Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

帝国劇場『ルドルフ ザ・ラスト・キス』 ソワレ A席1階センター

2012年07月14日 | 演劇
帝国劇場『ルドルフ ザ・ラスト・キス』 ソワレ A席1階センター

デヴィッド・ルヴォーの演出も観てみたかったのと俳優も揃ってる感じだったので観にいきました。で、期待が大きすぎたせいか物足りなかった。演出も俳優も悪くない、むしろ良かったと思うんだけど「物語」が浅くて…。

激動の時代の19世紀末のオーストリアのルドルフ皇太子が主人公だからいくらでも書きようがあると思うんですけどねえ。個人的にもっと歴史の狭間で押し潰された男とその男に関わった女たちの哀しみ、強さみたいな物語がみたかったんですよね。着地点が単なる恋愛物でしかなくて…。物語が浅かったので俳優さんたちも歌の見せ場がそれぞれ多いわりにこれぞという場面が作れなかった感じ。演出がよくて飽きなかったんだけど全体的に平坦というか…役が類型的で掘り下げができないんだろうなあとか。

ルヴォーの演出はしごく端正で計算しつくされた演出という感じでした。文楽や歌舞伎に影響されたという部分はすぐにわかる。ある場面に使用されるのだけど、「曽根崎心中」を知っていれば、すぐにわかるし実はそこでオチもわかっちゃう。でも特別日本趣味に走っている感じでない。幕と盆の使い方が印象的。上手い!盆をくるくるとかなり廻すけどうるさくない。舞台転換の間の作り方が絶妙。早すぎず遅すぎず。幕の使い方はブレヒト幕の変形というか進化させた形というか。コンピューター制御ですよねあれ。デヴィッド・ルヴォーの演出は他のも見てみたいな~。今度ストレートプレイを演出するときに観てみよう。

ルドルフ@井上芳雄さん、真っ直ぐな個性が役にピッタリだし歌もよかったしルドルフの頭でっかちで背伸びしてる感が可愛かったしで好演してたと思うんだけど、いかんせん脚本がルドルフを描きこめてないのでそこ以上のものではないのが残念でした。

マリー・ヴェッツェラ@和音美桜さん、歌がかなりお上手ですね。聴き応えありました。若い未熟さゆえの気の強さが前面に出たマリーでした。

ラリッシュ@一路真輝さん、この題材でエリザベートを演じてきた一路真輝さんが出演されたのがなんとなく感慨深かった。役にとてもあっていたのとキャラ的にもいいキャラというのとで芝居のなかで一番活き活きして魅力的でした。

首相ターフェ@坂元健児さん、首相という貫禄はまだないかな~と思えど国のことにある意味一途なターフェを熱く演じていました。サカケンさん意外と個性強いタイプですね。

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帝国劇場『ルドルフ ザ・ラスト・キス』

【キャスト】
ルドルフ(オーストリア皇太子):井上芳雄
マリー・ヴェッツェラ(男爵令嬢):和音美桜
ステファニー(皇太子妃):吉沢梨絵
ターフェ(オーストリア首相):坂元健児
ラリッシュ(伯爵夫人):一路真輝
フランツ・ヨーゼフ(オーストリア皇帝):村井國夫
アンサンブル :青山航士・島田邦人・杉山有大・照井裕隆・中島康宏・原慎一郎・ひのあらた・松澤重雄・港幸樹・村瀬美音・山名孝幸
岩崎亜希子・大月さゆ・樺島麻美・後藤藍・鈴木結加里・保泉沙耶・舞城のどか・美鳳あや・望月理世・柳本奈都子・やまぐちあきこ