谷の中に入ると道も細く、傾斜もきつくなります。
雪道を歩いた経験のないトレッカーは、緊張を強いられる様子が見えます。
もし、一晩で30センチ以上の雪が積もれば、ここは更に困難を伴う場所となるはずです。
私は先を急ぎました。
出発してから50分程で、昨日、抽象画のようだと感じた岩壁の下に出ました。
灰色の雲が空に広がっていますが、大気は安定しているように見えます。
周囲に潅木が現れ始めましたから、標高が下がり、気温も上昇しているはずです。
しかし、こんな場所でもスリップすれば滑落事故につながりますので、油断は禁物です。
周囲の谷は安らぎに満ちた不思議な静寂に包まれていました。
モノトーンの水墨画のような景色の中を下り続けました。
ピカピカの晴天だと見ることができないはずの景観を、存分に楽しませてもらいました。
日本であれば、このような岩と雪の織りなす光景は、熟練した登山者のみが見ることができる類のものです。
贅沢な景色が続く谷が広がっていました。
しかし、山の贅沢は危険とも隣り合わせです。
雪崩れの痕を随所に見かけました。
そして、河原に摩耗して角の取れた石が現れるころ、
谷に水が流れ始め、空に青が見えるようになってきました。
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