さて、ちょいと新企画な第967回は、
タイトル:ドリームノッカー チョコの奇妙な文化祭
著者:御影
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:'06)
であります。
―まずは御挨拶―
「皆さん初めまして、ホタルです♪」
「マユっす」
「……愛想悪っ!」
「そっかぁ?」
「第一印象は肝心ですよ~。デビューでこけた人の末路って、それはそれは悲惨ですから――」
「あ~、あ~、マイクのテスト中」
「無視かっ!」
「これまで記事を担当してきたロートル二人がくたばったので、何の因果か、某パソコンのフォルダで放置プレイ喰らってたあたしらが狩り出されることになったっす。おおよそ三分で読める程度に本の話をするんで、お暇な方は読んでって下しゃんせ」
「不定期更新なので、あまり期待せず、思い出した頃にチェックして頂けると嬉しいです~」
「笑顔でネガティブなこと口走ってんじゃねぇよ……」
「それと、今までの木劇やおしゃべりと違って、こちらは完全に一人で書いてます。どっちが書いてるかは例によって秘密です」
「なーに、どうせすぐバレるさ」
―どんな作品?―
「さて、栄えある第一回目の紹介ですが、定番の電撃文庫から、『ドリームノッカー チョコの奇妙な文化祭』です」
「中身はともかくとして……タイトルが気に食わねぇ」
「何か問題あります? ストーリーにもちゃんと合ってると思いますけど?」
「背表紙には書いてないが、正式には『ドリームノッカー チョコの奇妙な文化祭 ~Chocolate in the cage~』なんだ。英語部分をどっかで見たことないか?」
「あ~、これは某人気漫画の英文タイトルそのままですね……」
「あたしはこういうプライドのない奴が死ぬ程嫌いだ」
「え、えーと……単なるお遊びってことで見逃してあげては?」
「パロディが悪いとは言わねぇよ。でもそれなら、最初っから堂々とそれで行けってんだ。なんつーか、ほんのちょっと自分の好きな作品をつまみ食いしてみましたって感じのセコイ根性がとにかくムカツク。あー、前にもいたな、『天使禁猟区』のタイトル持ってきた馬鹿が」
「(何か二人組の片割れが取り憑いてるみたいだからほっとこっと)
内容的には、女の子が沢山出てくる学園ミステリです。掲載誌が『電撃G's magazine』だったこと、作者の御影さんがパソゲーのシナリオライターであることから、いかにもギャルゲーの臭いがしてきそうですが、実は百合物だったりします」
「百合物だろうがギャルゲーに変わりはないだろ……じゃなくて、その解説は何か間違ってねーか?
真面目に解説すっと、演劇部の一年生で文化祭講演の主役に抜擢された少女・チョコが、親友の夢野ほとりと共に、今回の演目『トイボックス』にまつわる事件に巻き込まれていく――といった話だ」
「実はこの『トイボックス』、五年前に上演された時にも事件を起こしてるんですよね~。こういう曰く付きの作品! ってネタ大好きです」
「演劇とか、映画をキーにしたミステリでは定番の手だな。それ故、安易に使うと大コケをかますんだが……『トイボックス』のモチーフになった『不思議の国のアリス』の主人公と同じ名を持つ新入部員・有栖川恋――通称アリスが絡む序盤は素直に面白かった。劇のリハーサル中に奇妙な事件が起こり、直接それに関わったチョコが探偵役になるという展開は無理がねーし、少ない情報を元に犯人捜しをする過程も上手く書いてると思う。何より、与えられた情報だけで謎解きができるってのが、あたし的にかなりポイント高ぇ」
「思いっきり、ミステリ読みしてますねぇ……。私は、さりげなく大胆にチョコちゃんに魔の手を伸ばす夢野嬢が気になって、犯人とか全然気にしてませんでした」
「そういう小ネタを楽しむ読み方もアリだろ。何にせよ、先を読む気にさせるという役目をきっちり果たしてる時点で、この導入部は満点に近い。そいでもって、一つ目の事件が終わってもまだ謎が残る、という引きで話は続くんだが……問題はそっからだな」
「不気味な謎を残して第一の事件が終わり、息つく間もなく第二の事件が起こる面白い展開だったと思いますけど? チョコちゃんと夢野嬢の絡みもちゃんとあったし、私は大満足です。何たって膝枕ですよ、膝枕!」
「頼むから、あたしの前で百合の世界に没入すんな。
話の流れ自体は問題ないと言えばないんたが、こっから先、大して意味ないキャラが増えてくるのと、超常現象物にシフトするのが何ともなぁ……」
「う~ん、ミステリファンからしたらどうかな? とは思うけど、私はホラーファンタジー好きなので素直に雰囲気に浸れましたよ~。電話越しの会話ばかりでどこにいるのか解らないチョコのお兄さんとか、行方不明になった筈なのに出没する怪人物とか、すぐ側にいるのに一番奇妙な存在の夢野嬢とか、謎なキャラクター達が気になってとんとん拍子で読んじゃいました」
