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日本古来の文化財である椿を誰が守るのか

2017-06-08 21:31:28 | 氷見に椿古木を訪ねる

 

 富山県立中央植物園を出て、富山市宮尾の内山邸に向かいました。


 国登録有形文化財の内山邸は、富山平野を貫き富山湾に流れ込む神通川の氾濫原野を、新田開発した豪農の住居です。

 明治以降、地主制度のもとで最大の繁栄を迎えました。


 昭和52年に13代内山季友氏から富山県に譲渡され、現在は富山県民会館の分館として市民に開放され、お茶、お花などの文化的行事の催事場としても利用されています。

 



 今回、内山邸を訪ねたのは、富山市内最大の椿木があるので、一度見ておきたかったのです。


 そしてこれが、その椿の古木です。


 背後に、雲の中に見え隠れする立山連峰を肉眼で認めましたが、写真には写っていませんでした。

 



 内山邸の椿は富山市内最大ですが、内山邸には庭に60本の梅が植栽され、花の季節には多くの市民が梅目当てに訪ね来るようです。

 



 邸内には、枝垂れ桜をはじめとする4本の桜の大木があり、3月下旬から4月中旬にかけて見事な花を咲かせるとのことです。

 しかし今は、春を待つ間の風情を醸しつつ、桜は風にそよぐ枝を見せるばかりでした




 庭園の一隅に設けられた蹲踞の水面に、散り落ちた椿花が華やぎを添えていました。

 


 
 邸内も観覧させてもらいましたが、大正時代の画家 内海吉堂が描いた鶏の襖絵や板壁に描かれた鹿の絵など、一地方農家の概念を超えた調度品の数々に目を瞠る時を過ごしました。


  

 
 

 内山邸を1時間程で切り上げ、富山市に隣接する射水市旧家の本橋家を訪ねることにしました。


 本橋家の椿古木も近隣に名をとどろかす銘木だそうです。


 ナビに住所を入力し、射水市殿村の辺りを探し廻りましたが、それらしき民家が見当たりません。


 土地の人に道を尋ねながら車をはしらせ、最後に小さな個人商店で本橋家の所在を伺いますと、その商店裏手の大きな空地が本橋家の跡地だというのです。


 2年程前まで、敷地には鬱蒼と木々が茂るお屋敷だったそうですが、後を継ぐ人もなく、椿の古木は切り倒され、今は宅地造成の工事が進められているそうです。

 



 室町鎌倉時代の頃から、何世代にも亘って慈しみ育ててきた地域を代表する椿の古木でさえ、世代を継いで財を蓄積する不公平を是正する方針に基づく日本の相続税制度下では、日本固有の文化財としての価値を持つ椿の古木や品種であっても、個人が所有物する限りは、守りきれないようです。

 

 唯一日本のみに伝わる椿の古木や、数百年の時を継いで守られてきた椿品種群の価値を認め、保存を図る意志と行動力を持つ人々が現れてほしいものだと、今は切に願うばかりです。

 

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