晴れ、ときどき映画三昧

「ラスト・ショー」(71・米)75点


・ P・ボグダニヴィッチ監督2作目は、テキサスの田舎町を舞台にした青春映画。




映画好きが高じて批評する側から作る立場になったピーター・ボグダノヴィッチの監督2作目は、ラリー・マクマートリーの半自伝的小説を映画化した、テキサスの田舎町を舞台にした青春ドラマ。

アメリカン・ニューシネマの時代、20年前の小さな町のハイスクールの少年・少女の恋愛を映画化するのはとても珍しく、ほとんど注目されていなかったにも拘らず大ヒット。何しろ僅か150万ドルの製作費で世界の興行収入が3000万ドルあったのだから。

枯渇しかかった石油発掘にすがるように寂れたテキサスの小さな町・アイリーン。唯一の娯楽施設は映画館ロイヤル劇場。
ソニー(ティモシー・ボトムズ)とデュエーン(ジェフ・ブリッジス)はそれぞれガールフレンドとロイヤル劇場で「花嫁の父」を観ているが、ソニーは1年たっても思いが果たせず一途な思いは空回り。デュエーンは気まぐれな町一番の美人ジェイシー(シビル・シェパード)に振り回されている。
ソニーは、映画館・ビリヤード・カフェを経営している元カウボーイの‘ライオンのサム’(ベン・ジョンソン)を父のように慕っている。

ソニーとデュエーンの友情、ジェイシーとの三角関係、旅立ちへの願望など様々な葛藤は、多感な青春時代の夢とその終わりをノスタルジックに描いて、あえてモノクロにした映像に寂寥感が漂う。

この年代の男は幼くて性への関心は旺盛だがすることは子供っぽいのに、女はかなり強か。この時代の貞操感も伺え、ジェイシーはソニーとデュエーンを振り回しケロッとしている。

同時並行的に過去を引きずりながらこの町で厳しい現実を生きている大人たちが登場する。

‘ライオンのサム’は町の人々に慕われているが、妻子を亡くし孤独な身。口の聴けない少年ビリーの面倒を見ながら唯一の趣味は釣り。過去に好きな人がいて実らなかったらしいが「一番バカなのは、何もしないで老いぼれること。」とサムに諭す。筆者も耳が痛い!

フットボールのコーチの妻ルース(クロリス・リーチマン)は夫に置き去りにされ、そのはけ口から息子のようなソニーと関係を持ってしまう。何かというと謝る口癖に後ろめたさを感じながら、部屋の模様替えまでしてソニーを待つ中年女性が痛々しい。

ハンク・ウィリアムスの「Cold Cold Heart」など、カントリー・ソングがバックに流れるなか、ひとつの終わりを伝えるように、サムは突然亡くなってしまう。

デュエーンとの交際を反対していたジェイシーの母ロイス(エレン・バースティン)はソニーがジェイシーと結婚できないことを自身の体験を例えながら慰める。ソニーはもしかすると、‘ライオンのサム’の好きだった人はロイスかもしれないと想像する。

本作でB・ジョンソンとC・リーチマンはともにオスカー助演賞を獲得している。

本作をきっかけにボグダノヴィッチは「おかしなおかしな大追跡」(72)、「ペイパー・ムーン」(73)とヒット作を連発。
J・ブリッジスは今も現役の大スターで健在だが、T・ボトムズは地味な存在へ。
美人女優のC・シェパードも「タクシー・ドライバー」(76)でデニーロにストーカーされる女性役以降、TV「こちらブルームーン探偵社」でブルース・ウィルスと共演した美人探偵以外は活躍していない。

終盤閉館するロイヤル劇場で上映されたのは「赤い河」(48)だった。それぞれの旅立ちを思わせる作品だ。




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