

クリフォード・ブラウンにはメモリアルと名の付くアルバムが2枚あります。1つは以前に取り上げたプレスティッジ盤「クリフォード・ブラウン・メモリアル」、もう一方が今日ご紹介するブルーノート盤「メモリアル・アルバム」です。どちらもクリフォード・ブラウンが1956年6月に自動車事故で悲劇の死を遂げた後にリリースされたものですが、完全に後出しというわけではなく、生前に発表されていた音源を再編集したものです。ブルーノート盤の方は1953年6月に吹き込まれたルー・ドナルドソン「ニュー・フェイシズ、ニュー・サウンズ」と1953年8月に吹き込まれたブラウンの初リーダー作「ニュー・スター・オン・ザ・ホライズン」で、どちらも10インチLPで20分にも満たないものを組み合わせたものです。特に6月のセッションはブラウンの初レコーディングということで歴史的価値が高いものです。

メンバーは6月のセッションがルー・ドナルドソン(アルト)、エルモ・ホープ(ピアノ)、パーシー・ヒース(ベース)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ドラム)。8月のセッションがチャーリー・ラウズ(テナー)、ジジ・グライス(アルト)、ジョン・ルイス(ピアノ)、パーシー・ヒース(ベース)、アート・ブレイキー(ドラム)です。いずれもモダンジャズを支えるジャズメン達が名を連ねています。ただ、もともと10インチLPということで演奏はどれも3~4分程度。アレンジもこなれておらず、後年のブラウン=ローチ・クインテットの時代と比較すると完成度と言う点ではもう一つなのは否めません。

とは言え、ブラウンのトランペットはこの時点で既に別格の輝きを放っています。とりわけ素晴らしいのが8月のセッションの”Cherokee”。ブラウン=ローチ・クインテットの「スタディ・イン・ブラウン」のバージョンも歴史的名演として名高いですが、本作ものっけからブラウンがおそらく彼にしかできないであろう超絶技巧のアドリブを見せつけます。後半のアート・ブレイキーとの痺れるようなソロの応酬も素晴らしいです。他では当時まだ若手トランぺッターだったクインシー・ジョーンズ作の”Wail Bait”もなかなかの佳曲です。6月のセッションは名義上はルー・ドナルドソンのリーダー作ということもあり、ドナルドソンのソロにもスポットライトが多く当たっています。ただ、冒頭の”Brownie Speaks”は文字通りブラウンが名刺代わりとばかりに力強いソロを見せつけており、存在感は圧倒的です。また、通好みのピアニスト、エルモ・ホープも自作の”De-Dah”を提供するだけでなく、随所で軽快なソロを聴かせてくれます。その他の曲は正直まずまずの内容と言ったところですが、ブラウンの短いながらも輝かしいキャリアの出発点をとらえた作品として一聴の価値はあると思います。

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