秋の炎色

　「赤」は、大と火という二つの文字の組み合わせで生れた字である。それは炎の色であり、燃える情熱の色である。
　　秋にはなぜか、この炎の色が多い。カンナやサルビアの花、カエデやハナミズキの紅葉、ナナカマドの実、そして鶏頭や葉鶏頭の色。

　”　つくりこしこのはたとせをかまづかの/もえのすさみにわれおいにけむ　”（会津八一）

　　かまづかは葉鶏頭のこと。会津八一の葉鶏頭づくりは名人芸だった。
　　
　”　行人の歩を停めて感歎の声を揚ぐるを聞くひそかに之を以て貧居の一勝となさんとす　”と自ら書いているほどで、毎年、
　六尺に余るかまづかが庭を飾ったという。茎までも赤く染めた葉鶏頭の葉は、下の方が黒い赤で、上の方が濃い朱色になる。
　先端の炎はまさに　「もえのすさみ」である。その炎をたじろがずにみつめながら、八一は自らの老いを静かに眺めている・・


　今日聴いたジャズ・・・

　DINO　RUBINO・・・「MI　SONO　INNAMORATO　DI　TE」（君に恋して）




　本作は、１９８０年、シシリー島カターニャの生まれ、ジャズ・トランペット奏者ディノ・ルビノのリーダーアルバム。

　トランペット、テナーサックス、ピアノ、ベース、ドラムによるクインテット編成。

　全８曲、タイトル曲は２８歳という若さで世を去ってしまったイタリアの伝説的シンガー、ルイジ・テンコが１９６２年に放ったヒット曲。
　他に、ナット・アダレー、ソニー・スティットの曲にスタンダードを織り交ぜた構成になっている。

　ディノ・ルビノはイタリアから彗星のごとく本邦デビューを飾ったトランペッターである。
　バンドのメンバーたちは、いずれも現在のイタリア・ジャズ界を背負っている中堅のプイヤーばかり。

１・君に恋して・・２・LOTUS　BLOSSOM・・３・あなたと夜と音楽と・・４・IF　I　SHOUD　LOSE　YOU・・５・ETERNAL　TRIANGLE・・
６・HERE’S　THAT　RAINY　DAY・・７・THE　OLD　COUNTRY・・８・IL　MATRIMONIO・・


　　８はここでピアノを担当している、サルバトーレ・ボナフェーデが書いたオリジナルで”結婚式”という意味の曲。
　　６拍子のリズムと陽気なカリプソ風メロディーがミックスされた楽しいナンバー。。


　○ディノ・ルビノ

　　１１歳でカターニャの音楽学校でピアノを学び、４年間で学位を修得した。ちょうどその頃、トランペッターのトム・ハレルのプレイ
　　をコンサートで聴いて魅了され、トランペットを吹くことを決意する。そして独学でこの楽器を始めると共に、９６年にはパオロ・フレス
　　やエンリコ・ラヴァが主宰していたセミナーに通って、実力をつけていった。９８年には、優秀なプレイヤーに与えられる、
　　”マッシモ・ウルバニ賞”にも輝いている。
　　ルビノの師のひとりでもあるイタリア・ジャズ界の巨匠、エンリコ・ラヴァもルビノの音楽性については、賞賛を隠さない。
　　”ルビノのプレイは、僕も大好きだ。イタリアには優れたトランペッターが何人もいるが、何といってもルビノは若手のナンバー・ワン
　　だね・・・・・”とはラヴァからのコメントである。

○ピエトロ・トノロ（テナーサックス）は５９年、ベニスの生まれ。８０年代にエンリコ・ラヴァのグループで演奏したあと、独立して
　　リーダー作を吹き込んだ。９９年から２００４年ごろまで、ドラマーのポール・モチアン率いる　”エレクトリック・バップ・バンド”
　　のメンバーとして活躍したこともある。

○サルバトーレ・ボナフェテ（ピアノ）は６２年、パレルモの生まれ。８６年にバークリー音楽院に学んだあとイタリアに戻って、同国を
　　代表するピアニストとして活躍を行っている。テナーのジョー・ロバーノが率いていた大編成コンボのメンバーとしても、プレイを
　　行ったことがある。

○ステファノ・センニ（ベース）は７２年生まれで、１０代の後半からこの楽器を正式に学び、巨匠レイ・ブラウンが主催していたインター
　ナショナル・ワークショップにも参加した。

○ウォルター・パオリ（ドラムス）は６７年生まれで、近年はステファノ・ボラーニのトリオやエンリコ・ピエラヌンツィなどとプレイを
　行っている名手である。


　　DINO　RUBINO（tp）
　　PIETRO　TONOLO（ts）
　　SALVATORE　BONAFEDE（p）
　　STEFFANO　SENNI（b）
　　WALTER　PAOLI（ds）


　　２００８年５月２１＆２２日、ボローニャにて録音・・・