とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

49 樹々霊声

2015-09-25 00:29:51 | 日記





 私の道。どこへ ?
 法善の旅立ちを見送ってからというもの、私は急に落ち着かなくなっていました。電信柱として生きがいを感じていたところ突如この森へ連れてこられたこと、姫神の存在の大きさ、花りんが私に道を示してくれたこと、マーガレットとさやかとの絶対神的な繋がり、それに夥しい樹々の過去世の運命。・・・この森の樹々は何を考え、これからどうしようとしているのか。すべて転生出来るのか。自力本願、他力本願・・・。
 私がそんなことを考えていると、その心を逸早く察知したかのようにさやかがふわっと現れてきました。

 「お父さん、私についてきてください。いいところへご案内します。途中、森の樹々が囁きかける声に耳を傾けてください。森の樹々はお父さんの心の鏡となってくれます。たくさんの樹に話しかけてください。もし、樹が答えながらぴかっと大きく光ったら、その樹の声は行く末の道のヒントを指し示していると考えてください。・・・では、私についてきてください。出発します」

 さやかは後ろの私を振り返り振り返りして森の奥へと入って行きました。私も花りんと何度か森の中を歩き回りましたが、さやかは全く違うコースを進んでいきました。針葉樹の森を抜けると広葉樹の古木、老木の森に出てきました。昼とは言え森の中は靄がかかったように薄ぼんやりとしていました。

 「やっぱり広葉樹がいい。落ち着く感じだ。・・・これが全部過去の罪びとなのか・・・」

 私がそう呟くと、一帯の樹々が急にざわざわと音を立て始めました。

 「おい、新参者、生意気な口を利くな」

 どこからともなくそんな言葉が聞こえてきました。

 「ご免、いやね、私も罪びと、ははっ、修行中の身です」

 「二年や三年で将来の道 ? 笑わせるな。俺は五十年迷いっぱなしだ」

 「ご免、それで貴方はどこからおいでなされた ?」

 「どこでもいい。お前には関係ないことだ」

 「ごもっとも。では、先を急ぎますので・・・」

 「おい、待て !!」

 「何かご用で・・・」

 「誰に会いに行く ?」

 「私には分かりません。この娘が案内してくれます」

 「何、その方がお前の娘 !!」

 「そうですが、それが何か・・・」

 「これはお見逸れしました。いつもお世話になっています。私は何度か助けていただいた。私の樹に火を点けて死のうと思ったとき、駆けつけていただいて、心の内をじっくり聞いていただいた。しかも、姫神様、マーガレット様に伝えていただいて、畏れ多くもマーカーレット様に祈祷をしていただいた。ありがたい。それから、私は精進を続けることができた」

 「椋木様、貴方はご神木。大願成就まで、そうです、大樹となるまで、もう少しのご精進をお願いいたします」

 さやかがそう言うと、その樹は青白い光を発しました。

 「お分かりいただけましたか。それでは・・・」

 「さやか様、私は光の柱になれますでしょうか ?」

 「立派な光の柱になれます。来世では、偉大な神道の教祖となれるお方です。法善に匹敵するお方になれると思います」

 さやかと私はあの御霊屋とは反対の方角の森の中に出ました。さやかが急に立ち止まり、上を見上げて祈りました。見上げると、スダジイの老木が聳え立っていました。

 「賽の神様、また、さやかが参りました。この度は父を伴って参りました」

 「おおっ、さやか、よく来た。法善はまことに首尾よく成就した。何度もここに来て、私にあれこれ尋ねでおった。さすが僧職の身、聞くことが違っていた。濁世を救済する法は何か、と聞いてきた。さすがだ。私は即座に大般若経六百巻を誦しなさい、と勧めた。すると、玄奘三蔵の霊を呼び出し、霊経典を二年で書写し、霊大般若経を完成させ、十年かかって暗誦した。すばらしい僧だ。・・・で、お前は今何を見つめているのか ?」

