クルマのサスペンションと長いお付き合い

サスペンションの話、試乗記、旅の話、諸々・・・。

バイクのFCU その2

2024-05-15 15:24:40 | バイクのサスペンション
ツインチューブダンパーの伸び行程では、ピストン上室の圧力が上がり、
減衰バルブを押し開いてピストン下室にオイルが流れ出て圧力が解放されます。

同時に伸び行程ではリザーバー室からオイルを吸い戻しているので
ピストン下室の圧力は下がり気味です。

そこにピストン上室からのオイルが流れ込むのでキャビテーションが発生しやすく、
ピストンスピードが速くなったときに起きるツインチューブダンパーの特徴(弱点)とも言えます。

キャビテーションが発生するとオイルが弾力性を持ち、各バルブの連携動作が崩れて
減衰の立ち上がり遅れが出始めます。

つまりインナーチューブ内オイルの正味量が目減りしている状態。

正常時ならストロークすれば減衰がついてくるのですが、この時はストロークが先行して
遅れて減衰が立ち上がる、いわゆる空打ちストロークが出始めます。

すると入力スピードのままストロークしてオイルに衝突、急減速します。

ストロークが反転すると、オイル不足の空間がすでに反対側に移転しているので
再度空打ち→オイルに衝突。これを繰り返します。

これがゴツゴツした乗り心地の印象になったり、バネ下の暴れ感になります。

綺麗な舗装は快適なのに、目地、ジョイント、パッチ路で急変して落ち着きを無くすのがそれです。

車体がユッサユッサと揺れる速さでは、もちろんキャビテーションは発生しません。

ゆっくりストローク→減衰値が低い→発生圧力が低い→キャビテーションは発生しない。
オイルの吸い戻しも問題なく、本来のダンパー性能が発揮されます。

なのでゆっくりストロークの時と、荒れた路面の時ではガラリと乗り心地の印象が違ってくるのですが
それは路面のせいと捉えられるているふしがあります。

区切るのは難しいのですがダンパーへの入力速度によって乗り心地に二面性があるとも言えます。

作動の安定を狙ってかどうかわかりませんが、フロントフォークが二本組なのを利用して、
伸びの減衰値を右側で、縮みの減衰値を左側で発生させる機能分割方式もあります。

片方に金属バネ、もう片方が空気バネと言った組み合わせもあるようです。

ここで、左右で仕様が違って問題は無いの?と疑問が沸きます。

振り返って、同じ仕様のモノを二本揃えたつもりでも、左右同じ減衰が立ち上がって、
バネも同じ反発力が出ているかというと・・・合算されたものしか分かりません。

そのことを誇大解釈すれば、左右で違っているモノを組み合わせてもまあ大丈夫。




G-BOWL Android

2024-05-09 11:09:44 | G-BOWL
Android版G-BOWLアプリ販売開始されました。

iPhoneとのやり取りもできます。

内容は従来通り。

Androidだから買えない使えないはこれで無くなりました。

無料のG-BOWL BasicもAndroid版あり。

まずはここから試してみてもいいかと思います。

無料版でボールを自在にコントロールできるなら言うことなしです。

バイクのFCU

2024-05-07 15:59:25 | バイクのサスペンション
ある日知人が二輪で来社。

二輪、四輪のライターをやっている器用な人です。

で跨ってきたそれはバイクメーカーの広報車両。

滅多にないことなので試乗させてもらいました。

250ccだったか400ccだったか⋯記憶に残っているのがフロントフォークの動きが雑だったこと。

この時のフォークの中身を知る由もないのですが、これで新車?と思ったことを覚えています。

それ以降は特に縁の無かったバイクですが、最近になって触れる機会ができました。

となるとフォークを分解して"雑"な動きの元はどこなのか、その理由を確かめてみたくなります。

作動時に若干は加圧されるものの、四輪の"オイルショック"と同じ大気圧封入方式。

クルマと大きく違うところは、バイクのフロントフォーク⋯テレスコピックが
伸び縮みする時の摩擦が大きいこと。

特に「静摩擦」がストロークのたびに動き始めが引っかかります。

スッとストロークし始めないことは、停止しているときに押さえ込んでみるとわかります。

手で押さえたくらいでは張り付いているかのようにびくともしません、
勢いよく体重をかけてやっと沈み込みます。

車両重量(車体重量)は乗用車の数分の一なので、動きはじめの渋さは
ゴツゴツあるいはボコボコとした、硬いタイヤを履いている印象の乗り味になります。

このフロントフォークの摩擦が大きいことは広く知られているようで、
低フリクションをうたうダストシールが売られていたりします。

さらに減衰値を発生するカートリッジを社外品に交換するケースもあります。

これはより洗練された乗り心地?高性能???を"期待"させるモノです。

