つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

ドルアーガって暇神?

2006-12-04 23:44:36 | ゲームブック
さて、外伝って便利な言葉だと思う第734回は、

タイトル:ドルアーガの塔 外伝
著者:北殿光徳
出版社:勁文社 アドベンチャーヒーローブックス

であります。

ドルアーガの塔のゲームブック。
某パオト氏『ドルアーガ三部作』とは全く別の作品です。
特徴は、とにかくストーリーが無茶なこと。

ゲームブックが流行った時代は、同時にファミコン全盛時代でもありました。
テレビゲーム関連の書籍が溢れる中、ゲームブックもそれに便乗する形でゲームソフトを元にした作品を次々と出版します。
今で言うところのタイアップ企画ですが、当時はまだ情報が少なかったためか、多くの作品が、『元のゲームのコピー』ではなく『作者の趣味が詰まった謎の物体』になっていました。実は本作もその部類。(笑)

以下、本書と元のゲームの違いについて箇条書きにしてみます。


・主人公が違う――本書の主人公はギルではありません、彼の双子の弟・ノヴァです。もちろん、ナムコの『ドルアーガの塔』にそんな人物は出てきません。彼はギルとの関係を知らずに、ずっと王国の侍従長をやっていた、ということになっています。

・塔にけしかける奴が違う――原作ではアヌ神が鎧を授けてくれますが、こちらでは女神イシターになっています。ギルの弟うんぬんの話もこの時に明かされます。ちなみに、彼女は鎧と一緒に塔内の地図をくれるのですが、全く役に立ちません。(怒)

・目的地が全然違う――ノヴァが挑むのは『ドルアーガの塔』ではなく、『城塞戦車ドルアガノン(?)』です。六階建ての塔にキャタピラをくっつけた奇妙な兵器で、ドルアーガが王国内の不穏分子を一掃するために送り出した巨大戦車なんだとか……。本家より五十四階分低いですが、インパクトはこっちの方があるかも知れません。

・そもそも、目的自体が違う――イシターはノヴァの前に現れて、ドルアガノンの塔に『ドルアーガの塔の秘密』が隠されていることを告げ、それを調べて兄のギルに伝えるよう命じます。つまり、ノヴァに与えられた使命は調査であって、カイを救うことでも、ドルアーガを倒すことでも、ブルー・クリスタル・ロッドを取り戻すことでもありません。平たく言えば、兄のパシリです。


何と言うか……『ドルアーガの塔』に『マリブラザーズ』をくっつけ、ついでに『バトルシティー』も放り込んでみましたって感じの物凄い設定ですね。(賛辞)

それにしても、本作のイシターは怪しい。
いきなり現れて「お前はギルの双子の弟です~」、ギルと同じ鎧を与えて「お前も使命を果たしなさい~」、事が終わったら「次は別の塔です~」って……。
お前、別の奴にも全く同じこと言ってないか?

ゲームとしては、スタジオ・ハードの御家芸『バトルポイント』を使ったオーソドックスなものです。
迷路は引き返すことが出来ないタイプで、妙なところで道が合流したりすることも多いです。
ただ、それを逆手にとり、塔内を石の建物の中というより、一種の異次元空間として描写しているのはグッド。
ホラータッチの文章や原作ゲームに近い感じの絵も、独特の雰囲気を支えています。

怪作好きな方にオススメ。
本作の悪ノリは本編に留まらず、巻末付録にまで及んでいます。
これからの物語と題して、ドルアガノン後のノヴァの戦いが……つーか、ドルアガドンにドルナイトって何よ?



tawa_towerさんのブログ『雑居空間』に本書の冒険記が掲載されています。
非常に面白いので、興味がある方はリンク先へGO!