晴れ、ときどき映画三昧

「麗しのサブリナ」(54・米)75点



 ・ オードリーのハリウッド2作目はワイルダー監督による王道のロマコメ。


 「ローマの休日」で衝撃のハリウッド・デビューを果たしたA・ヘプバーンの次回作は、ビリー・ワイルダー監督のウィットに富んだロマンチック・コメディ。
 サミュエル・テイラーの戯曲をもとに大富豪の兄弟とお抱え運転手の娘との恋を描いた王道のラブストーリー。

 オードリー在りきの本作は前作「ローマの休日」とは逆パターンで、運転手の娘が身分違いの男に憧れ<月に手を伸ばすような恋愛>を成就させるというシンデレラもの。

 大富豪のララビー家の兄ライナスにはハンフリー・ボガート、弟デイヴィッドにはウィリアム・ホールデンが扮し引き立て役を務めている。

 ケーリー・グラントがライナス役を断ったため回ってきたため、ボギーに合うようシナリオを書き直したという。仕事人間の堅物で恋とは無縁の中年男を演じている。オードリーとは30歳年上で2年後他界している彼にはミスキャストでは?という声も多いが、事業以外生き甲斐のなかった男が初めて知った恋心をどう抑えようかドギマギする姿は共感を呼んで、さすがの存在感。

 W・ホールデンのデイヴィッドは、離婚歴三回で婚約者もいるのにパリ帰りのオードリー扮するサブリナへ猛烈アタックするプレイボーイ役。「サンセット大通り」(50)、「第十七捕虜収容所」(53)とシリアスな役柄とは打って変わってのラブコメを楽しんでいる。

 ボガート、ホールデンの共演は「前科者」(39)で仲違いして以来二度目だが、プライベートはおくびにも出さない兄弟愛の演技は、まさに一流スター同士である所以だ。二人のギャラがオードリーの20倍(ボガート)、8.3倍(ホールデン)だったという。

 オードリーがハリウッド俳優として自他共に認められたのは、キュートでピチピチした少女からエレガントな大人の女性に生まれ変わり目を奪割れるような美しさが際立つのはワイルダー演出のタマモノ。
 サブリナの名前がついたパンツ・スーツ・イヴニングはジバンシーの名とともにファッションの世界に定着したが、オスカー衣装デザイン賞を受賞したのは皮肉にもイーデス・ヘッド。後日談で明らかになったが3点はオードリーの私物ということだったようだ。 

 「ローマの休日」を演出したウィリアム・ワイラー、「麗しのサブリナ」を製作・監督したB・ワイルダーはともにヨーロッパからハリウッドへ渡ってきた似たもの同士。
 その後「ベンハー」(59)など大作を手掛け名匠と謳われたワイラー、ハイテンポなコメディ中心で観客を虜にしたワイルダーと道は違ってもハリウッドを支えた名監督同士で仲も良かったという。
 ワイラーは「噂の二人」(61)・「おしゃれ泥棒」(66)、ワイルダーは「昼下がりの情事」(57)でオードリー作品を手掛けているがワイルダーのほうが彼女の魅力を生かしているように見える。

 ニューヨーク・タイムズ誌でボズリー・クロウザーが<折れそうな細い身体に驚くほど繊細な感覚と揺れ動く感情が詰め込まれている。彼女が演じた運転手の娘は前年演じた王女よりも輝いて見える>と評している。諸手を挙げて賛成である。

 

 

 

 

 
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