つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

売られるっ!

2006-12-11 23:17:33 | ファンタジー(異世界)
さて、最近どころかいつも突貫な第741回は、

タイトル:砂の覇王1 流血女神伝
著者:須賀しのぶ
出版社:集英社 コバルト文庫(初版:H12)

であります。

須賀しのぶの長編ファンタジー『流血女神伝』シリーズの第二弾『砂の覇王』の一巻目。
皇子宮を脱出したものの、さらに過酷な運命に翻弄される少女・カリエの姿を描きます。
メインの舞台は砂漠の国・エティカヤ王国ですが、前作に登場したルトヴィア帝国のその後も描かれています。



カリエは、エディアルドと共に北のユリ・スカナ王国を目指していた。
皇子宮は既に遠く、頼るべき相手はエドしかいない、おまけに、通り道であるクアヒナは目に見えて治安が悪化している。
一時は兄だったドミトリアスにすべてを打ち明け、別れを告げた時、彼が優しく送り出してくれたのがせめてもの慰みだった。

ヘーガと呼ばれる実の毒にあたり、エドが倒れた。
カリエは必死で助けを求めるが、誰も応える者はいない。
ようやく、ある家が二人を迎え入れてくれたが、彼らは一つの問題を抱えていた。

気付けば、カリエは見覚えのない天幕の中にいた。
ペジャンという女の話によれば、明日には東の国境を越え、エティカヤに入るのだという。
カリエは売られたのだ……奴隷として。

かくて、カリエのエティカヤでの日々が始まる――。



というわけで、作者の強制スクロールを食らったカリエは、アラビアンな国エティカヤで暮らすことになりました。
エディアルドとも離ればなれになり、奴隷として孤独な生活を……と思いきや、後でしっかり再会します。
もっともこの『砂の覇王』編で、エドは完全なる脇役だったりしますが。(笑)

この先九巻まで続くシリーズの第一巻なためか、カリエ一人のエピソードは割と少なめ。
以後ライバルキャラとして張り合うことになるサジェとの絡みで初手と最後をつなげていますが、起こった事件は上記の粗筋で大体全部です。
にしても、しめくくりの一文読む限り、『惚れっぽい猪』は健在ですね……ここらへんの重さと軽さの使い分けはいかにも須賀しのぶらしい。

その他の枝エピソードですが、前作に名前だけ登場したユリ・スカナの問題児イーダル君が登場します。
唯一人の男児ってことで、場合によっては王座が回ってくる立場の人物ですが、見た目は……あははは。
まだ十四歳ながら、姉グラーシカすら牛耳る口の上手さは結構不気味かも。
(つーか、危険人物の臭いがぷんぷんと……)

あと、遂にドミトリアス(ドーン)が皇帝となる決意を固めます。
理想を求め、崩れかけた国の復興に着手するドーン兄さんの明日はどっちだ?
でも、この時点で既に死亡フラグ立ってると思うのは私だけでしょうか? ルトヴィア帝国って、いかにもフランスっぽいしなぁ……。

例によって、レーベルのイメージを覆してくれます。オススメ。
一気に大河小説の色が濃くなりましたが、キャラ小説という面もしっかり残っているので、すらすら読めます。



――【つれづれナビ!】――
 ◆ 『流血女神伝』のまとめページへ
 ◇ 『ライトノベル一覧表(その2)』へ
 ◆ 『つれづれ総合案内所』へ