裏を返せば、純正フォークではその余地があると思われていることです。

以前感じた雑な動きというのがもしかしたらそれかもしれません。

*FCU⋯front cushion unit

これは困った

2024-04-23 13:04:22 | なんでもレポート
これまで運転練習で多くの人と接してきました。

上手い運転を伝えるのは簡単なことではない、というのは重々承知しているのですが、
一瞬にしてその考えをリセットせざるを得ないことが起きました。

近くの合流地点まで付き添いの人が運転してこられて
いよいよ当人が運転席へ、私が助手席に、付き添いの人は後席に。

さあ行きましょうか、と声をかけるも走り出さない⋯

まずエンジンがかかっているかどうかが分からない。
エンジンスタートの方法も分からない。

液晶のメーターパネルを見ても今がどんな状況か、
そのクルマのオーナーでないとにわかには読み解けません。

スターターボタンはこれです⋯と言いかけて、その前にフットブレーキを踏みましょう⋯

となるとフットブレーキとエンジンスタートのつながりも説明が要ります。

AT車はPかNでしかエンジンがかからないので、エンジン始動と同時に走り出す心配はありません。

なのにブレーキペダルに足を乗せないとダメなのは、エンジンをかけようとしている人が
運転席に座っていることを検知するため⋯?シフト操作解除の為?

さてエンジン始動の次はシフトレバーをDに入れるのですが、触ってもびくともしません。

どちらの方向に動かすのかまず絵を探すところから⋯

ここで安易にシフトロックボタンを押しながらと説明してしまうと、単純に操作手順として記憶してしまいます。

*ブログで説明しました。ミサイル発射の解除ボタンと同じ⋯

シフトロックボタンの意味と、ボタン操作なしで動かせることの説明が必要です。

次にシフトレバー操作をしてもレバーは元の位置に直立します。

正しくシフトされたかどうかはメーターパネルで必ず確認。

これもわかりずらいことこの上なく、シフト操作のたびに間違い探しゲームをやらされている気分になります。

次はパーキングブレーキ解除。

Pマークが描かれたメカスイッチを探して、赤ランプが付いているのを確認、
それを消せばいいのですが、押し込むのか持ち上げるのかがわかりません。

さらに操作しても、ランプが消えるまでの間合いにもどかしさがあります。

スイッチ操作を受け付けたら点滅、ウイッとモーターが動いてパーキングの解除できたら消灯に
してくれればいいのにと毎回思います。スターターボタンも同じです。

電気信号のやり取りなのにクルマが考え込む!黙り込む・・・

Pランプが付いていてもDレンジで発進してもいいです。自動解除が働きます⋯

Pスイッチでも解除できるがしなくてもいい⋯???

これはもう正しい説明の仕方がわかりません。

駐車の時はシフトレバーのPスイッチ一つでパーキングブレーキが自動的に掛かるクルマもあれば、
当たり前にスイッチ操作するクルマもあります。

ほぼ初めてこのクルマを発進させる人(もちろん免許証は持っています)を目の当たりにした時に、
現代のクルマ作りは安全便利とはかけ離れた、ミスリードの操作系で固められていることに
改めて気付かされます。

さらに操作系の手応え足応えも無いと言っていいほどTVゲームより。
故に間違えて操作しても気が付かなくて当然。

ブレーキペダルを踏んでいるのに加速するのはどうして?

民家を突き抜けて裏口に頭を出すまで頭の中でグルグル。


レース専用ダンパー

2024-04-16 11:02:59 | セッティングレポート(SUSPENSIONDRIVE)
レース専用のダンパーは、フルハードからフルソフトまでの調整ダイヤルの可動範囲の中央あたりのどこかに
実戦で使われるであろう標準的な減衰値が設定されます。

そこから柔らかくしたい硬くしたいの振り幅があって、
バネレート、気候、ダウンフォース、タイヤ個々、エアー圧、サーキット路面など
に合わせて調整式ダンパーは本領発揮。

ところがサーキットの現場で、"伸び側フルハード" "圧側フルハードから2クリック戻し"
しかもダンパーの銘柄が変わっても、サーキットが変わってもドライバーが変わっても
調整ダイアルの位置は同じ!?という調整パターンを見かけます。

ちなみにですが、レーシングカー用のダンパーをテスターにかける場合は、
必ず調整ダイヤルのフルソフトから始めて、減衰値を見極めてから徐々にハードな方向を測定します。

フルハードではダンパーテスターを破壊しかねないほどの「高減衰」が仕込まれているからです。

論外に硬いバネでも選ばない限り、レース専用ダンパーのフルハードが必要になることはありません。

DTMのマシン&レースでは少々の小競り合い程度で車両どうしが接触してもスピンしないし、
コースから弾き出されてもすぐに戻ってきて、格闘技らしいそれが見世物になっているところがあります。

