・ 20世紀初頭、英国令嬢の恋をノスタルジックに描いたJ・アイヴォリー監督作品。
英国の令嬢が旅先のイタリアで出会った青年と恋に落ち人生に目覚めるというE・M・フォースターの小説をジェームズ・アイヴォリー監督で映画化。オスカー3部門(脚本・美術・衣装)を受賞した。
ハニーチャーチ家の令嬢ルーシー(ヘレナ・ボナム=カーター)は、独身で年上の従姉妹シャーロット(マギー・スミス)を付添婦としてイタリアを旅行中、英国人旅行者ジョージ(ジュリアン・サンズ)に出逢い徐々に惹かれて行く。
階級社会の英国では自由恋愛など許されるはずなく、帰国した彼女は上流階級の男セシル(ダニエル・ルイ=ルイス)のプロポーズを受け婚約する。そんな矢先、ジョージと再会する・・・。
現代では考え方が陳腐と思われがちなストーリーだが、近作「君の名前で僕を呼んで」の脚色でオスカーを獲得したアイヴォリーの格調高い演出で、古き善き時代の英国上流社会の情景が再現されている。
花の街フィレンツェの美しい風景の映像に、プッチーニの<私のお父さん>が流れる冒頭から異次元に引き込まれる。他にも麦畑のキスシーンでは<ドレッタの夢>が使われ、情熱の国での心情が伝わてくるなどそのものズバリの演出。
ヒロインH・ボナム=カーターは後にティム・バートン作品やハリー・ポッターなどでお馴染みな多彩な女優だが、本作はデビュー間もない頃。テキシス首相の曾孫という名家の出身らしい血筋を生かした上流社会の清楚な令嬢役で今では貴重な作品となった。
ジョージを演じたJ・サンズは如何にも監督好みの金髪美青年だが、貴族社会に従順な婚約者セシルに扮したD・ルイ=ルイスの繊細な演技が光っていた。
3人を囲む演技陣ではベテラン、マギー・スミスのヤキモキする付添婦役が独身女性の複雑な心理状況を表現、三流小説家ラヴィッシュに扮したジュディ・デンチとのやりとりも見どころのひとつ。
何かと物議を醸したジョージ(J・サンズ)、ビーフ牧師(サイモン・キャロウ)、ルーシーの弟フレディ(ルパート・グレイブス)の3人が全裸で池ではしゃぎ回るシーンは新しい時代の到来を暗示するためのものだが、監督の力が入りすぎの気もする。そのため変なぼかしが入って、却って品性を失ってしまったのは残念!
優雅な美しい衣装、本物感漂う緻密な美術、フィレンツェや郊外のロンドン田園風景など、時代のリアルな再現に挑んだアイヴォリー監督の力作は、プッチーニ、ベートーベン、シューベルト、モーツアルトの調べとともに小説のページをめくるようなラブ・ストーリーだ。
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