Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

赤坂ACTシアター『薔薇とサムライ~GoemonRock OverDrive』 S席後方センター

2010年03月27日 | 演劇
赤坂ACTシアター『薔薇とサムライ~GoemonRock OverDrive』 S席後方センター

まだ始まって間もないので基本ネタばれ無しの感想です。

楽しかったです。しかし『御名残三月大歌舞伎 第二部』を同日観劇してしまい、しかも『弁天娘女男白浪』が楽しくてその余韻たっぷりなところで観たために『薔薇とサムライ~GoemonRock OverDrive』のほうはちょっと不利感が…。ロックミュージカルで舞台がヨーロッパとはいえ歌舞伎調の演出や衣装がありますから比べてしまい…。こんな観劇スケジュールにした私がいけないんですけど。

まず全体的な感想としてはエンターテイメントに徹した客を乗らせる芝居。五右衛門ロックシリーズとしての「顔見せ芝居」の方向性が気持よし。ただし、赤坂ACTシアターという箱は五右衛門ロックシリーズには合わない劇場だなという印象。新宿コマ劇場のイメージが強すぎるのでしょうかね。それとやっぱり一幕目が若干だれるのはお約束?特に酒場のシーン、無駄に長いような気がしました。しかし、そのだれ場が過ぎればあとは一気呵成に進んでいきテンポは良かったです。また、前回に比べていわゆるミュージカル色が強かった。今回の出演者たちが宝塚出身だったり、ミュージカル俳優さんだったりしたせいでしょう。しっかり歌える人たちがいて、曲調も正調ミュージカル風。私はこのミュージカルパロディ風味のノリがわりとツボで楽しかった。

さて、演出、最近毎回書いている気がしますが、今回も書きます。ええ、もう書かずにはいられない。いのうえさんの最近お気に入りの映像演出がますますエスカレート。映像多様の悪い部分が出てました。役者が引き立たない演出はどうなのか。 ひどすぎです。映像をまったく使うなとは言いません。味付けとして使うのは全然OK。『メタルマクベス』あたりまでだったら私は許容できる。でも今回のは味付けどころじゃない、ほぼ全面使用。そのごちゃごちゃした映像のせいで役者が舞台から浮き立ってこない。小さく見えてしまう。また衣装も引き立たないし、とにかく邪魔と思うところのほうが多かった。役者が芝居しているその後ろで大きな映像画面を流したらどういうことになるか。映像に気を取られちゃうんですよ。役者の芝居に集中できない。それによって芝居の印象が薄くなる。いのうえさん、ご自分で毎日ようにこの舞台を観ているはずです。私は今回、いのうえさんが観てる席の近くで拝見しました。後方センターからです、ほぼ同じように見えてるはず。映像多用のせいで役者の魅力が殺されていることに気がついてください。映像が舞台転換をスピーディにできるメリットもわかります。が、舞台の魅力って何?っていう原点の部分を思い出して欲しい。役者の魅力を十分に演出してこれる、という部分は相変わらずお見事です。それに応えるている役者も見事です。それだけになぜ舞台背景でそれを半減させなきゃならないんだ、と疑問でいっぱい。

私は直前に歌舞伎座で『弁天娘女男白浪』を観ました。「勢揃いの場」では川端の桜が満開の華やかな舞台上に役者五人がかなり派手な衣装で登場します。華やかな書割の舞台装置のなか華やかな衣装の役者が浮世絵のように大きく浮き立ってきます。こういう舞台を観て、今回の『薔薇とサムライ』の舞台装置を見てしまうと、同じ「派手」でもこうも違うものかと思いました。同じような「顔見せ芝居」だったため、ごちゃごちゃした映像はいらない!という思いが強くなってしまいました。(観た席での距離感も一緒だったから尚更!)

脚本のほうは中島さんお得意技をわりとストレートに持ってきたという感じですね。大枠は二転三転させるものの大きく捻らないで、役者本位での細かい部分で楽しませてきた感じ。五右衛門ロックシリーズとしてちょうどいいバランスだったと思います。今回、アンヌ@天海祐希さんを立てつつも五右衛門@古田さんの魅力がガッツリ出てたし。

役者さんたちははじけまくってほんとに良かったです。

五右衛門@古田新太さん、緩急のつけかたが相変わらず絶妙。受けの芝居がやっぱり上手いよなあ。今回、出番が多いのが嬉しい。ただの白ムチ(笑)が色男に見えてくるんだから不思議。声が色男なんだよなとか思ったり。最初の名乗りのとこは…ごめんね、まだまだだなってつい思った。もこもこした着物と鬘に着せられてる感が…。だってカッコイイ歌舞伎役者五人衆の名乗りを聞いたばっかりで…つい比べちゃったよ。