 「えっ、私ですか。見つめる・・・?」

 「はははっ、大袈裟に考えるな。今、見えているものは何かということだ」

 「む、むすめ、あっ、それもですが、過去のこと、あっ、いや、来世のこと・・・」

 「はははっ、もう過去には拘るな。来世と言ったな。来世、ほほう、また人間に戻りたい ?」

 「いや、そのことで迷っています」

 「はははっ、迷うようなら止めた方がよい。・・・どうだ、私の跡継ぎとしてこの森の導師とならないか」

 「えっ、導師、私がでございますか」

 「はははっ、さすればお前の樹に花が咲くであろう」

 「花が咲く ? どういうことでしょうか ?」

 「ははっ、大願成就ということだ」

 大願成就。私には程遠い言葉のように思えました。すると、そのスダジイの老木が眩しいほど光り始めました。

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48 法善の修行

2015-09-19 02:15:51 | 日記





 ある日の夕方、御霊屋での修行が終わって私と花りんが片付けをしていると、窓の外が急に明るくなりました。二人して外に駆け出すと、姫神様がその光る方向を眺めやりながら微笑んでおられました。風に吹かれた髪の毛を顔に纏いながら、とうとうこの日が来ました、と呟いておられました。仔細が分からない私はその表情が異様に思えました。

「えっ !! 森が火事に・・・」

 「新樹さん、火事ではありません。法炎というものです」

 「法炎 ?」

 「そうです。修行がすべて叶ったときは、一帯が濃密な霊気を帯び、遠目には炎のように見えます」

 「どなたが結願されたのですか ?」

 「ははっ、花りん、貴女がいつも気にかけていたお方です」

 「ええっ、法善様 !!」

 「その通りです。」

 「花りん、お前はあのお方を知っているのか ?」

 「知っているというか、訪ねて行ったことがあります」

 「この前、飛翔の修行で途中から引き返したお方。確か若い僧職であったとか・・・」

 「そうです。過去世において自分がなした罪が精進の力になっているとか仰っていました」

 「罪。お前はそんなことまで知っていたのか」

 「いえ、私はどんな罪なのか知りません」

 「もしかして好意を持っているとか・・・」

 「滅相もない。私も修行の身です」

 姫神様がそんな親子のやり取りを聞いていて、新樹さん・・・、と声を低くして私に話しかけてきました。

 「新樹さん、私が法善を空へ案内したのは心根を確かめるためでした。飛翔の修行はかねてから避けていました。無理に連れ出したのは結願が近かったからです。あの若い僧は、膨大な大般若経を諳んじていました。これは誰でも出来ることではありません。長年の精進で叶えた行です。これが出来れば、彼の三蔵法師の位に進んでいます。ははっ、素晴らしいことです。過去世において檀徒の娘と心中を図り、自分だけが助かった。そのことを悔やんで苦しみ、とうとう自死してしまいました。・・・ああ、ご免なさい、貴方の過去世を思い出させて」

 「いえ、・・・ああ、そうですか。なんと素晴らしいお方。・・・いや、私には到底出来ません」

 「お父さん、やはり人間に返ってください。そして、あの法善師匠のもとで働いてください」

 「仏道の道を歩めと言うのか。酷なことを・・・」

 「ご免なさい。出過ぎたことを言いました」

 「花りん、私もそう思います。出過ぎてなんかいないと思います。・・・おお、光が消えました。樹もなくなりました。法善、どうかいい旅立ちを・・・」

 姫神様は、そう言いながら合掌しました。私も花りんも手を合わせました。私は胸が熱くなりました。何故か涙が零れました。

 
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47 光の柱

2015-09-11 05:04:01 | 日記




 姫神様とともに集団で空へ飛び、祈りの修行をする樹霊。メンバーはかつての聖職者、道を踏み外した一般人、罪を犯した人などさまざま。私は下から空を見上げていました。次第に姫神様の声が聞こえてくるようになりました。おおっ、私は、姫神様と六地蔵様に導かれている。何度か空の修行を繰り返しているうちに、下にいてもその仏神の声が聞こえるようになりました。

