おとうと
2010年/日本
久々家族揃って観る映画
shinakamさん
男性
総合
80点
ストーリー
80点
キャスト
85点
演出
85点
ビジュアル
80点
音楽
80点
ベルリン国際映画祭で特別功労賞を受賞して日本映画の代表的な監督のひとりであると評価された山田洋次監督久々の現代劇。前作「母べえ」に続き吉永小百合と笑福亭鶴瓶を起用した家族の物語。かつてお茶の間でTVを囲んで観ていたドラマを連想する<久々家族揃って観る>映画。
東京・下町の蒲田で亡くなった夫の経営していた薬局を引き継ぎ、ひとり娘(蒼井優)を育てつつましく暮らしている吟子(吉永小百合)と、娘の名づけ親で大衆演劇の役者だった鉄郎(笑福亭鶴謎)。どうみても姉弟とは思えない2人だが、これは寅さんとさくらも同じ。山田監督は幸田文原作で同名の映画を監督した「市川箟へのオマージュ」というが「寅さんへのそれ」を思わせる。そして良くも悪くも大船松竹の伝統を受け継いでいる。それはFIXしたカメラ、きれいなしっかりとした録音、くっきりと映る照明によるもので、スタッフが山田組を支えている。
女神のような存在の姉は吉永小百合の真骨頂。というより他の役をやってもイメージが変わらない。彼女こそタレントではなく「最後の映画女優」である。対する弟の鶴瓶は<ごんだくれ>がそのまんま大人になったようなやんちゃな男でこれも地に近い。15キロも減量して頑張った割に油ぎって見えるきらいはあるものの、一所懸命生きる所以の可笑しさを演じ切っている。つまり山田監督は2人のイメージをそのまま映像化している。そのため吉永小百合に大阪弁を喋らせるような無理はしない。その分小林稔持(兄・庄平)加藤治子(義母)笹野高史(自転車や)など芸達者を配しドラマを円滑に展開させている。鶴瓶と仲良しの中居正広がカメオ出演しているのもサプライズとして楽しい。
昭和・高度成長期の庶民として生きてきた吟子と鉄郎。その対照的な人生を描きながら、平成の若者、小春(蒼井優)と大工の享(加瀬亮)に希望を託す手法は、山田監督の人間賛歌そのもの。そして、家族を持たず故郷を失った人の最後が、民間ホスピスという事実をさりげなく取り上げることで現代社会の矛盾に警鐘を鳴らすしたたかな手腕を感じる。東京・山谷の「きぼうのいえ」がモデルのせいか、通天閣がみえる大阪なのに関西の雰囲気がないのは気にし過ぎか?
久しぶり観ていて自然に涙を流したが、改めて日本人のDNAを持っているのを実感した。
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