「あたしが深読みし過ぎた……と言っちまったら、それまでなんだけどな」
―総評としては?―
「とにかく不思議がいっぱいで楽しいです! 色々寄り道もしてるけど、最後はちゃんと主人公二人の関係を描いて終わらせてるのも好き」
「ストーリーの核となる『トイボックス』の内容が、最初の部分しか明かされないまま話が進行するのは難あり。基本的に主人公の一人称なので、チョコは理解してても読者が理解してないことが多くなり易いにも関わらず、必要な情報まで制限されたんではかなわない」
「それは……不思議時空を創造するためには致し方ない処置なのでは? 解らない分、想像の余地があるとも言えますし」
「じゃあせめて、目の前の事態に真面目に対処しろ。チョコ含めて、出てくるキャラのほとんどが何の疑問も抱かずに超常現象を受け入れるってのは極めて不自然だ。主人公のチョコに至っては、何の脈絡もなしに不思議現象を理解してるし……まったく、読者を置き去りにするにも程がある」
「チョコ以外のキャラクターが異常事態に対処できる件については、ラストで一応説明が付いてたんじゃないかと。反則的な技ではあるけど、ファンタジーなら特に問題はないと思います」
「それを言っちまったら、何でもありってことになるぞ……。あー、それと、チョコとほとり以外のキャラが、ギャルゲーにありがちな設定でデコレーションしただけの薄い連中ってのも引っかかったな。もっとも、こういう記号人間が多く出てくるのはミステリではいつものことではあるが」
「何でもありって楽しいですよ。
ミステリ要素にこだわらず、禁断の愛に溢れた奇妙で不思議な世界を堪能しましょう。つーかぶっちゃけ、チョコちゃんと夢野嬢さえいればそれでいいっ!」
「結局そこに帰るのか……。最後に、謎解き好きに忠告しとくが、チョコというあだ名から本名を予想するのはやめとけ。終盤で出てくる過去話が元になってるんで、いくら考えても無駄だ。ここらへんも、期待だけさせといて肩すかしって感じだったな」
「オチはどうしましょう?」
「某絶対運命黙示録なアニメ視てたら簡単にネタが割れるんで注意してくれ。どうだ、いいオチだろ?」
「ああっ、最後の最後に超危険な発言をっ!」
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タイトル:ドリームノッカー チョコの奇妙な文化祭
著者:御影
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:'06)
であります。
―まずは御挨拶―
「皆さん初めまして、ホタルです♪」
「マユっす」
「……愛想悪っ!」
「そっかぁ?」
「第一印象は肝心ですよ~。デビューでこけた人の末路って、それはそれは悲惨ですから――」
「あ~、あ~、マイクのテスト中」
「無視かっ!」
「これまで記事を担当してきたロートル二人がくたばったので、何の因果か、某パソコンのフォルダで放置プレイ喰らってたあたしらが狩り出されることになったっす。おおよそ三分で読める程度に本の話をするんで、お暇な方は読んでって下しゃんせ」
「不定期更新なので、あまり期待せず、思い出した頃にチェックして頂けると嬉しいです~」
「笑顔でネガティブなこと口走ってんじゃねぇよ……」
「それと、今までの木劇やおしゃべりと違って、こちらは完全に一人で書いてます。どっちが書いてるかは例によって秘密です」
「なーに、どうせすぐバレるさ」
―どんな作品?―
「さて、栄えある第一回目の紹介ですが、定番の電撃文庫から、『ドリームノッカー チョコの奇妙な文化祭』です」
「中身はともかくとして……タイトルが気に食わねぇ」
「何か問題あります? ストーリーにもちゃんと合ってると思いますけど?」
「背表紙には書いてないが、正式には『ドリームノッカー チョコの奇妙な文化祭 ~Chocolate in the cage~』なんだ。英語部分をどっかで見たことないか?」
「あ~、これは某人気漫画の英文タイトルそのままですね……」
「あたしはこういうプライドのない奴が死ぬ程嫌いだ」
「え、えーと……単なるお遊びってことで見逃してあげては?」
「パロディが悪いとは言わねぇよ。でもそれなら、最初っから堂々とそれで行けってんだ。なんつーか、ほんのちょっと自分の好きな作品をつまみ食いしてみましたって感じのセコイ根性がとにかくムカツク。あー、前にもいたな、『天使禁猟区』のタイトル持ってきた馬鹿が」
「(何か二人組の片割れが取り憑いてるみたいだからほっとこっと)
内容的には、女の子が沢山出てくる学園ミステリです。掲載誌が『電撃G's magazine』だったこと、作者の御影さんがパソゲーのシナリオライターであることから、いかにもギャルゲーの臭いがしてきそうですが、実は百合物だったりします」
「百合物だろうがギャルゲーに変わりはないだろ……じゃなくて、その解説は何か間違ってねーか?
