ランズ・エンド(Land's End:地の果て)に到着しました。
強烈な風が、休みなく海から吹き付けていました。
まともに立って居れないほどです。
見下ろす海に立ち尽くした岩へ、容赦ない白波が叩きつけます。
そのあまりの激しさに魅せられ、私はしばらく岩と波から目を離すことができませんでした。
ランズ・エンドの崖の上の白いホテルが風に晒されていました。
青い空と海に白壁が映えます。
何の目的でしょう、円形の小屋が海崖ギリギリに建てられていました。
風が強すぎるので、崖の縁の小屋へ近づくのがはばかられます。
穏やかに晴れ渡った空の下で、風と波だけが荒れ狂ったように吠え続けていました。
振り返れば、遮るものもない、獏とした草原が広がっています。
ホテルの左手にグリーブファーム(Greeb Farm)と標された門があって、その先に建物が見えます。
簡易舗装された路を歩いてみました。
わずかに凹んだ谷に透明な水が溜められています。
石小屋の前で雄鶏が風を避けるように、陽を浴びていました。
母屋では皮のベルトやメダルなどの記念品を手作りしていました。
海に沿って伸びる小さな尾根に、柵囲いした放牧場があり、牛や羊がのんびりと草を食んでいました。
今来た路を振り返ると、ホテルが海風の中で、岬にへばりつくような姿を見せています。
谷横の尾根へと続く、踏み分け道を歩いてみました。
尾根の上は、とてつもない風が体ごと持って行きそうに吹きすさびます。
尾根の下では、白波が怒りをあらわに岩を洗っていました。
そんな小路で、アサツキが愛らしいピンク色の花を咲かせていました。
地の果てには花が咲きます。
昔、若かりし頃、雷雨の中で登攀した北の岩壁で、ピンクのタカネバラが風に揺れた姿を想い出しました。
木や草や人は、厳しい風の乏しい糧の中でも、美しい花を咲かせられるようです。
ランズ・エンドの風の中で、若い二人が肩寄せ合いながら歩む姿を見かけました。
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