Life in America ~JAPAN編

I love Jazz, fine cuisine, good wine

アメリカンアイドルがどうしても崩せなかった壁。

2009-05-23 06:40:47 | アメリカ生活雑感
(注)ネタバレあり。ファイナルの結果を楽しみにしている人は今は見ないでね。

全米が狂ったように大騒ぎした、アメリカンアイドル・シーズン8が終了して一夜明け、翌朝の新聞を見てみると、やはり見出しは

“Shock and.... huh? え?クリスが勝ったの?”だった。

第2のプレスリーか、フレディー・マーキュリーか、とも囁かれ、もっとも頂点の座に近いところにあったアダムが敗れたのだから仕方ない。
しかし所詮選ぶのは、プロのアーティストでもなければサイモンのような腕利きプロデューサーでもない。
アメリカの“普通の(ちょっといかれた)若い女の子たち”がメインなのだ。
この結果は、予想されていたともいえる。

アダムは出来上がりすぎていたし、それにどぎついメークを「きもい」と嫌う人たちも多い。
諸刃の刃のようなスターだったからだ。
それに比べると、クリスは純朴で謙虚な田舎の青年然としていて、清潔でかわいい。
ジョイナス・ブラザーズか、若かりし頃のブライアン・アダムスか、という雰囲気があり、アダムとは180度違う。
女の子の心をつかむのに十分な理由はある。

しかし、今日の新聞にはさらに面白い分析があった。
いわく、敗因は「アダムがゲイであること」だというのだ。
本人ははっきりと明言していないが、シーズン途中に男性とのキス写真がインターネットで流れ、それから彼は誹謗中傷を受けるようになる。
いくらアメリカン・アイドルがタレント&歌唱力コンテストであっても、「キリスト教の国、アメリカの“アイドル”としてゲイを選んでもいいのか」という心ない書き込みや議論がインターネットをにぎわし始めた。
もっと怖い話では、ある教会が信者に「アダムを支持してはならぬ」とお達しを出したという。
そういえば、ベスト3で姿を消したライバル、ダニー(私のお気に)は、教会の音楽ディレクターだった。
彼が姿を消してから、その支持者の票がすべてクリスに流れたというわけだ。


ここまでくると、なんとも言えない無力感が襲ってくる。
こんなところまで、宗教上の「倫理観」とやらが介入してくるのか?
ゲイは一等賞をとってはいけないのか?


つい先日、オバマ大統領がカトリック系の大学であるノートル・ダム大学の卒業式に招かれ、ちょっとした騒ぎになった。
プロチョイス(中絶容認)のオバマ大統領は、カトリックの敵。そんな人物を式典に招くなどけしからん、というわけだ。
オバマ氏の出席に抗議し、卒業式典をボイコットした学生も多数おり、大学の外には血まみれの赤ん坊の絵を描いたプラカードを掲げたプロライフ派が押し寄せ、もみあいにもなったという。



自由な国、のはずのアメリカ。
黒人の大統領が誕生し、ひとつの大きな壁をうち破ったこの国がどうしても突き破れない次なる壁・・・・
その影にはいつも、“敬虔な(狂信的な)”クリスチャンたちがいる。
アメリカにゲイの大統領が誕生する日は来るのだろうか。


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