真面目に解説すっと、演劇部の一年生で文化祭講演の主役に抜擢された少女・チョコが、親友の夢野ほとりと共に、今回の演目『トイボックス』にまつわる事件に巻き込まれていく――といった話だ」
「実はこの『トイボックス』、五年前に上演された時にも事件を起こしてるんですよね~。こういう曰く付きの作品! ってネタ大好きです」
「演劇とか、映画をキーにしたミステリでは定番の手だな。それ故、安易に使うと大コケをかますんだが……『トイボックス』のモチーフになった『不思議の国のアリス』の主人公と同じ名を持つ新入部員・有栖川恋――通称アリスが絡む序盤は素直に面白かった。劇のリハーサル中に奇妙な事件が起こり、直接それに関わったチョコが探偵役になるという展開は無理がねーし、少ない情報を元に犯人捜しをする過程も上手く書いてると思う。何より、与えられた情報だけで謎解きができるってのが、あたし的にかなりポイント高ぇ」
「思いっきり、ミステリ読みしてますねぇ……。私は、さりげなく大胆にチョコちゃんに魔の手を伸ばす夢野嬢が気になって、犯人とか全然気にしてませんでした」
「そういう小ネタを楽しむ読み方もアリだろ。何にせよ、先を読む気にさせるという役目をきっちり果たしてる時点で、この導入部は満点に近い。そいでもって、一つ目の事件が終わってもまだ謎が残る、という引きで話は続くんだが……問題はそっからだな」
「不気味な謎を残して第一の事件が終わり、息つく間もなく第二の事件が起こる面白い展開だったと思いますけど? チョコちゃんと夢野嬢の絡みもちゃんとあったし、私は大満足です。何たって膝枕ですよ、膝枕!」
「頼むから、あたしの前で百合の世界に没入すんな。
話の流れ自体は問題ないと言えばないんたが、こっから先、大して意味ないキャラが増えてくるのと、超常現象物にシフトするのが何ともなぁ……」
「う~ん、ミステリファンからしたらどうかな? とは思うけど、私はホラーファンタジー好きなので素直に雰囲気に浸れましたよ~。電話越しの会話ばかりでどこにいるのか解らないチョコのお兄さんとか、行方不明になった筈なのに出没する怪人物とか、すぐ側にいるのに一番奇妙な存在の夢野嬢とか、謎なキャラクター達が気になってとんとん拍子で読んじゃいました」
「あたしが深読みし過ぎた……と言っちまったら、それまでなんだけどな」
―総評としては?―
「とにかく不思議がいっぱいで楽しいです! 色々寄り道もしてるけど、最後はちゃんと主人公二人の関係を描いて終わらせてるのも好き」
「ストーリーの核となる『トイボックス』の内容が、最初の部分しか明かされないまま話が進行するのは難あり。基本的に主人公の一人称なので、チョコは理解してても読者が理解してないことが多くなり易いにも関わらず、必要な情報まで制限されたんではかなわない」
「それは……不思議時空を創造するためには致し方ない処置なのでは? 解らない分、想像の余地があるとも言えますし」
「じゃあせめて、目の前の事態に真面目に対処しろ。チョコ含めて、出てくるキャラのほとんどが何の疑問も抱かずに超常現象を受け入れるってのは極めて不自然だ。主人公のチョコに至っては、何の脈絡もなしに不思議現象を理解してるし……まったく、読者を置き去りにするにも程がある」
「チョコ以外のキャラクターが異常事態に対処できる件については、ラストで一応説明が付いてたんじゃないかと。反則的な技ではあるけど、ファンタジーなら特に問題はないと思います」
「それを言っちまったら、何でもありってことになるぞ……。あー、それと、チョコとほとり以外のキャラが、ギャルゲーにありがちな設定でデコレーションしただけの薄い連中ってのも引っかかったな。もっとも、こういう記号人間が多く出てくるのはミステリではいつものことではあるが」
「何でもありって楽しいですよ。
ミステリ要素にこだわらず、禁断の愛に溢れた奇妙で不思議な世界を堪能しましょう。つーかぶっちゃけ、チョコちゃんと夢野嬢さえいればそれでいいっ!」
「結局そこに帰るのか……。最後に、謎解き好きに忠告しとくが、チョコというあだ名から本名を予想するのはやめとけ。終盤で出てくる過去話が元になってるんで、いくら考えても無駄だ。ここらへんも、期待だけさせといて肩すかしって感じだったな」
「オチはどうしましょう?」
「某絶対運命黙示録なアニメ視てたら簡単にネタが割れるんで注意してくれ。どうだ、いいオチだろ?」
「ああっ、最後の最後に超危険な発言をっ!」
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