つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

影武者少女が闘う!

2006-12-06 23:50:17 | ファンタジー(異世界)
さて、この方の株が急上昇中の第736回は、

タイトル:帝国の娘 (後編) 流血女神伝
著者:須賀しのぶ
出版社:集英社 コバルト文庫(初版:H11)

であります。

先週紹介した須賀しのぶの長編ファンタジー、の後編。
ルトヴィア帝国皇帝候補・アルゼウス皇子の影武者となったカリエが、他の三人の候補者と関わることで成長していく姿を描きます。
ちなみに、本作は流血女神伝と呼ばれるシリーズの一部なのですが、以後、十九巻(+外伝二巻)続いてまだ終わってません……面白いからいいけど。(爆)



遂に、カリエは他の皇帝候補者達が待つ『皇子宮』にやってきた。
皇都タイアークで得た二人の友――ユリ・スカナ王国の第二王女グラーシカ、彼女に仕える美しき僧侶サルベーンとも別れ、偽りの皇子としての戦いが始まる。
競うべき相手は、文武両道の第一皇子デミトリアス、聡明で心優しき第二皇子イレシオン、そして、強力な後ろ盾を持ち、最も皇帝に近い位置にいると言われる第四皇子ミューカレウス。

皇子宮の生活は、朝から晩まで勉強づくしだった。
その合間に、ミューカレウスと喧嘩し、イレシオンの優しさに触れ、ドミトリアスの教えを受ける。
それは、カリエにとって充実した日々だった……たとえ自分に皇位継承権がなかろうとも。

だが、そんな時間は長くは続かなかった。
カリエは外部の異変を敏感に察知し、アルゼウスの影武者をやめる時が来たことを悟る。
エディアルドすらも信用出来ない状況で、彼女が取った行動は――。



先週のレビューで私は、
『男装した女の子が美形の男に囲まれてアン×ェリークごっこを――』
なんてふざけたことを書きましたが、撤回します。

須賀しのぶはガチ。

この方、コバルトで堂々と大河物をやろうとしてます……と言うか、やってます。
あまりに面白いので、続編である『砂の覇王』(全九巻!)も一気に読んでしまいました。(爆)

このシリーズには、主に三つの国が登場します。

ルトヴィア帝国――おフランス八割+スペイン二割って感じの国。
エティカヤ王国――アラビアン九割+モンゴル一割って感じの国。
ユリ・スカナ王国――ロシア九割+イギリス一割って感じの国。 

本作の舞台は一番最初にに挙げたルトヴィア帝国。
この国には皇帝領を取り囲むように四つの公国が存在し、それそれが皇帝候補を出しています。
カリエを影武者として立てたのはゼカロ北公国で、ミューカレウスの背後にいるアビーテ西公国と睨み合っている、というのが大雑把な現在の状態です。
(本当は先週紹介しておくべき話ですが……)

で、そんな権力争いに巻き込まれたカリエですが……結構元気にやってたりします、中盤までは。
後半は、しっかり陰謀に巻き込まれてひどい目に遭います、しかもその犯人が――(以下自主規制)
おまけに、帝国内部のみならず外部からの干渉もあって事態は混乱。

東のエティカヤ王国はクアヒナ東公国の脅威となっていますが、本巻ではあまり目立っていません。
北のユリ・スカナ王国についても詳しい事情は書かれませんが、男装の麗人グラーシカが出たことで、多少情報が入ります。
では、本書で一番目立っているのはどこかと言うと、以後カリエと深く関わることことになるザカール民族です。

流血女神ザカリアを信奉する彼らは、ルトヴィアでは忌み嫌われています。
しかし、カリエの心を乱し、裏で怪しい動きを見せる僧侶サルベーンは半分ザカール人。
しかも、後半になって登場し、カリエを救う謎の人物は純血のザカール人だったりして――ああ、もう何が何だか。(笑)

そんなこんがらがった状況で、カリエは一つの決断をします。
これは、そのまま次作『砂の覇王』につながるのですが……ある意味ここで終わっていた方がカリエにとっては幸せだったかも。
熱烈なエディアルドファンは、今回のラストでカリエ+エドのラブラブ路線は確定と思ったようですね。無理もありませんが。(笑)
(私は別にエドのファンじゃないので、くっつこうがくっつくまいが構やしないけど)

前巻に続き、三重丸のオススメです。
ただし、数多くの謎と伏線が残っているので、続きを読む覚悟だけはしておいて下さい。(笑)



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