アンヌ@天海祐希さん、久々に舞台で拝見。『阿修羅城の瞳 2003年』以来かな。相変わらず華がある。凛とした姿がカッコイイ。特に海賊衣装や男装姿のカッコイイこと!さすが宝塚男役のトップスター!反対にドレスが似合わなかった、特にふりふりドレス…(笑)。天海姐さんにはもっとシンプルなカッティングの色の濃いビロード地のドレスのほうが合うと思われ。歌、上手くなったかな?なかなか聞き応えありました。殺陣は相変わらず…もっと頑張ってくださ~い。

シャルル@浦井健治さん、個人的にツボに入ったかも。ミュージカル畑からのご出演。さすがに声がいいし歌がほんと上手。わざとらしく大仰に、という演出部分にしっかり乗って演じてくれてるのもポイント高し。それだけじゃなく殺陣が上手いというか身体の動きがいい。

バルバ・ネグロ@橋本じゅんさん、相変わらず美味しいところ持っていく(笑)。美味しすぎるでしょう。私はマゼンダの衣装がお気に入りです。ラブリーでしたわ、うふっ(笑) コール&レスポンスは最近かならずやりますね~。

ポリー@神田沙也加さん、『レ・ミゼラブル』で拝見していますが超らぶり~。可愛らしい華があります。それと芝居に対して柔軟性のある人だなと思いました。今回、アイドル風の歌唱でしたけど、ミュージカル歌唱もしっかりこなせる人なのでお母様の松田聖子さんをもじった演出なのでしょう。そこをてらいなくやってくれてることに拍手。演技もなかなかしっかりしていると思う。

エリザベッタ@森奈みはるさん、なんだかいい味わい!宝塚の娘役だったんですよね。いちいち歌ってしまうキャラが楽しく、また芯の強さのある役がなんとも「らしく」て良かったです。

スペラード豹之進@山本太郎さん、良い意味でのアホキャラが楽しい(笑)。独特の雰囲気があってスパイスとして利いていました。

ブライボン大宰相@藤木孝さん、クセのある役を品よく、そのなかで捻ったアクのある雰囲気を出されていました。

---------------------------------------------------------
2010年劇団☆新感線30周年興行【春】
『薔薇とサムライ~GoemonRock OverDrive』

作:中島かずき
演出:いのうえひでのり 
作詞:森雪之丞
キャスト:
古田新太、天海祐希、浦井健治、山本太郎、神田沙也加、森奈みはる、橋本じゅん、高田聖子、粟根まこと、藤木孝

【あらすじ】
ときは17世紀、ところは日本を遠く離れたイベリア半島の一小国コルドニア王国。
その領海で暴れまわっている海賊の石川五右衛門(古田新太)は、同じくその界隈を荒らしている女海賊アンヌ・ザ・トルネード(天海祐希)と戦友になり、彼女の船で用心棒をすることになる。
とある港町で、五右衛門は彼をつけねらう賞金稼ぎのデスペラード豹之進(山本太郎)と戦う羽目に。しかもその隙を突かれ、アンヌは城の兵士に捕らえられてしまう。
 城に連れて行かれたアンヌを待っていたのは、ラーカム・デ・ブライボン大宰相(藤木孝)。王の血筋が途絶えた今は、彼が国を仕切っている。だが、大宰相はアンヌに王になれと告げる。彼女こそ先王の娘だというのだ。城に入ったアンヌは、侍女エリザベッタ(森奈みはる)から貴婦人教育を受けるはめに。社交界デビューのダンスパーティーで、隣国の王子、シャルル・ド・ボスコーニュ(浦井健治)は彼女にひとめぼれをする。そして、そこにはアンヌを心配して潜入していた五右衛門もいた。貴族に変装していた五右衛門のことが気になり、うるさくつきまとう大宰相の孫娘のポリー・デ・ブライボン(神田沙也加)。
 それぞれの思惑が交錯する中、女王としての立場に目覚めていくアンヌはついに“海賊討伐令”を発布。彼女自ら甲冑を着込み軍を率いて、かつて仲間だった海賊たちに戦いを挑むことになってしまう。
 海賊仲間を守るためアンヌと対決する五右衛門。国王と海賊、立場を分かつ二人の誇りと意地が激突する。 だが、女王擁立の裏には大宰相の国家的陰謀があった。
 五右衛門とアンヌ、果たして二人の運命やいかに!?