*主催者も容認しているようで、滅多にペナルティーの対象にならないことと、
 ドライバーが逆手にとって無茶している様にも見えません。

国内のそれはというと接触するとあっという間にスピンして一巻の終わり。

あまりにも"粘り気のない"挙動で、同じカテゴリーのレースカーに見えません。

タイヤは垂直荷重でグリップを得るので、グリップを失うということは
その時にタイヤ荷重がかかっていないということ。

荷重が抜ける理由は、フルハードのダンパーのせいでタイヤが車体側に拘束され、
バネ下の振動数では動かず、横から体当たりされるとタイヤ荷重が戻るまでの
わずかな間合いでスピンに至ります。

しゃがみこんでいる人が肩を押されると、足を伸ばす前にゴロンと転がるのに似ています。

LSDが左右輪の自由な回転を拘束して、デファレンシャルギヤの働きを消すように、
フルハード、つまり過減衰のダンパーはサスペンションの可動ストロークを
封じ込めてタイヤの接地性を失わせます。

減衰力の適値を探すのがサスペンションチューニング、減衰力調整式ダンパーはそのためのものです。


バイクのサスペンション

2024-04-09 12:53:44 | バイクのサスペンション
あるバイクユーザーが、高価なサスペンションを投入したのに、ミニサーキットのタイムが
ノーマルの時に出したタイムを超えられない。それどころか遅い。

タイトルが"高価な部品で遅くする、あなたもひと事ではない"

でも当の本人は全く落ち込んでいる様子なし。おふざけでも無い。
次はバネレートの変更に挑戦する気満々。

どこにそんな余裕がと思えるほど明るくまとめられた、かつ勇気ある動画。

ノーマルとどこが違ってこうなったのか、タイムが遅い理由をどうやって見つけるのか、
続編があれば覗いてみたいですね。

何かを変えれば良くなる、何かを追加すればいいことが起きるかというと、
必ずしもそうはいかないという事例かと。

他にも同じ様な動画もあります。

そちらはオフロードバイク。結論は"体感は違うけどタイムは変わらない"

どちらのバイクも市販状態で優れた仕立てであることを検証できたとも言えます。

乗りやすくて良いタイムがサラッと出てしまうと、もっと伸び代があるはずだ・・・

みんなそう思うんです。

改造したら・・・乗りづらくなった。遅くなった。

人には知られたくない話です。




減衰力調整式ダンパー あれこれ

2024-04-03 14:23:17 | セッティングレポート(SUSPENSIONDRIVE)
鈴鹿サーキットで2024のスーパーフォーミュラ公式テストが行われた日。
知人から電話。

内容は今年からスーパーフォーミュラに採用されるダンパーについて。

資料送るからさ。見といてよ⋯ということで内部構造をチェック。

減衰力の調整機構がダンパーの外部についていて、ピストン部をオイルが通過しないタイプ。

カチカチダイアルを回して減衰力を変えられる部分が、
単三電池半分ほどのカートリッジになっていて、
テーブルの上でダンパーを水平に寝かせて作業すれば、
オイルをこぼさずカートリッジに内蔵されたスプリングを入れ替えることができます。

組み立てる時は数滴オイルを足して、エアーを噛み込まないように
そっとカートリッジを組み込めばよく、現地作業ができるところが利点。

なんですが、このタイプそのものは以前からありました。

新しいところは低速域を強くしても、高速域の減衰が立ち上がり過ぎるのをコントロールできる様にしたこと。

昔、酒屋さんでは日本酒の量り売りをしていました。
一斗樽の下に刺さっている栓を慎重にひねって隙間を調整すると、トクトクお酒が流れ出てきます。
それをこぼさない様に漏斗で一升徳利に入れて持ち帰る⋯という話は置いといて。

先端に向かって細くなっているテーパー状の栓が、プランジャー(ポペットバルブ)の先端形状と考えて、
テーパー形状を変化させれば、ブローオフの量を変えられます。
構造は至ってシンプル。

*YouTube オーリンズTTR4ウエイダンパーの仕組み

先端形状の違うプランジャーが、何種類かラインナップされているようなのですが、
スーパーフォーミュラの規定ではチームは勝手に触っちゃいかん(ダンパーの分解不可)

ピットロードでは固そうに見えるのに、ストレートではビタッと路面に張り付いてヒョコつかない⋯
もしそうなっていれば、酒飲みが一斗樽の栓からヒントを得たそれが功を奏していることになります。

一昨年F1マシンが健康を損ねそうなほど跳ね回っていた対策の一環と考えればブローオフさせる意味もわかります。

そんなダンパーがスーパーフォーミュラに採用されたというお話し。

親の一言

2024-03-31 11:42:45 | NEWTON BRAKE
ニュートンブレーキって何?