 「みなさん、もっと高度を上げます。大丈夫です。落ちることはありません。私が支えていますから」

 「姫神様、どこまで行くのですか ?」

 「みなさんの心が少しでも軽くなるように出来るだけ地球から遠ざかります」

 「暗くなっていく。怖い !」

 「怖い ? そうですか。そう思われるお方は他にいますか ? ・・・そうですか。では、そのお方は降りていただきます。徐々に下降しますので、怖がらなくてもいいです。・・・では、私が祈ります。地表の森に着いたら自然に樹の中に帰ります。・・・では、今度の機会にはもっと高く飛びましょう。さようなら」

 「もっと高く・・・。もっと高く・・・。地球の磁場を外れます。そうすると、そうすると自己の真実の姿が見えてくるはずです」

 「姫神様、降ろしてください。降ろしてください」

 「アンディ、法善、・・・ああ、それに、山瀬、小西。・・・帰ってください」

 「快感です」

 「ああ、とうとう一人になりましたね、美音子さん。大丈夫のようですね。快感ですか」

 「ひ、ひかりが見えてきました」

 「そうですか。それはよかった。貴女にはまもなくマーガレットの声が聞こえるはず」

 「ああ、なにか聞こえてきました。・・・ヒカリと聞こえてきます」

 「おおっ、そうです。貴女はマーガレットに召されて、光の柱になります。そして、転生します。人間に戻ります。・・・おおっ、見事な光の柱です。・・・まもなくここから消えていきます。貴女の森の樹も消えていくでしょう。おめでとう。私も嬉しいです。マーガレットに導かれて回生のサークルに入ってください」

 「姫神様、ありがとうございます。真っ当に生き続けます」

 「ミネコ、ヒカリノワニハイリナサイ」

 私は、一条の美しい光の柱を下から確認することができました。

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46 佛神水波 2

2015-09-03 03:50:07 | 日記


 「電信柱さん、久しぶりだね」

 「ああっ、六地蔵さん、この森にどうして ?」

 「どうしてもないだろう、私はここでもずっと住まいしていた。分霊はどこでも出かける。」

 「えっ、それでどこで・・・ ?」 

 「はははっ、住処などない。姫神の身ぬちとでも言っておこう」

 「ご神体の中に・・・?」

 「ははっ、そうだ。気づかなかったのも仕方ないこと。貴方の前に姿を現して初めて気が付く。これは当然のこと。私はずっと経緯を見ていた。ははっ、一緒に宇宙へ飛んだ。新樹となって精進を続けている様子は仔細に分かっている」

 
 「くどいようだが、私は迷い道の六道、ははっ、天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道、にさ迷い出た霊を救いに行く。そういう行いは佛も神も同じこと。佛神水波じゃ。ときどき姫神の中に潜んでいる。力を貸すためじゃ。この森には地球上の迷える霊が樹木となって住んでいる。一人では力が足りぬ」

 「姫神様を、私は心底信頼しています」

 「おおっ、それは素晴らしいこと。で、今でも人間に戻りたくないと・・・」

 「それは変わりません。花りんやさやかは勧めてくれますが」

 「慌てる必要はない。樹は樹としての生き方がある」

 


 「おおっ、そうだった。私にはもう一つ大事な務めがあった」

 「務め ?」

「そうじゃ、愚かな求道者を救うことじゃ」

 「求道者 ?」

「そうじゃのう、神職、僧侶、司祭・・・。ははっ、そういうお方でも道を外してここに入っておられるお方がある。仏道的に言うと、不殺生戒、不偸盗戒、不淫戒、不妄語戒、不飲酒戒、不説過戒、不自讚毀他戒、不慳法財戒、不瞋恚戒、不謗三宝戒という戒を破ったお方じゃ。そういうお方の修行の手助けを姫神とともに行って、早く現世の元の道に戻っていただく。・・・厳しい仕事じゃ。これを少しでも続けないと現世はどうなるか・・・。ははっ、私はそういう方向から見ているのじゃが・・・。電信柱さん、いや、新樹さん、どうだろうか・・・」

 「そのお考えはこの森に光明をもたらすと思います」

 「おおっ、貴方も霊位が少しずつ上がっているようじゃ。ははっ、何より、何より」

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