と興味を持たせるのが目的でネーミングにしたのでにわかには分からないはずです。

日本語の「踏力一定」で説明しようとも思ったのですが、
踏力が一定だから、踏み方がひとつ・・・ワンパターン・・・
ブレーキの掛け方は"一つ"と捉える人が出てきます。

ニュートンブレーキは、物理現象に則った正しいブレーキ操作の方法を表す言葉として考えました。
造語なので誰も知らなくて当然です。

ブレーキングテクニックと言ってもいいのですが、運転の最も大事な基本操作のこと。

以前にも書いた仕事先での話。

仕事が一段落した後の会食の席で、
娘が運転免許を取得してこれから街に乗り出すので、一言伝えるとしたら⋯と
先方の会社の偉い方に聞かれ。

"ブレーキをかけ始めたら足の力を一定にしたまま止める"

期が変わって又会食の席。

あの一言で、娘の運転は怖くないと友だちから認めらている⋯と父親。ニコニコ。

伝言のまた伝言なのにうまく伝わる時はこんなにもあっさりです。

そこで気になるのが、ニュートンブレーキ本。

文字だけで果たしてどこまで伝わっているのだろうか。

このことも何度か書いた気がします。


リヤサスペンションと直進性とヨーレートの反転回数

2023-12-26 16:01:32 | G-BOWL
スバルGC-8のリヤサスペンションはストラット形式。

その構成は、横方向の力を受けるパラレルリンクと前後方向のトレーリングリンク、
支柱とダンパーが一体化しているストラット。

いま時のややこしいマルチリンクが考え出される以前の、シンプルで癖の少ないサスペンションと言えます。
ショックストロークは国産車の中では最長の部類。

このリヤサスペンションに使われているゴムブッシュを、ピロボールに入れ替えました。

その結果、真っ直ぐ走っている時の修正舵が減りました。

この違いをG BOWLアプリのヨーレートの反転回数で確かめられます。

ピロボールブッシュ変更後はヨーレートの反転回数が半分以下という結果です。

リヤの横振れ量が減ることで"真っ直ぐ度"が向上したことになります。

同じようにトーイン調整違いもヨーレートの反転回数で確かめることができます。

そもそもは、ドライバー違いで真っ直ぐ走っている時のクルマの落ち着きに差があることに気がついて、
そこを確かめられるようにヨーレートの反転回数をカウントできるようにしたというのが始まりです。

このヨーレートの反転回数の項目は使い道色々。

うまい運転手との差がこんなところにあったのかと、それまでモヤっとしていたところが、見えてきたりします。

なんのことだかピンとこないと思いますが。

左下のEdit→★★範囲の情報表示★★→下から二番目のヨーレートの反転回数

運転の工夫で反転回数を減らすことができるかチャレンジしてみてください。

あることに気がつけば回数を減らすことができます。




モーターファンイラストレーテッド

2023-12-12 13:35:20 | なんでもレポート
           * モーターファンイラストレーテッドNo206号より *
 

レーシングカーエンジニアの方が書かれているページがあります(連載中)
今回の話題はNo205号とNo206号に書かれている内容。

あくまでレーシングカーの限界走行時に起きていることです。

どのクルマであれアンダーステアーに仕上げるのがセオリー。

アンダーステアー、オーバーステアーの明確な線引きというのはないのですが、
安定姿勢を保てるのがアンダーステアー、何かのキッカケですぐに不安定姿勢になるのを
オーバーステアーとイメージしてもいいかもしれません。

定常的にリヤが流れっぱなしになるとか、ハンドルを切っても切っても曲がらないと言った
とんでもないセッティングではなく、前後バランスが常識範囲に収まっている中での話です。

エンジニアの方はアンダーステアー、つまり安定姿勢の時はリヤタイヤを使い切っていない可能性がある⋯

リヤタイヤに対してフロントタイヤが先にCFマックスになるので、
ドライバーはそれを感知して旋回速度と走行ラインをコントロールしている。

この瞬間に、リヤタイヤに余力が残っていることに着目して、フロントタイヤの容量を上げれば、
リヤタイヤを使い切ることができてタイムアップにつながる可能性があると、提案されています。

すでにギリギリのタイヤ選択がなされていれば効果が望めないのはもちろんですが、
今現在の自車のバランスを確かめる意味でも、考え方も含めてとても良いヒントかなと。

ここのところ仲間内で、このリヤタイヤを使い切る話でやりとりしています。

車両運動は物理現象なので、共通の理解が得られそうなんですが。

これに運転する"人"が加わって話が横展開⋯どう走らせているのかを紐解く必要があります。
サスペンションセッティングの話がまだ出ていないので、整理できるまでにはまだ時間がかかりそうです。